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 負荷分散から発展したアプリケーション・スイッチは,現在では多様な高速化機能を取り込んでいる。搭載する高速化手法は大きく三つある。(1)サーバー処理のオフロード,(2)帯域の有効活用,(3)ブラウザの制御である(図1)。

図1●Webのレスポンスを高速化するアプローチは大きく3通りある
図1●Webのレスポンスを高速化するアプローチは大きく3通りある
(1)サーバー処理のオフロード,(2)ネットワーク帯域の有効活用,(3)クライアントのブラウザを制御の3通りがある。アプリケーション・スイッチはそれぞれに対応した高速化技術を備える。

 (1)は,Webサーバーの処理の一部を肩代わりするもの。例えば,SSLの暗号化・復号処理を代行する「SSLアクセラレーション」や,一度取得したデータを装置の内蔵メモリーなどに蓄積しておく「キャッシュ」が該当する。

 (2)は,クライアント-サーバー間の通信速度の改善を図る手法。データを圧縮してトラフィックを減らしたり,パケット損失時の再送手順を工夫したり,一度に送信するデータ量を増やしたりする手法がある。低速な回線で有効なもの,遅延が大きいと威力を発揮するものなど,手法ごとに特徴が異なる。

 (3)のブラウザを制御するアプローチは,ユーザーの体感速度をさらに高めたい場合に利用価値がある。クライアント側のキャッシュを効果的に活用して,サーバーからデータを取得する回数を減らす手法などが挙げられる。

サーバーにかかる負荷代行で高速化

 アプリケーション・スイッチの高速化機能によって,実際にどれだけの効果を得られるかは一概には言いにくい。もっとも,サイトの性質や構成するデータの種類によって,効果を発揮しやすい機能の傾向はある。

 ECサイトであれば,(1)のサーバー処理のオフロードを活用するとレスポンスの向上につながりやすい(図2)。理由は大きく二つある。一つは,ユーザーが入力した条件にマッチした商品をデータベースから抽出して順番に並べるなど,動的にWebページを生成する機会が多いこと。サーバーに負荷がかかりやすいため,サーバーの処理を代行する機能が有効に働く。

図2●サイトの種類によって効果が出やすい高速化機能が変わる
図2●サイトの種類によって効果が出やすい高速化機能が変わる
サイトによってレスポンス向上につながりやすい指標が変わる。それぞれに適した高速化機能がある。
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 もう一つの理由は,同時に多数のユーザーの接続をこなせる能力がサーバーに求められること。これらのサイトでは購入・決済などの手続きが続く分,一般にユーザー一人当たりの接続時間が長くなりやすいからだ。

 携帯電話や低速のモバイル端末からの接続が多いサイトも,クライアントの同時接続数を重視すべき。この場合もトラフィックに比べ,クライアントの接続数が相対的に多くなるからだ。やはり(1)のサーバー処理のオフロードが有効で,特にTCPコネクションを集約する機能が効果を上げやすい。

 一方,ユーザーがFTPなどでデータをダウンロードすることが多いサイトでは,データ転送にかかる時間やスループットを重視することになる。この場合は,(2)の帯域を有効活用する機能に注目したい。

 (3)はブラウザに依存する機能のため,(1)や(2)を先に導入する例が多い。ただし,動的ページの体感速度を高めたい場合などには試してみる価値は十分にある。

オプションの場合は導入費用がサーバー数台分

 導入する際のチェック・ポイントは大きく二つある。まずは導入効果がコストに見合うか。続いて,高速化機能の効果を検証するという手順を踏む。

 まずコストを見よう。高速化機能がオプションの製品では,相応の導入費用がかかる。例えば,米F5ネットワークスのWeb高速化オプションの価格は315万円。サーバーの購入価格を1台50万円とすれば6台分に相当する。

 ただ,「高速化機能を活用してサーバーの増設台数を抑えれば,運用コスト面で有利になる」(F5ネットワークスジャパンの武堂貴宏シニアプロダクトマーケティングマネージャー)という面はある。パッチ適用の手間やラック・スペースの増大など,サーバー増設に伴う運用コストの増加を抑えられるからだ。

 サーバーが10台,100台といった環境はもちろん,サーバーが1000台にものぼる大規模サイトの場合であれば,かなり大きな運用コストの削減効果を期待できる。ところが,全体最適を考慮すると,高速化機能を使うことのメリットは少ないと見るインテグレータもある。「高速化機能を活用する目的などでアプリケーション・スイッチにレイヤー7の情報を識別させると,レイヤー4レベルだけで処理するよりも性能が低下して,拡張性も下がってしまう」(ネットワールドのSI技術本部ネットワークインフラストラクチャーグループネットワーク・エンジニアの真野桐郎氏)。

 処理性能が低下しにくい上位機種は,価格も相応に高い。それならスイッチの役割をレイヤー4レベルの負荷分散に限定し,レスポンスの改善はサーバー増設などに任せた方が全体のコストが安く付くという考え方である。

 費用対効果が見合うと判断したら,適用するサイトに対するレスポンスの改善効果の検証に入る。期間は余裕を持って確保した方がよさそうだ。「同一サイト内でも稼働するアプリケーションの種類で効果は異なる。効果を一つひとつ評価する必要がある」(伊藤忠テクノソリューションズの久保賢晃ネットワーク&セキュリティ技術部ネットワーク技術第1課課長)。

 このようにサイトの性質などによって高速化の効果は変わってくる。以下では典型的な例として,ECサイト,携帯電話などモバイルからの接続が多いサイト,ダウンロードの多いサイトを取り上げる。各サイトで効果を発揮しやすい高速化手法を示し,その仕組みを順に詳しく見ていこう。