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 第3世代携帯電話(3G)事業者が免許交付の対象外となったことで,一躍有力候補に浮上したアッカ・ネットワークスとウィルコム。両社は今回の免許方針案をどう受け止めているのだろうか。免許方針案の印象,想定しているビジネスモデルなどを両社のキーパーソンに聞いた。

1アカウントで複数の端末を利用可能に

写真1●アッカ・ネットワークス WiMAX推進室 高津智仁・副室長
写真1●アッカ・ネットワークス WiMAX推進室 高津智仁・副室長

アッカ・ネットワークス WiMAX推進室
高津智仁・副室長(写真1)

総務省の免許方針案をどう見ているか。

 全くの想定外というのが第一印象だ。3G事業者とそのグループ会社が対象外となったことは当社にとって追い風だが,5年以内に全国の各総合通信局の管轄区域ごとの人口カバー率を50%以上とする免許交付の要件は厳しいというのが正直な感想。全国の人口カバー率であれば都市部を中心に展開することである程度のメドを立てられる。しかし,5年以内に全国の各総合通信局の管轄区域ごとの人口カバー率を50%以上となると,設備を拡散して打たなければならない。相当な規模の投資が必要で,身の引き締まる想いだ。

総務省が2006年12月に開催したBWAカンファレンス(関連記事)では「設備投資は2000億円」とする試算を示した。

 2000億円としたのは,基地局展開だけのコストで,都市部と郊外部のカバー率は50%未満を想定したもの。あくまで免許方針案が出る前のもので,現状は異なる。ビジネスモデルによって投資額は変わるので,現時点の試算は公表できない。

資金調達のメドは立っているのか。

 当社単独では設備投資にかかる費用を賄えない。何らかの形で調達しなければならない。ただ,参入事業者は限られる。よほどのことがない限り,資金は調達できると考えている。

複数の3G事業者が連合体を形成するという見方も出ている。

 現状の競争状況を考えると実現は微妙だが,十分にあり得る話だと思う。その場合は当社が間に入ることができればと考えている。ただ,実際に話があったわけではない。

想定するユーザー料金は。

 検討中だが,定額制がベースになる。都市部を対象としたサービスは,イー・モバイルの定額通信サービス(基本使用料は月額5980円)より安くする。ライブドアの公衆無線LANサービス「livedoor Wireless」(月額525円)よりは高くなるだろう。

 販売形態は当社がエンドユーザーと直接契約を結ぶ方法を考えており,MVNO(仮想移動体通信事業者)に対しても提供する。その場合はMVNOが料金を設定することになる。

通信速度はどの程度出るのか。

 20M~30Mビット/秒が目標だ。セル・エッジでも数Mビット/秒を実現したいと考えている。2006年6~12月に横須賀リサーチパークで行った実証実験(関連記事)では,5MHzの帯域幅で5Mビット/秒程度の速度が出た。当時からチューニングを進めており,10MHzの帯域幅であれば目標に近い速度を達成できるだろう。

 実証実験は現在も神奈川県横浜市と新潟県魚沼市で実施している。魚沼市はデジタルデバイドの解消を想定した実証実験である。

2.5GHz帯無線ブロードバンドの市場はどのように立ち上がると見ているのか。

 当初はデータ通信カードによる利用が中心だが,将来は組み込み端末による新しい市場が立ち上がると考えている。米インテルがWiMAXのチップを提供し,それを搭載したノート・パソコンやUltra Mobile PC(UMPC),スマートフォン,ゲーム端末などが増えていくのは間違いない。

 データ通信カードはユーザーが購入して設定しなければならない。素人には使いにくく,特定ユーザーの利用に限られているのが現状だ。端末に内蔵されるようになれば無線LANのように使いやすくなる。データ通信カードの市場は1000億~2000億円程度だが,組み込み端末による新しい市場はその数倍のポテンシャルがあると予測している。

 このほか,ADSLを提供できない地域のデジタルデバイド解消にも役立てていきたい。

組み込み端末を利用した場合の契約形態は。

 携帯電話のように端末に加入者がひも付くモデルではなく,契約したアカウントを複数の端末で利用できるようにしたい。ただ,複数の端末から同時に接続した場合は当社のバックボーンの負荷が高くなるので,料金は少し高くする。SIM(subscriber identity module)カードの問題はあるが,ユーザーの利用端末を固定しないようにするつもりだ。端末とアカウントをネットワーク側でひも付けて管理することになるだろう。

