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 偽造パスポートを使った違法な出入国を防ぐため、本人確認用のICタグを埋め込んだパスポート。「IC旅券」、「e-Passport」とも呼ぶ。
 埋め込んだICタグには、バイオメトリクス認証(生体認証)用のデータを記録しておく。顔写真や指紋、虹彩(瞳の模様)などだ。例えば、出入国の際、カメラでとらえた本人の姿とICタグの中にある顔写真データを機械的に照合することで、偽造パスポートを検出する。従来の目視だけによるチェックに比べて、他人のパスポートを使った“なりすまし”を高い確率で検出できる。

 電子パスポートは、2001年9月11日に米国で起こった同時多発テロのあと、出入国管理を厳格化する手段として、各国で導入機運が高まった。米国や欧州の各政府は、2005年から2006年にかけて、相次いで電子パスポートを導入する。
 日本政府も、電子パスポートに向けて2005年2月15日、「旅券法改正案」を閣議決定した。成田空港において、外務省、国土交通省など五つの省庁が共同で、「e-Passport連携実証実験」を2005年2月7日から3月25日までの1カ月半だ実施した。
 日本政府が導入を急いでいる背景には、22万人と言われる不法滞在者の多くが、偽造パスポートで入国しているという事情がある。日本での偽造パスポートの摘発は年々増えており、2004年は2000件に迫った。

 普及への阻害要因もある。どのバイオメトリクス認証方式を採用するか、各国で意見が分かれている点だ。航空行政の担当官庁が参加する国連機関、ICAO (国際民間航空機関)はすでに、顔写真データによる認証(顔認証)を世界共通で採用することを決めた。しかし、顔認証は撮影角度や加齢などの条件によって十分な精度が得られないことがある。そのため、米国や欧州各国は指紋認証や虹彩認証の併用を検討している。
 日本の外務省は、「特に指紋採取には大きな反発が予想されるため、慎重にならざるを得ない」とする。実際、米国が電子パスポートの導入に先立ち、 2004年1月から外国からの渡航者に対して指紋採取と写真撮影を義務付けた際、反発を招いた。ブラジルは差別的だと抗議し、米国からの渡航者に指紋採取と写真撮影を義務付ける対抗措置に出ている。
 e-Passport連携実証実験では、顔認証のみを使う外務省に対し、国土交通省が顔/指紋/虹彩認証を併用する方式を実施した。ただし,複数の認証方式を併用するのはまだ先になりそうだ。