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樋渡 雅幸
トーマツ コンサルティング シニアマネジャー

 前回は、内部統制を構築する最初のステップである「プロジェクトの組成」を説明しました(下の図)。このステップが終われば、マネジメント層のコミットメントとプロジェクト担当者の割り当てが済み、メンバーにはやる気がみなぎっている状態であるはず。いよいよプロジェクトのキックオフです。

●プロジェクト・ステップ
●プロジェクト・ステップ  [画像のクリックで拡大表示]

 それでは、5回目の今回は、「ステップ1:課題の抽出」から話を進めていきましょう。

ステップ1:問題の抽出

 ここからが、実質的な「チャンスをつかむ内部統制作り」のスタートとなります。ステップ0で準備された体制で、内部統制システムの構築プロジェクトを進めていくことになります。最初に手をつけなければならないのが、「問題の抽出」です。

 企業として現状抱えている問題―これを内包したままで内部統制システムの構築を進めた場合、現場で起きている問題を放置したままで統制を進めていくということになります。この状態では、法的な対応は実現しているのかもしれませんが、経営上の問題を是とするという本末転倒のシステムになってしまいます。

 さらに悪いケースだと、実は現場の努力などにより個々の支店などでは、その問題をクリアしていたにもかかわらず、本社で文書化されたルールに基づく統制では、現場が努力して作ったプロセスに「×」を付けてしまうことになります。日本企業の強さの1つである現場での工夫する力、すなわち現場のイノベーション力を著しく低下させることすら考えられます。

 このような企業経営にとっての本末転倒な状況を回避するには、内部統制システム構築プロジェクトで十分な「問題の抽出」を行うことが欠かせません。それぞれの問題点をどう解決するのか、もしくは内包していることを是とするのか、すなわち、どのように対応するのかについてマネジメント層が意思決定を下す必要があるのです。

 「問題の抽出」における情報源となるのが、「マネジメント層および現場の問題認識」と「社内の会議において使用された資料」です。つまり、社内資料として顕在化された問題と、マネジメント層と担当者層のそれぞれの頭にある潜在的な問題を一度網羅的に確認するというのがこのステップの主たる目的となります。この作業は地道なものですが、内部統制システムによる効果を最大限に導くためには極めて重要なものです。この作業のためのプロセスを、以下に提示します。

(1)プロジェクトメンバーとして想定される「問題の抽出」のための資料の入手

 一般的な企業で想定される資料例を挙げておきますので、参考にしていただきたいと思います。

 ●中期経営計画、単年度事業計画
 ●組織図
 ●(内部)監査報告書
 ●新人研修資料(会社の仕組みが分かりやすい)

(2)外部情報の入手(入手可能なものはすべて)

 外部情報も客観的に会社の問題を挙げているものが多く有益です。同業他社との比較上の問題も抽出できることがあります。

(3)日本版SOX法の法整備状況の把握(内部統制情報の入手チェック)

 今回の内部統制システムの構築において重要なのは法制度の整備状況を把握することです。ただし8月現在、金融庁からの制度対応の実施基準は公表されていないので、今後も十分なケアが必須です。

(4)上記の(1)(2)(3)から抽出・想定される問題に関し、プロジェクトチーム内での確認

 マネジメント層や現場は忙しいなか、時間を割くことになります。この時に既に資料化されている問題に延々と質問が続いたり、そもそもの業務に関する質問が続くようなことは避けるべきです。既に得られている情報を基にプロジェクトチーム内で問題を確認しておくことが必須です。