メインフレームやオフコンといったレガシー(旧式)なハードウエアで動く業務アプリケーションを、UNIXサーバーなどオープン系プラットフォーム(インフラ)に移行すること。既存のアプリケーションを流用できて維持コストの低下も見込めるため、ここ1~2年で急速に注目を集めつつある。
レガシー・マイグレーションを実施する際は、従来と異なるインフラで実行しても処理結果が変わらないよう、アプリケーションを修整する。具体的には、データベース・アクセスの記述や開発言語の独自仕様に基づく“方言”のような記述を、新インフラ向けにツールで変換する。ソース・コードを変換するのでなく、マイグレーション用コンパイラを使い、新インフラで動作するロード・モジュールを旧プログラムから直接生成する手法もある。
広義のレガシー・マイグレーションには、アプリケーションを新たに作り直す「リビルド(再構築)」や、旧プログラムと同じ機能のプログラムをゼロから書き直す「リライト」が含まれる。通常は、既存のアプリケーションを移植する「リホスト」と同等の意味で使うことが多い。
レガシー・マイグレーションのメリットは、既存のアプリケーションを使い続けながら、システムの維持費用を低減できること。業務アプリケーションは多大な投資をして開発した貴重な財産であり、できれば継続して使いたいと考えるユーザー企業は多い。一方で、多くの企業がメインフレームの維持コストの高さに悩んでいる。マイグレーションの採用により、これら二つの問題を同時に解決できるとの期待が大きい。
維持コストは、旧モデルのメインフレームやオフコンに比べ、ハードのリース費用やソフトのライセンス費用、保守料を2割から5割程度抑えられるというのが相場。レガシー・マイグレーションの実施にかかる一時費用も、コーディングや単体テストがほとんど不要なので、再構築より2割から5割安くなる場合が多い。
レガシー・マイグレーションに必要な変換・移植ツールやITベンダーの支援サービスは急速に整いつつある。現在、この事業に携わるITベンダーは30社を優に超える。
ただし、すべてのアプリケーションがレガシー・マイグレーションに向くわけではない。例えば、ハードやソフトのリース/ライセンス費用で大幅な値引きを受けているレガシー・システムは、維持コストの削減効果を得にくい。
長年の修整で業務アプリケーションが複雑になっているシステムも、変換に手間取る可能性があるので要注意だ。システム全体の処理性能を見積もる「性能設計」や動作インフラの環境設定作業などに手こずり、一時費用が思いのほかかさんでしまうこともある。レガシー・マイグレーションに臨む際は、アプリケーションの棚卸しや事前調査を実施して、コスト削減効果や実現可能性を十分検証すべきである。