音声は提供するのか。

 音声の伝送はフュージョン・コミュニケーションズと共同で実験しており,特に問題ないと判断している。0AB~J番号で要求されるような高音質は難しいが,050番号のVoIP(voice over IP)並みの音質は期待できる。アプリケーションの一つとして提供する可能性はある。

免許を取得できた場合,サービスの開始はいつころになりそうか。

 2008年前半になると考えている。ただし,当初はデジタルデバイドを解消するためのサービスから提供する可能性が高い。固定通信向けは既に機能がそろっており,展開しやすいからだ。モデムを使った半固定通信のサービスになる。

 一方,移動通信向けは2008年後半から2009年初頭になる可能性が高い。WiMAXのチップを組み込んだ端末は2007年中に登場しないだろう。データ通信カードは徐々に登場すると思われるが,それまでは置局をじっくり進めたいと考えている。

HSDPAと競争力のある料金を検討

ウィルコム ネットワーク技術本部長
平澤弘樹・執行役員常務

総務省の免許方針案で3G事業者が対象外となった。

 総務省は2.5GHz帯で携帯電話と違った新しい市場を創出,活性化していくという方針なのだろう。既存サービスの延長で「通信速度が早くなりました」としてもダメで,何か新しいことを提案しなければならない。失敗すれば3G事業者から非難を受けるのは必至で,免許を取得した事業者の責任は重い。非常に厳しい内容と受け止めている。

設備投資はどの程度の額を見積もっているのか。

 現在,検証中だ。基地局は現行のPHSにオーバーラップさせながら展開していく。場所は既に確保できているので展開しやすい。

 問題は,ユーザー料金をいくらに設定するか。通信速度が速くなるからといって,その分料金を高くするわけにはいかない。基本的に現行の水準よりは高くできないと考えている。市場の動向を見ながら決めることになるが,HSDPA(high speed downlink packet access)のサービスと競争力のある料金を設定したい。

 このような前提で過剰な設備投資を行うと採算が合わなくなる。何千億円も投資するのであれば,それなりの料金を設定した上で相当なユーザー数を獲得しなければならない。非常に悩ましい。

2.5GHz帯無線ブロードバンドの市場はどのように立ち上がると見ているのか。

 当初はW-ZERO3 [es]のようなスマートフォン市場が広がると期待している。ノート・パソコンを持ち歩く人は限られるが,スマートフォンがパソコン並みに高機能化すれば今よりも利用が広がるだろう。

 家電や自動車などへの組み込みによるユビキタスの市場も期待している。これらは低速のデータ通信なので,次世代PHSを利用する必然性はない。しかし,高速なデータ通信だけでは採算性の面でビジネスが苦しい。小さなトラフィックの市場も同時に狙っていかなければならないと考えている。

通信速度は。

 実証実験の結果(関連記事)では,10MHzの帯域幅で20Mビット/秒を実現できている。帯域幅を20MHzに広げたり,MIMO(multiple-input multiple-output)のような空間多重の技術を適用したりすることでさらに高速化できる。20Mビット/秒以上もあれば新たな市場を取り込めるのではないかと期待している。

音声の扱いはどうなるのか。

 次世代PHSは当面,データ通信が中心になる。音声や低速のデータ通信は現行のPHSを活用する。現行のPHSと同じエリアをカバーできるようになれば音声を次世代PHSで提供することも考えているが,移行には時間がかかる。現行のPHSは基地局が約16万局で,人口カバー率は99%。ここまで来るのに10年以上かかった。次世代PHSで同じ人口カバー率を実現するには同程度の期間がかかると見ている。

免許を取得できた場合,サービスの開始はいつころになりそうか。

 2009~2010年を想定している。3年以内にサービス開始という免許交付の要件を考えると,開発の遅れは許されない。このスケジュールを守れるようにきっちり取り組んでいきたい。

■変更履歴
アッカ・ネットワークスの高津氏の回答で,「5年以内に全国の各総合通信局のエリア・カバー率を50%以上」としていましたが,正しくは「5年以内に全国の各総合通信局の管轄区域ごとの人口カバー率を50%以上」です。同じ回答内で「エリア・カバー率で50%となると設備を拡散して打たなければならない」としていた部分は,正しくは「5年以内に全国の各総合通信局の管轄区域ごとの人口カバー率を50%以上となると,設備を拡散して打たなければならない」です。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2007/06/15]