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奥野 博章 住友信託銀行 常務執行役員

奥野 博章氏
奥野 博章氏
(写真:斉藤 哲也)

 ITと業務は表裏一体だ。事実、金融機関における事務処理は情報処理そのもの。当社が全社のシステム戦略を企画する部門を「業務管理部」と呼んでいるのもそのためだ。ITだけではなく業務そのものを管理しているという意識の表れである。

 そうした考えの下、2004年から、自社の業務とシステムの全体像を理想的な姿に近付けるため、「EA(エンタープライズ・アーキテクチャ)」への取り組みを推進している。これまでに業務管理部は、全社の事業構造や各事業においてどのような業務があるかなどを分析してきた。

 業務内容を示した図を使いながら、各業務が実際にどんなシステムを利用しているかを書き込んでみると、システムの重複などの無駄が見つかりだしている。

 現在は、各業務の作業手順をより細かく示した図を整備している最中だ。そうした図は各業務システムを刷新するタイミングで、ユーザー部門が記述している。システムの要件定義に使うほか、システムの稼働後は業務マニュアルとしても利用する。

 ITと業務の全体像を明らかにすることで、当社はITも業務もシンプルにしていきたい。「シンプルにしよう」という明確な意識がないと、ITも業務も複雑になってしまう。

 特に今は、従業員の業務負荷があまりに高くなりすぎている。例えば、保険の窓口販売やシンジケート・ローンなど、過去の信託銀行では扱わなかった商品が増え、必要となる業務知識も増えるばかりだ。業務知識の習得だけに時間をかけられないため、システムが従業員を支援する仕組みが不可欠になっている。

 こうした状況だからこそ、やみくもにシステムを増やすのではなく、全体像を見すえながらITと業務をシンプルにしていくことが重要と考えている。もちろん、簡単ではない。歴史的に当社では、店舗ごとの裁量権が大きかったからだ。事務のベテランの発言に引っ張られてしまうことが多く、システム化は局所的になりがちだった。それも今となっては許されない。それに、シンプルなシステムなら、雇用比率が高まっている契約社員などもすぐに使いこなせるはずだ。

 シンプルさは効率化の観点だけでなく、内部統制の観点からも有効だと考えている。業務にしろITにしろ、例外を増やして処理が複雑になれば、統制すべきポイントが増えてしまう。内部統制の議論ではよく、「統制強化と効率化はトレードオフの関係だ。統制を利かせるためには、ある程度は効率を犠牲にする必要がある」という声を耳にする。だが、私は両立できると考えている。           (談)

奥野 博章氏
1975年4月住友信託銀行入社。98年2月公的資金運用部長となる。その後、法人業務部長、執行役員 業務管理部長を歴任し、2005年6月常務執行役員 業務管理部長に就任。06年8月より現職。1953年1月生まれの54歳。