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「管理される側」から見たPMOは、お役所、調整役、火消し役など、プロジェクトによって実にさまざまな見え方をする。こうした多様性は否定しないが、ただ一点、PMOとして堅持すべきことがある。それを忘れると「管理される側」からの信頼を失うだろう。

高橋信也
マネジメントソリューションズ 代表取締役

 プロジェクトを「管理する側」と「管理される側」の間には、いつも何となく不協和音が感じられるものです。「PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)はいつも各チームの進捗や課題を報告しろと言うが、PMO自身の進捗や課題は一体どうなっているんだ?」。日頃、PMOにくどくど管理されて苛立っているプロジェクトリーダーやプロジェクトマネジャなら、全体進捗会議の場でこう言いだすかもしれません。

 PMO側は、導入された管理プロセスに従い、各チームからの進捗や課題、またはリスクの情報を集めます。ルーチンワークではありますが、全体を管理する上で不可欠な作業です。その際、レポートの内容に不備があったり、提出が遅れたりすると、PMOはチームリーダーに注意を促して、催促します。

 ここでPMO側が、「お忙しいところ大変申し訳ないのですが、○○欄の記述をより具体的にして頂けませんか?」と丁寧にお願いすればよいのですが、「○○欄の記述が不明瞭なので、具体的かつ論理的な記述の徹底をお願いします」などと、事務的に、そっけなく表現してしまうこともあるでしょう。すると、チームリーダーには高圧的な態度と受け取られ、そこに「管理する側」と「管理される側」の対立関係が生まれることもしばしばです。

PMOの存在意義はプロジェクトによって変わり得る

 プロジェクトに限らず、社内の管理手続きに従うことや、管理部門から注意されることは心情的に嫌なものです。経費精算の提出期限を守らなかったり、人事の評価シートを適当に書いたり、私も昔はよく注意されました。きちんと締め切りを守り、ルール通りにしている方を「偉いなぁ」と思っていました。きっと、「決められたルールだから、従うのが社員の義務」というコンプライアンスの感覚なのでしょう。

 さて、このように管理手続きに対して「管理される側」からは多様な反応があります。プロジェクトにおいては、官僚的なプロセスと割り切り、管理レポートをテキパキと提出する方、プロジェクトマネジャへ進言してほしいと一生懸命に課題を記述される方、PMOへレポートを投げても自分たちにメリットは無いと不満を示される方、などです。

 裏を返せば、PMOの存在意義についての理解がそれぞれ異なっていると考えられます。PMOは「単なるお役所、事務屋さん」という見方、「プロジェクトマネジャとの調整役」という見方など様々です。さらに、PMOの中にコンサルタントがいる場合だと、PMOはプロジェクトマネジャに対するコンサルテーションを行うので、「火消し役」という見方も出てくるでしょう。

 会社組織の場合、人事、経理、総務という管理部門の名前を挙げればどの会社でも大体のイメージをつかめると思います。しかしながら、PMOと言うと、人によって様々な解釈があるようです。このコラムではPMOを「プロジェクトマネジメントオフィス」として表現していますが、複数のプロジェクトを対象としたプログラムマネジメントオフィスや、事務局としての意味合いでプロジェクトオフィスという組織もあります。

「PMOがどう貢献しているのか」をメンバー全員に示そう

 誤解を恐れずに言うならば、プロジェクトの状況により、さまざまなPMOの役割があっていいと思っています。例えば、プロジェクトマネジャのマネジメントスタイルにより、PMOに求められるものは変わってきます。カリスマ的なプロジェクトマネジャであれば、細かな報告より、「要は何か」と要点を求めてくるでしょう。現場好きなプロジェクトマネジャであれば、管理情報よりも具体的な課題に関する情報を求めてきます。こうした要素が、PMOの役割を変化させ得るのです。

 とはいえ、ただ一点、PMOには『管理される側の立場に立って管理情報を整理し、プロジェクトマネジメントの改善に貢献する姿勢』が常に必要だと考えます。例えば、何か課題が生じたとき、プロジェクト全体に影響する課題についてはその原因を分析し、解決のための会議をファシリテーションすることは少なくとも必要です。加えて、プロジェクトマネジャとの調整も行えれば、言うことはないでしょう。もちろん、そこまで強力なPMOを組織するのは、現実的に大変かもしれません。

 冒頭で紹介した、PMOと「管理される側」のやり取りをもう一度考えてみましょう。「PMOは各チームの進捗や課題を報告しろと言うが、PMO自身の進捗や課題はどうなっているんだ?」というPMOへの問い掛けに対して、PMOはどうするべきでしょうか。

 プロジェクトによってPMOの役割に多少の違いはあったとしても、PMOが「管理される側」に示すべきことは明確です。それは、「役割分担が不明瞭になっている」「担当が決まっていないタスクが存在する」「無駄な会議が多すぎる」「意思決定が遅れている」といったプロジェクトマネジメント上の課題に対し、それらを改善するプロセスが進行中であること、そしてその進捗状況や懸案事項を報告すればよいのです。

高橋信也(たかはししんや)

 1972年福岡生まれ。修猷館高校を卒業した後、上京。上智大学経済学部卒。ゼミは組織論、日本的経営の研究。大学卒業後、アンダーセン コンサルティング(現アクセンチュア)入社。CやC++によるプログラミングから業務設計まで幅広い工程を経験した後、2001年よりキャップジェミニのマネジャとして経営管理・業績管理のコンサルティングプロジェクトに携わる。

 コンサルタントとしての外部の目からだけではなく、内部の目でマネジメントを経験したいとの思いから、SONY Global Solutionsへ入社。その当時、最年少プロジェクトマネジャとなる。グローバルシステム開発プロジェクトのPMOリーダーとして活躍。インドにおけるオフショア開発を経験。

 コンサルテーションから、自社開発のソフトウエア提供、改革実施後のチェンジマネジメントまで、「知恵作りのマネジメント」を支援するマネジメントソリューションズを設立し、現在に至る。連絡先は info@mgmtsol.co.jp