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米国ではSMA(Separately Managed Account:専用資産運用管理口座)が急速に進化している。ラップ口座を原型としたSMAは、個人投資家に機関投資家並みの高度な資産運用を提供する金融商品である。金融機関向けのSMAの専用ソフトなどITの道具立てが整ったことで、市場が拡大。富裕層向けの限定商品が一般個人投資家にも裾野を広げつつある。

 1970年代に登場したラップ口座。証券会社が預かり資産残高ベースに運用報酬を受け取り、資産運用や証券売買などを包括的に提供するサービスである。

 それから四半世紀が経過、その後各社の競争激化、証券会社だけでなく銀行や保険会社を巻き込んでの裾野の広がり、そしてITを駆使しての商品改良を通じて、現在ではSMA(Separately Managed Account:専用資産運用管理口座)という名前で富裕層向け金融商品として定着した。

SMA資産残高の推移
SMA資産残高の推移
マネー・マネージメント・インスティテュートのデータを基に作成

 SMAは顧客の希望に従って資産を運用し、預かり資産ベースで運用報酬を徴収する証券口座を指す。投資信託と同程度の手数料で、投信にはないきめ細かな条件設定や節税対策ができる商品として個人投資家の人気を集めてきた。

 SMA の業界団体マネー・マネジメント・インスティテュート(MMI)によると、2006年9月末のSMAの運用資産総額は8058億ドル。前年比24%増、96年末から約10年間で4.3倍に膨れ上がった(図参照)。

 資産運用会社が個人投資家の意見を取り入れたカスタムメードの資産運用をする場合、その分手間がかかるため、まとまった資産を預ける機関投資家よりも運用報酬は高くならざるをえなかった。しかし、過去数年間のITの発展によって、資産が小さくても機関投資家並みに顧客の希望を取り入れつつ低コストでの運用が可能になった。それがまさしくSMAという資産運用プログラムだ。

SMAの進化版が各社で続々登場

 シティグループの「マルチ・ディシプリン口座」(MDA)。中小投資家が多数の運用戦略に分散投資できる口座として、同社が00 年初めに業界で初めて導入、急速に人気を獲得。他社の追随もあってSMAの進化版として市場を席巻した。

 従来、個人投資家が分散投資できるSMAは2~3人のファンドマネジャーによる運用に限られていた。機関投資家向けビジネスを“本業”としているファンドマネジャーは、規模の小さい資産を運用するのには、労力・時間などのコスト面で採算に合わなかった。

 だが、異なる戦略のポートフォリオを統合・管理できるITシステムのお陰で、少ない資産でも10~20程度の異なる運用戦略に効率分散できる基盤が出来上がった。シティグループのMDAはその最たる例だ。また、SMA の最低預かり資産も当初は25万ドル程度だったのが、現在では10万ドル程度に低くすることも可能になった。

CITigroupのMDAに関するページ
CITigroupのMDAに関するページ

 メリルリンチが提供するSMAでも、大型グロース株、大型バリュー株、小型株、海外株、地方債など運用戦略の異なる多数のファンドマネジャーに資金を運用委託できるようになっている。

SMAを支援するサービスが整備

 資産運用会社トランスアメリカ・インベストメント・マネジメントでは、SMAを管理運営する証券会社からSMA 用の資産運用を受託しているが、同社も新技術のお陰で各投資家にカスタムメードの運用が可能になっている。例えば、大型グロース株ファンドで、投資家の要望に沿って特定の銘柄・業種をポートフォリオから除外したり、キャピタルゲイン課税回避のために保有銘柄売買に一定の制限を設けたりするといった条件をコンピューターで簡単に設定できるからだ。証券会社にファンドの取引状況を報告するのも容易になった。

 金融・財務ソフト開発大手のチェックフリーなどが金融機関向けにSMAの専用ソフトを販売するなど、自前で技術開発コストをかけなくても高度なSMA サービス提供が可能になったことも、SMAの市場拡大を後押ししている。

トランスアメリカ・インベストメント・マネジメント社
トランスアメリカ・インベストメント・マネジメント社

 また、独立系のファイナンシャル・アドバイザー(FA)もSMA市場拡大に重要な役割を果たしている。FAは資産運用会社が運用する異なるポートフォリオを選んでSMA用に構築して顧客投資家に投資商品の一つとして勧めている。そのためFAは顧客のリスク許容度や資産運用の目的に沿って数多くのSMAから最適商品を選別する必要がある。

 こうしたSMA選別を容易にするサービスも登場した。米調査会社モーニングスターでは約1100社の資産運用会社が提供するSMA 用の異なるポートフォリオ約6000本を網羅したデータベースの提供をしている。FAは各ポートフォリオの運用成績だけでなく、投資分散度、節税効果、運用手数料など様々な側面から評価し、それをもとに異なるポートフォリオから構成する独自のSMAを構築して顧客に勧めることができるわけだ。

 SMAの大衆化も進みつつある。大手ディスカウント・ブローカー、チャールズ・シュワブが昨年秋投入した新商品は、SMA投資のハードルを下げたことで注目を浴びている。株式運用のSMAの場合、最低預かり資産は10万ドル。運用報酬もシュワブの社内マネジャーで年間1.45%、社外マネジャーの場合は1.75%。業界平均の2.5~3%よりも低く設定した。運用報酬を低めに設定したことで新たな顧客を呼び込む狙いだ。

 SMAは技術開発による運用・管理コストの低下、金融機関やFAを取り巻くインフラの拡充が市場拡大のけん引役となっている。さらに富裕投資家に限られていたこのサービスがより裾野を広げ、一般個人投資家の手にも届きつつある。


西崎 百江(にしざき ももえ)
(ニューヨーク特約記者)
本誌ニューヨーク特約記者。ニューヨークで約20年にわたり経済関係の取材・執筆を続けている。特に金融市場に関する取材経験が長い