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写真1●CEOに就任した共同設立者のJerry Yang氏
 米Yahoo!が今,急ピッチで経営改革を進めている。6月18日,Yahoo!は共同設立者のJerry Yang氏(写真1)が同社のCEOに就任すると発表した(関連記事)。Yang氏はこれまで,同じく同社共同設立者であるDavid Filo氏とともに「Chief Yahoo!」の肩書きで同社の経営に携わってきた。しかしYang氏自らが最高経営責任者としてYahoo!を率いるのはこれが初めてだ。

 一方で2001年5月からの6年間,会長兼CEOを務めてきたメディア畑のTerry Semel氏は非常勤の会長職に退いた。ここ最近,Semel氏の経営手腕が疑問視されていたが,事実上,株主に退任させられたと言われている。今,海外のメディアは,今回のYahoo!の経営改革を巡ってさまざまに報じているが,異例のトップ交代の背景には何があったのだろうか。

目まぐるしく変化する組織体制

 Yahoo!は言うまでもなくポータルの最大手。1995年の設立以来,常にその座を維持してきた。Yahoo.comのトップページやファイナンス・ページは人気を博しており,今も特段ページビューが下がっているわけではない。またYahoo!サイトのユーザー滞在時間は非常に長いという定評もある。その同社が業績不振に苦しんでいる。今年1-3月期の業績発表で,過去15四半期続いてきた売上高の記録更新は止まってしまった。純利益は11%減となり,減益はほぼ1年にわたって続いている。主力の広告販売事業が伸び悩んでいることに加え,コスト高で利益を圧迫しているのだ(関連記事)。

 Yahoo!は昨年末から今年初めにかけて大規模な組織再編を行った。それは「広告」「サービス」「技術」という3つの事業部門を設置し,それぞれを主要顧客セグメントに対応させていくというもの。製品やサービスではなく,顧客ごとの分類で組織を刷新するというのが狙いだ。収益回復の最前線となる新広告部門の責任者に,CFO(最高財務責任者)のSusan Decker氏を起用し,業績回復を図った(関連記事)。

 組織はその後も変化を続ける。5月には新CFOの人事を発表(関連記事)。これまでのCFOであったSusan Decker氏を広告部門に専念させた。さらにこの6月,Yang氏のCEO就任発表と同時に,Decker氏をYahoo!の新社長に任命した。
 
 そしてDecker氏の社長就任後わずか1週間。同社は米国の広告事業を再編すると発表した。米国における検索広告と,バナー広告などのディスプレイ広告の販売事業を,「北米営業部門(North American Sales)」として統合する(関連記事)。これまでの検索広告販売事業の責任者を新設部門のトップに任命し,これに伴って米国営業部門の責任者が退社した(関連記事)。

一向に縮まらないGoogleとの差

 広告事業の再編についてYahoo!は発表資料の中で,昨年末米国の調査会社comScoreと共同発表した調査結果を引用し,次のように説明している。

 「検索広告とディスプレイ広告の両方を提供している企業のページビューは,そうでない企業に比べて68%伸びている。またユーザーの滞在時間は66%増と高い水準にある。重要なのは,それらユーザーによる企業製品/サービスの購買は,オンライン購買の場合で244%増,オフライン購入で89%増となっていること」‐(中略)‐

 「広告主は,検索/ディスプレイ/ビデオといったさまざまな広告手法を横断するソリューションを求めている。これからの広告とは,それぞれを個別に選択するのではなく,広告の製品ラインナップ全般を活用していくことなのだ」(発表資料

 Yahoo!は今後,異種の広告を個別に販売することに注力するのではなく,それぞれを連携させた包括的なソリューションを顧客に提供していく。今回はそのための組織再編であり,それをまず主戦場である北米で実施するというわけである。しかし一連の組織再編の背景には,ディスプレイ広告の低迷に加え,相変わらず伸び悩む同社の検索エンジン・シェアがある。皮肉にも同じ調査会社の別の調査によれば,米国におけるYahoo!のシェアは一向に伸びていない(図1)。

図1●米国における検索エンジン・シェア推移(2007年1~5月)

 同社は今年第1四半期に新たな検索広告販売システム「Panama」を米国で投入した。決算発表の電話会見で前CEOのSemel氏は,Panamaの出足が好調であることを強調し,その成果は第2四半期に顕著なものになると述べた。Yahoo!は,Panamaによって検索市場のシェアを伸ばし,Googleに追いつきたい考えだったが,このcomScoreの調査結果を見る限り,その後2カ月が過ぎた今でもGoogleとの差は縮まっておらず,むしろその差は広がるばかりである。この5月におけるシェアは,Googleが50%を超えたのに対し,Yahoo!のそれは26.4%と,3カ月連続して減少している。