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 情報システムの西暦2007年問題に備えるため、ITproというWebサイトの読者から送られてきた意見を紹介し、筆者なりの応答文を付記する試みを昨年実施してきた。引き続き、読者との対話を続けたい。


高齢化すなわち高給取り
 まさに今が重要な局面です。大型メインフレームを使っていらっしゃるお客様は、システム要員の高齢化による弊害に気づいていらっしゃいます。高齢化とはすなわち高給取りが増えるということです。しかし、ベテラン以外の技術者はシステムの中が分からないため、こういう高齢の技術者に頼りっきりになっている。リバースエンジニアリング・ツールを若い技術者が活用し、システムの構造を一目瞭然にするとともに、先輩から業務知識を学んで行くしかないと思います。

 「高齢化すなわち高給」という点は企業にとって悩ましいところである。そのベテランが優秀なら高給を支払い、定年後もなんらかの契約をして残ってもらうべきだろう。単に高齢というだけであれば、申し訳ないが高給を企業は払えない。しかし、いかに優秀なベテランであっても永遠に仕事をしてくれるわけではない。本欄で多くの方が指摘してきたように、若い技術者へノウハウを移管することも必要である。


「保守は高い」という認知が必要
 「2007年問題」とはなかなかキャッチーなタイトルだと思う。ところで米IBMがスパゲティ状態になった古いコードを解析し、最新技術でリフレッシュします、というサービスを始めたはずである。これが解決策ではなかろうか。つまり、システムの保守や解析、あるいは再構築は、高いスキルを持った技術者にお金を払って頼む必要があるものなのだと、企業の利用者に認知させることが重要と思う。

 仕様書が無くなっている古いコードを解析するリバースエンジニアリングについてはこれまでも読者から指摘があった。また、システムの保守や運用、それに必要な文書整理などに、それなりの対価が必要と企業に理解してもらいたいという指摘もあった。今回の読者は、その二つを結びつけた提案をしている。

 この読者の意見をやや拡大してとらえると、IBMのリバースエンジニアリング・サービスが有効かどうかは大きな問題ではない、となろう。極論すれば、効果がなくてもかまわない。「本来ならIBMに金を払って頼むやる仕事を、社内のシステム部門はこなしてきています。ですから、むやむにシステム部門の人員を減らさないで下さい」といった主張が経営者や社内の利用部門にできるということだ。


見えない部分を知る
 私は1946年生まれです。ベテランSEが力を付けた理由は、基本ソフト(OS)自体を知り尽くしていなければ満足のいくソフトが作れなかった時代に育ったためでしょう。現在の若いSEの方は、目に見えない部分(ソフト部分)を知ろうしませんし、教えられてもいない。それゆえに昔のSEに比べ、力不足の点がありますが、だからといって素質の問題ではありません。
 50歳を過ぎて現場で働くのは結構苦しいものですが、就労時間が不規則にならない現場を選び、マイクロソフトのACCESSを使ったソフト開発や、Webサイトの管理といった仕事をしています。

 西暦2007年問題について、「60歳に近いエンジニアなど現場にはいない。したがって杞憂」という意見をしばしばいただく。2007年問題を狭義にとらえるとそうかもしれないが、何回も書いているように、2007年問題とは「企業の基幹システムの肥大化・老朽化・ブラックボックス化と、それを解決するノウハウの不足」であり、60歳近いエンジニアが現場にいようがいまいが、この問題は起きるし、すでに起きている。ただし、今回意見を寄せた読者のように、現場で頑張っている方はおられるのも事実である。

 黎明期のSEはオペレーティング・システムの中身まで知っていた、と言う指摘もしばしばされる。IBMのMVSのソースコードを、読み解いたという経験談を話して下さるベテランは少なくないし、UNIXについても同様である。

 もちろん、昨今のOSは昔日とは比べものにならないほど肥大化し、ほぼ完全なブラックボックスになっている。OSそのものを作っているメーカーかその関連ソフト会社のエンジニアか、OSとともに動かすドルウエアを開発するエンジニアでない限り、OSの中身を知る機会も動機もない。ただし、中身がどうなっているかを知っていると、性能問題に対処しやすくなるということはある。そういえば、あるメインフレーマはかつて、OSまわりのサポートをするSEチームと、顧客のアプリケーションを開発するSEチームの間で、人事異動を定期的に実施し、両方が分かるSEを育てようとしていた。


(応答文:谷島 宣之=「経営とIT」サイト編集長)