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岩井 孝夫
佐藤 三智子

 A社のケースは,ERPパッケージを導入しようとした時に,多くの場合発生する問題である。そもそもパッケージ導入の大前提は,「従来の業務処理の流れを抜本的に見直して改革を図り,できる限りパッケージが提供している標準の業務処理手順に合わせる」ことである。

トップが業務改革の姿勢を示す

 パッケージが持つメリットの数々は導入時にカスタマイズを施せば施すほど消滅していく。したがって,パッケージのメリットを最大限に生かすならば,カスタマイズの実施は最小限にとどめ,実施したとしても基幹の部分ではない帳票様式程度の変更にとどめることが肝要である。

 しかし,長年にわたって身に付いている現状の業務処理の仕組みを抜本的に変えることに対して,現場のアレルギ反応は非常に大きい。現場のユーザーは使い勝手が悪くなる,業務にそぐわない,などの視点から,カスタマイズをどんどん要求してくる。もちろん,その修正が基幹部分の変更に直結するかどうかはしん酌しない。

 したがって,社員の心理的な抵抗をどのように和らげるかが,パッケージ導入の成否を決める最大の要素である。ユーザーを納得させるためには,トップを巻き込み,「全社として業務を改善する」という姿勢をとることが大事である。使い勝手の悪さなどは大事の前の小事として,後日の解決課題に回す必要がある。

 A社は2000年対応だけの投資をするよりは,懸案だった経営変革のためにシステムの大改革を実行すべきと判断した。ただし,新システムに取り組む目的が,業務改革の実現にあるのか,2000年問題対応と合わせて若干の業務を見直しする程度のものなのかがあいまいだった。

 業務改革が目的であったなら,現状の業務展開では将来展望が開けないこと,業務改革を実現する有力な支援手段としてERPパッケージを導入する,といった決断の背景を経営トップが幹部社員に説明し理解させることが肝要だった。業務改革には現在の業務を一新する心構えを幹部社員に持たせることが欠かせない。

 A社の電算部長は,専務が入っている異業種交流会で,化粧品メーカーの社長がERPパッケージを導入した経緯を話していたことを思い出した。そこで専務を通じて,その社長に連絡をとり,導入の経緯をA社の幹部会で講演してもらうことにした。

 講演会を通じて電算部長は,現場のさまざまな疑問や不安を拾い上げた。同時に,社長と専務にはERPパッケージ導入の方針をもう一度明確にしてもらった。こうして全社員に変革の意識を植え付けることからやり直し,徐々に現場の抵抗を和らげている。