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 契約や税務関連の書類/帳票の電子データによる保存、閲覧を認める法律の通称。政府が2004年2月に発表した、世界最先端のIT国家を目指すプログラム「e-Japan戦略II加速化パッケージ」のなかで、法制化の方針が打ち出された。総理大臣を本部長とするIT戦略本部が法案を作成し, 2005年4月1日に施行された。

 ITの発達・普及以前にできた法律は、数多くの書類/帳票を紙で保存、または閲覧可能にすることを求めていた。貸借対照表や損益計算書といった財務諸表、税務処理に使う領収書、保険契約や証券取引に伴う契約書/申込書などである。これらの書類/帳票は短くて数年、長いものでは10年以上、紙による保存を義務付けられていたため、保存に多大なコストがかかっていた。
 e-文書法の施行によって、これらの書類/帳票はスキャナなどを使って電子データに変換した後、データだけを保存すればよくなった。紙の原本は廃棄可能になるので、企業はコスト削減が期待できる。
 経済界の期待が特に大きいのは、領収書などを含む税務関連書類の電子データ保存。日本経済団体連合会(経団連)の試算によると、税務関連書類を紙で保管するためのコストは、倉庫代や倉庫までの運搬費、廃棄費用などを含めると、経済界全体で年間約3000億円に達するという。

 e -文書法は、「通則法」と「整備法」の2種類の法律で構成する。通則法は「他の法律で、紙による文書保存が義務付けられている場合、原則としてすべて電子データで保存してよい」といった格好で、電子データによる保存を認める。紙による文書保存を義務付けていた法律は証券取引法や道路交通法など多岐にわたり、250本以上ある。これらの法律を一つひとつ改正するのは手間がかかるため、通則法によって、一括改正と同じ効果を出す。
 ただし、安全のために船に備える手引書や、携帯を前提とする免許書などは、通則法が認める電子データによる保存が可能な書類から除外する。これにより「緊急時に電子データを読めない」といった事態を防ぐ。
 もう一つの整備法は、通則法とは別に、特定の法律向けに電子保存可能な範囲を規定するもの。すでに電子保存に関する特別な規定がある法律のために制定した。国税にかかわる帳簿書類の保存に関する法律や地方税法、関税法などは、整備法で対処する。
 各省庁が個別に捕足規定を出す場合もある。例えば、税務書類の電子化を無条件に認めてしまうと、適正な税徴収の観点で危険がある。電子データで領収書を保存されると、偽造の発見が困難になると税務当局が懸念しているからだ。このため税務関連書類を電子化する条件として、スキャナの仕様を指定したり、タイム・スタンプなど原本保証のための仕組みの導入が義務付けられている。