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 第1回第2回で説明したように,シンクライアントはセキュリティ対策や運用管理の面で大きなメリットが見込まれる。しかし,いざ導入するとなると,問題になるポイントが3つある。

 1つは,初期導入費用がまだ高いこと。シンクライアントを利用するためには,シンクライアント端末と,端末の画面情報などを端末に送り込むためのサーバー側設備が必要になる。採用するシンクライアント製品にもよるが,比較的新しい技術であることもあり,価格は決して安いとはいえない。専用端末であれば1台当たり15万~20万円程度と,低廉化が進むパソコンに比べて高価である。

 2つめは,実際にパソコンからシンクライアントに移行した場合の,業務への影響度が分かりにくいことだ。自社で開発したアプリケーションがシンクライアントでも動作するかどうかは,あらかじめ検証して確認する必要がある。また,パソコンに直接接続して使用している業務プリンタや,ICカード・リーダーなどのデバイスは,シンクライアントでは動作しない可能性がある。シンクライアントに移行することで業務システムに変更が生じるならば,それによる業務への影響度を見極めて導入しなければならない。

 3つめは,ブレードPCや仮想化といった比較的新しい技術を使っているシンクライアント・システムを運用するには,パソコンとはまた別のノウハウが必要になることだ。シンクライアントのサーバー側設備がダウンすると,シンクライアント端末は使用できなくなる。つまり,業務システムのサーバーがダウンするのと同様,業務全体が止まってしまう恐れがある。シンクライアント・システムは,業務システム同様の運用レベルが求められるのだ。

サービスでシンクライアントのハードルを越える

 しかし,今年に入って,これらの問題点を解消できそうなサービスが相次いで始まった。シンクライアント・システムのホスティング・サービスである。NEC,沖電気ネットワークインテグレーション,日立製作所といったベンダーがサービスを提供する(表1)。これらのベンダーは,自社が運営するデータセンターに設置されたサーバー側設備を,一定料金でユーザー企業に期間貸しする。ユーザー企業は,シンクライアント端末だけを用意すればよい。

表1●主なシンクライアント・ホスティングサービス
表1●主なシンクライアント・ホスティングサービス
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 サービスの利用料金は,安ければ端末1台あたり1万円前後ですむ。初期費用が安いため,一部門だけ利用したい企業や,クライアント数が少ない中小企業にとっても,シンクライアント導入が現実味を帯びる。「コールセンターの端末を20台だけシンクライアントにしたい,といったニーズも多い」(サイボウズ・メディアアンドテクノロジーの土屋 継代表取締役社長)。

 買い切りの製品と違い,ユーザー企業はシンクライアント端末を試験的に導入してみて,もし業務に合わなければやめればよい。「まずは使ってみたい,というユーザーに向いている」(クオリカの阿部清人アウトソーシング事業部長)。「シンクライアントをいきなり全社的に導入するのはリスクが高いと考える企業は少なくない。評価目的でサービスを利用する企業もいる」(NEC マネージドプラットフォームサービスの高橋幸雄シニアエキスパート)。

 サービスを提供するベンダーがサーバー側設備を運用管理するため,情報システム部門の負担も軽い。Windowsへのパッチ適用やデータのバックアップ,冗長構成による障害対策なども,サービスの一環としてベンダーが実施する。サービスという選択肢が増えたことで,シンクライアントを導入する動きはさらに加速する可能性がある(図1)。

図1●シンクライアントの欠点は,ホスティング・サービスを利用することで解決できる
図1●シンクライアントの欠点は,ホスティング・サービスを利用することで解決できる
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 ただし,現在提供されているのは,クライアント・アプリケーションをサーバー側で実行して画面情報だけを端末に送信する「シンクライアント型」のサービスだけである。OSのブート・イメージ・ファイルを端末に送信し,端末側でOSやアプリケーションを動かす「ネットブート型シンクライアント」のサービスは,提供されていない。数十~数百Kバイトのブート・イメージを端末を起動するたびにダウンロードする必要性があるため,ネット経由で利用するサービスとして提供するのは難しいのだ。

共有型と占有型の2つのタイプ

 各ベンダーが提供しているサービスは,仕組みやサービス内容が異なる。サーバー側設備の構成方式によって,大きく2つのタイプに分けられる。

 一つは,1台のサーバー設備を複数のシンクライアント端末で共有する「サーバー共有型」である。利用する企業ごとに用意されたサーバーに,複数のシンクライアントがアクセスする。シトリックス・システムズ・ジャパンの「Citrix Presentation Server」や,Windows Server2003のターミナル・サービスを使ったサービスである。NEC,NTTコミュニケーションズ,サイボウズとさくらインターネット,ファーストサーバのサービスがそうだ。

 サーバー共有型のサービスは,サーバーがダウンした時の影響が大きいものの,汎用的なPCサーバーを使っていることもあり,比較的料金が安い。安いものでは1台あたり数千円台で利用できる。

 もう一つのタイプは,シンクライアント端末とサーバー側設備を1対1でひも付ける「占有型」である。ブレードPCや,仮想化ソフト上で動く仮想PCを,シンクライアント端末ごとに割り当てる。NEC,沖電気ネットワークインテグレーション,クオリカのサービスがのタイプである。

 占有型のサービスは,シンクライアントとサーバーが1対1であるため障害が及ぼす影響範囲が小さい。ただ,リソースを共有せず,ブレードPCや仮想化ソフトウエアといった新技術を使っていることもあり,料金は割高だ。1台あたり1万5000円程度からである。

 次回は,これらのホスティング・サービスの特徴をさらに詳しく見るとともに,ユーザー企業がサービスを選択する際に,どんなポイントに注意すればよいかを考える。