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「何から手をつけるか」で、2007年問題に関し、取り組むべき点として次の4点を挙げた。

●ビジネス側から了承を得る

●共通言語を用意する

●開発・実行・保守環境を整備する

●プロジェクトマネジメント

 今回は「共通言語を用意する」をとりあげる。共通言語とは、経営者や現場の社員と、情報システムを用意する専門家が、会話をするためのものである。企業の現場における仕事のやり方を、コンピューターの上に写像したものが情報システムである。したがって、コンピューターの専門家は、経営者の意向や、現場の仕事のやり方を理解した上で情報システムを用意する。

 問題は、経営者や現場部門と、コンピューターの専門家の間で意思疎通をとることが難しい点である。同じ社員であっても、同じ日本人であっても、話が食い違う。経営者や現場部門はコンピューターを知らない。コンピューターの専門家は現場の業務をコンピューターほどには知らないことがある。

 通常、情報システムを用意するにあたっては、「こういうシステムが欲しい」という要望をまとめた文書を作る。経営者や現場社員の要求を列挙しただけでは駄目であり、要求に矛盾がないように整理しなければならない。情報システムに実装できるように整理した要望をまとめた文書を要件定義書という。しかし、経営者や現場と、情報システムの専門家が会話をしないと、きちんとした要件定義書をまとめることはできない。

 仕事のやり方をきちんと体系立てて、整理し、業務マニュアルのような文書にまとめている企業があれば、このマニュアルが共通言語になる。ただし仕事のやり方は常に変化していくので、マニュアルが現場の実態に合っているかどうか、確認が必要である。

 もう一つの共通言語として、「データ項目」がある。聞き慣れない言葉であるが、要するに、顧客名・販売数量・売り上げといった、項目を指す。企業の仕事のやり方が変化しても、業態そのものが大きく変わらない限り、データ項目も変わらない。そこで企業の中にあるデータ項目を洗い出し、各データがどのような関係にあるかを調べる方法がある。これをデータ・モデリングという。

 データの関係を明らかにした上で、そのデータにコンピューターを使ってどのような処理を施すかを決めていく。こういうやり方で、情報システムを用意すると、仕事の変化に強いシステムを作ることができる。しかもデータ・モデルは当初は取っつきにくいが、仕事で使っている言葉によって情報システムの土台が表現されているわけで、コンピューターの専門家でなくても読みとることが可能である。

 ただし、データ・モデリングはなかなか辛い作業になる。日頃使っている伝票や業務文書からデータ項目を抜き出し、関係を整理していく。コンピューターで利用するソフトウエアを開発する作業になると、情報システムを作っているという実感が出てくるが、データ・モデリングの段階は、開発が進んでいるのかどうかよく分からない。このため途中で挫折してしまう例も少なくない。


(谷島 宣之=「経営とIT」サイト編集長)