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近鉄エクスプレス 常務取締役 牛尾 榮治氏

 今年5月、当社は全世界で利用する基幹系システムを使って、貨物追跡データや当社倉庫で預かっている品物の入出庫データなどを、顧客に対してリアルタイムで提供できるようになった。ようやく完成したというのが、現在の心境だ。

 今回、進めてきたシステム構築は、競争に勝ち残るためには避けて通れないものだった。システムの構想を練り始めたのは、1996年のことである。複数の業務システムを世界で統一する巨大プロジェクトとはいえ、全面稼働までトータルで10年と100億円を費やした。

 長期化した原因は、システムの要件固めが難航したことにある。今回のプロジェクトは当初、アメリカ人のエンジニア主導で開発を進めていた。米国のある物流会社のIT部門出身者をスカウトし、米国にシステム子会社を作り、プロジェクトを進めていたのだ。世界全体で最適なシステムを作るには、このほうが得策と判断したからだ。

 しかし結果として、うまくいかなかった。米国システム子会社の担当者と日本にある本社のプロジェクト・メンバーとのコミュニケーションがうまくいかず、日本側の機能要件が反映されないという問題が発生した。

 アメリカ人はシステムを構築する際に、必要最低限の機能要件だけに絞って、「あればいい」程度の細かな要件は削っていく。こうしたやり方が、日本やアジアでは受け入れられなかった。「そんなシステムでは仕事が進められない」との不満が出て、プロジェクトが前に進まなくなった。システム作りでは、アメリカ人と日本人の発想はまるで違うという点を体感した。

 結局、プロジェクトを仕切り直し、世界共通システムと日本仕様のシステムを接続する方式で、プロジェクトを進めてきた。だが、このやり方を採ったため、基幹系システムには課題が残ることになった。業務プロセスの見直しが徹底できなかったのである。

 今後、新たなシステムを作る際には、発想の転換が必要になると思っている。利用部門の利便性を優先して業務を自動化するために、システムに多くの機能を盛り込むことは、過剰投資につながる。業務の見直しや人間系の処理を活用する発想でシステムを構築しなければ、無駄遣いになりやすい。

 今回のプロジェクトは苦労が大きかったが、同時に今後のことを考えれば、非常に良い経験でもあった。ここで得た教訓を今後の業務改革や情報化プロジェクトに生かしていきたい。(談)

写真=いずもと けい