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 読者から送られてきたご意見を紹介し、応答文を付記する。たまたまではあるが、今回は厳しい意見が多い。特に若い読者から、経営者や団塊世代の先輩に対する痛烈な意見が寄せられた。


当事者として問題に直面
 私は40代に突入しましたが、「以前の勤務先から問い合わせを受けるベテラン」という立場で、まさに2007年問題に遭遇しています。前職は外資食品化 粧品会社の日本支社で情報システムを担当しておりました。その企業の情報システムはCOBOL言語と4GL(第4世代言語)で記述され、20年以上動いて いる上に、マニュアルも仕様書も無いというとてつもない状態でした。私はその企業に転職してから、「現行システムを解析してはドキュメントを作成する」日 々をおくりました。
 私が退職した後、情報システムの担当は何人も変わったそうです。しかしなかなか適任が見つからず、私のところに問い合わせが来るというわけです。聞いてみると、募集をかけても「COBOLが使いこなせる」という条件がまず高いハードルになってしまい、応募者は少数、しかも50代以上で採用しにくいとのことです。
 在籍中にできる限りのドキュメントは作っておいてきたつもりでしたが、そのドキュメントを使いこなせる人がいなければどうにもならないというのが実感です。ということから、2007年問題に対し、短期的にはOBを再雇用することが解決策と考えます。極論としては、既存システムを下手に延命せず捨ててしまい、新しく作り上げるという手があります。しかし、C言語のようなCOBOLよりは新しい言語と技術で組んだところで、何年か先には同じ事になるのでしょう。永遠不朽の技術が無い以上、本質的な解決策は無いのかもしれません。

 生々しいご意見である。情報システムの開発にあたっては、プログラミング言語というものを使って、コンピュータに処理させたい内容を記述する。事務計算用のプログラミング言語として、もっとも普及したのがCOBOLである。4GLは15年ほど前に喧伝されたもので、生産性が高く、コンピュータの専門家でなくてもプログラムを記述できるというのが売り物だった。複数のソフト会社が自社開発した4GLを販売しており、日本製の4GLも存在した。ただ、読者が指摘しているように、どれほど「新しい言語と技術」でシステムを開発したとしても、その瞬間からシステムのブラックボックス化が始まる。


団塊世代と経営者に責任
 解決策はシステムの再構築しかないはず。それができない一番の原因は、団塊世代の技術者が後継者を育ててこなかったことでしょう。所詮プレイヤーとしては優秀だったかもしれないが、コーチとしては最悪だったということか。「知識」は簡単にドキュメントに落とせるかもしれないが、一番重要な「知恵」の部分がドキュメントに落とせている状態を見たことがない。また、今日の状態を予想し、後継者の育成問題にしかるべき手を打つべきであった経営者の無策も追求されるべき。
 とにかく情報システムを再構築する。団塊世代は無償でサポートし、新しい世代に知識と知恵を身に付けさせる。そのコストは経営者が負担する。これが理にかなう。情報システムの世界においても、悪習の老人が優遇され、若者がないがしろにされる問題がみられることに対し、憂いを隠せない。

 「コーチとしては最悪」と「経営者の無策」。厳しい意見である。ただし、「知恵」を文書に残すことは、たとえ優秀なコーチと意識的な経営者がいたとしても、なかなか難しい。この読者が指摘しているように、再構築プロジェクトを実施し、ベテランと若手が一緒になって取り組むことが、知恵の伝承の近道と言える。こうした挑戦をせず、既存システムのお守りができるという理由でベテランを重用しているとしたら、それは確かに憂うべきことである。


エンジニアの問題ではない
 システムの開発対象が基幹業務しかなかった頃に従事していた年配のSE(システムズ・エンジニア)の方たちが、開発作業に追われて仕様をきちんと残せずにいた後始末を、後輩に押し付けているだけの話。さらにSEというより、現場での業務の継承がきちんとされていないので判断できる人材がいないだけ。
 つまり、エンジニアの問題ではなくて、会社自体の情報管理の問題です。そもそも古い基幹システムをそのまま使っていること自体、致命的なので、システムのスクラップ&ビルドをやるのが正しい。それがおそらく安価な解決策だと思う。

 業務の継承もまた大きな問題である。情報システムがいったん普及して、システムを使って業務を処理することが当たり前になってしまうと、業務の中身が分からないという現象が発生する。例えば、原価計算をコンピュータで処理し続けると、手作業で原価を計算できなくなってしまったりする。なぜそのような処理をするか、なぜそういう計算ロジックなのか、といったことが段々分からなくなる。こうした問題に対する特効薬はない。問題に気付いた企業の中には、社内講習会を開き、ベテランが業務について後輩へ教える場を設けたところもある。

 理想は、各々の業務に関する責任者を決め、責任者が常時、業務を見直し、やり方を変え続けることだ。こうすれば常に業務を意識していることになり、業務がブラックボックスになる問題を防げる。ただし、業務の見直しと合わせて、情報システムを修整しなければならず、迅速なシステム保守体制やシステム設計の柔軟性が問われることになる。


(応答文:谷島 宣之=「経営とIT」編集長)