PR

統合運用管理ツールの世界で,運用のベストプラクティス集である「ITIL」の採用が進んでいる。運用プロセスのマネジメント機能を強化することで,プロセスを可視化したり,作業ミスを減らしたり,といったユーザーの要求に応えることが狙いだ。内部統制の観点では,監査証跡の収集・管理機能も製品選択の重要なポイントとなる。

 統合運用管理ツールは、システムの監視や管理のためのものから、運用プロセスのマネジメントのためのツールへと、進化してきている。その進化の方向は、システム運用に必要な管理業務やプロセスを体系的にまとめたITIL(ITインフラストラクチャ・ライブラリ)に沿っている。

 今年3月、日立製作所がITILに沿った機能を取り入れた「JP1」(製品名としてシリーズ名を記載、以下同様)の新版を提供開始した。これにより、国内で提供される主な統合運用管理ツールのほとんどが、ITILで規定する「サービスサポート」領域を担う機能/製品を取りそろえた(図1)。

図1●ITILのサービスサポートを採用する統合運用管理ツールの基本機能
図1●ITILのサービスサポートを採用する統合運用管理ツールの基本機能

 サービスサポート領域は、ITILのマネジメント領域の中核にあるもの。具体的には、問い合わせや障害報告を受け付けて管理する「サービスデスク」「インシデント管理」、障害などの分析のための「問題管理」、システムの変更を管理する「変更管理」などがある。

 日立製作所に先行してITILのサービスサポート向け製品をそろえた各社も、ITIL関連の強化の姿勢を崩していない。日本IBMでは今後、サービスサポート以外のITILにおけるマネジメント領域にカバー範囲を広げる。同社の統合運用管理ツール「Tivoli」で、事業継続計画を目的とした「ITサービス継続性管理」のための機能などを提供する。BMCソフトウェアは、システムの変更や性能の変化が、業務に与える影響を分析する製品を提供する。

 ベンダー各社がITILを取り入れる背景には、企業の情報システムの管理が複雑化している上に、高い信頼性を求められていることがある。ITILに沿った機能を持つ富士通の「Systemwalker」を導入した、塩野義製薬の中井治郎情報マネジメント部長は、「利用部門が満足する信頼性や性能を保ちつつ、効率的にシステムを運用することが課題だった」と述べる。

 本記事では、運用プロセスのマネジメントを効率的かつ確実に実施する観点で、統合運用管理ツールをどのように選択すればよいのかを調べた。従来からある監視や管理の機能は、各社とも横並びになってきている。そこで注目されるのが、「ITサービス・マネジメントを実践する上で取り掛かりやすく成果が出やすい」(コマツe-KOMATSU推進室ネットワークテクノロジーグループの田畑健一担当部長)サービスデスクを中心にしたITILのサービスサポート関連の機能だ。

 07年3月現在、この機能を専用製品で提供する統合運用管理ツールのベンダーは、BMCソフトウェア、NEC、日本CA、日本IBM、日本ヒューレット・パッカード(HP)、野村総合研究所(NRI)、日立製作所、富士通の8社。各社の製品を採用したユーザー企業やSIベンダーの声などから、製品選択のポイントとして3つが見えてきた。

 1つめは、サービスサポートの各プロセスをいかに効率的に進められるか、だ。運用プロセス管理のために必要なデータの入力や参照、分析の機能において、各社の製品に違いがある。

 2つめは、統合運用管理ツールを構成する各種のソフトが個々に持つデータを、どのように一元的に管理するか、だ。管理コンソールが1つでも、情報が分散していれば、運用プロセスの作業が繁雑になりかねない。

 最後は、運用プロセスがルールに沿って実施されていることをチェックする機能があるかどうか。ミスや漏れを減らすために実態の評価が必要だ。また、内部統制の監査を受けるためにも有用である。

 次回から、選択ポイントそれぞれにおいて、各社の製品をチェックする。

統合運用管理ツールは個別製品の集まり

 統合運用管理ツールは、システムの運用に必要な監視や管理の各種作業を統合的に進めるためのソフトである。機能的には管理用ソフト群と、それらを1つのコンソールで管理するソフトで構成する。本記事では、サーバー監視やネットワーク監視、ジョブ管理、ソフトウエア配布を必須の機能とし、これらを連携させて集中管理できる製品とした。

図A●国内の運用管理ソフトウエア市場におけるベンダー別シェア(2005年)
図A●国内の運用管理ソフトウエア市場におけるベンダー別シェア(2005年)

 統合運用管理ツールを構成する各ソフトは、個別の製品としても提供されている。利用製品を同じベンダーでそろえられれば、製品間の連携機能を利用できる、操作性を統一できるなどのメリットがある。しかし実際には、ユーザー企業は監視対象の違いやサーバーと一体のサポート体制などを理由に、機能ごとに個別に製品を選ぶことも多い。そのため各社は、他社製品も統合管理コンソールで管理できるようにするなど、マルチベンダー対応を強化している。個別の製品を対象に運用管理ツールのベンダー別シェアを、昨年IDC Japanが調べた結果、日立製作所や富士通、NECといった国産サーバー・メーカーが上位を占めた(図A)。