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改めて,PMOの責任範囲を考えてみたい。一般にPMOは「管理責任」を負うと考えられているが,PMO自らが管理を実行するわけではないし,そこには手を出さないほうがいい。PMOが負うべきは「説明責任」だろう。

高橋信也
マネジメントソリューションズ 代表取締役

 プロジェクトの終盤に作業負荷がピークを迎えた設計開発チームから見ると,PMOメンバーは暇そうに見えるかもしれません。私も導入支援チームリーダーなどをしていたころ,「PMOはいったい何をやっているのだろう?」と思ったりしたものです。

 PMOと設計開発チームでは,忙しい時期が全く異なります。PMOが忙しくなる時期は,予算調整,体制作り,管理プロセスの導入などが立て込む各フェーズの初期段階です。プロジェクト終盤になると,作業がルーチン化されるため,PMO自体の作業はそれほど忙しくはありません。もし,プロジェクトの終盤でPMOが非常に忙しくしていたら,そのプロジェクトはかなり危険な状態と言えるでしょう。

プロジェクトの終盤には成果物の作成も手伝う?

 プロジェクトによっては,PMOも設計開発チームと一緒に成果物を作成することが,しばしばあります。プロジェクト終盤に入り,予算不足・人手不足の中,プロジェクトメンバーが一丸となって取り組むことで,なんとか期日や品質を守ることもあります。

 もちろん,PMOには基本的に,プロジェクトの成果物を作成する責任はありません。システム開発プロジェクトの場合,要件定義書や詳細設計書,プログラムなどの作成責任は設計開発チームにあります。建築や造船,エンジニアリング系のプロジェクトでも,PMOが「もの」を作ることはないでしょう。

 とはいえ,何とかプロジェクトを成功させるためにPMOメンバーは手を貸したいと思う気持ちになります。毎晩,深夜まで残業している設計開発チームから「手伝ってよ」と頼まれたら,断りづらいでしょう。

 さて,ここで改めて,「PMOの責任とは何か」を考えてみたいと思います。

 一般に,PMOには「管理責任」があると考えるのではないでしょうか。このコラムの第2回でもPMOの役割として,進捗管理,課題管理,リスク管理,変更管理,品質管理,予算管理といった仕組みを,プロジェクトの中にうまく導入することが重要という話をしました。その意味では「管理をさせる」ことに責任があると言えます。

果たすべきはプロジェクト・マネジメントの「説明責任」

 また,管理責任を「実行責任」(Responsibility)と「説明責任」(Accountability)に分けた場合,PMOが持つべき責任は「説明責任」になるでしょう。整理すると,『PMOはプロジェクトの状況について説明する責任があり,そのために管理を徹底させる』と解釈できるかと思います。

 PMOの責任範囲を「管理責任」と定義してしまうと,PMOはこの責任を果たすために管理を強化しようとするでしょう。その結果,設計開発チーム側の管理負担が無駄に増える傾向にあるようです。「管理責任」は狭い意味で正しいかもしれませんが,広い意味で考えるとPMOの本来の責任は「プロジェクトマネジメントの生産性を上げること」にあるはずです。

 例えば,プロジェクト終盤における重要案件への対応を,「タスクフォース」で取り組む場合があります。タスクフォースとは特別作業部隊のことで,ある特定の課題や問題に対し,時限的な組織として立ち上げます。実際に作業を行う担当者は設計開発チームとの兼任となります。PMOは,タスクフォースを立ち上げるための調整や,タスクフォース内で実行すべきタスクの定義,進捗管理,課題管理,会議のファシリテーションなどを行います。

 プロジェクト終盤になると,開発チームはどうしても目の前にある作業に集中してしまい,プロジェクト全体に影響のある作業を疎かにしたり,後回しにしたりします。そのような場合に,優先度の高い作業をタスクフォースで取り組ませることにより,PMOは解決を促すことができます。このような「プロジェクトマネジメントの生産性を上げること」に,PMOは全力で取り組まなければなりません。成果物を作る仕事との掛け持ちは,できるだけ避けたいところです。

 PMOが果たすべき主な責任は「説明責任」ですが,説明責任を果たすために管理を増やし,チーム内の負担を増やすことも避けたいものです。管理工数が増えすぎると,プロジェクトマネジメントの生産性が低下します。

 例えば,会議時間が増える,管理レポートを書くための時間が増えるといったことが生産性を低下させます。管理レポートについては,作業内容,遅延状況,遅延への対策,エスカレーション課題,共有事項などを記入するテンプレートを利用するわけですが,とりあえず体裁だけ取り繕うために記入するチームリーダーもいます。そのようなレポートを読んでもプロジェクトの状況が分からないので,PMOがヒアリングのための会議を頻繁に開催するはめになる場合もあります。


高橋信也(たかはししんや)

 1972年福岡生まれ。修猷館高校を卒業した後,上京。上智大学経済学部卒。ゼミは組織論,日本的経営の研究。大学卒業後,アンダーセン コンサルティング(現アクセンチュア)入社。CやC++によるプログラミングから業務設計まで幅広い工程を経験した後,2001年よりキャップジェミニのマネジャとして経営管理・業績管理のコンサルティングプロジェクトに携わる。

 コンサルタントとしての外部の目からだけではなく,内部の目でマネジメントを経験したいとの思いから,SONY Global Solutionsへ入社。その当時,最年少プロジェクトマネジャとなる。グローバルシステム開発プロジェクトのPMOリーダーとして活躍。インドにおけるオフショア開発を経験。

 コンサルテーションから,自社開発のソフトウエア提供,改革実施後のチェンジマネジメントまで,「知恵作りのマネジメント」を支援するマネジメントソリューションズを設立し,現在に至る。連絡先は info@mgmtsol.co.jp