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 動画共有サイトが次々に登場している。昨年から今年にかけて,ワッチミー!TV,クリップライフ,アメーバビジョン,ニコニコ動画などが相次いでサービスを開始し,この4月以降も,Yahoo!ビデオキャスト,@niftyビデオ共有,eyeVio(アイビオ)などがスタートした。6月下旬には,ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)のmixiが,これまで有料会員だけに提供してきた動画共有サービスを一般会員にも開放し始めた。

 こうした動きの背景には,主にポータルや検索系,放送局系のサイトにおける「Web2.0の流れに対応し,利用者が情報を発信するソーシャル・メディアとしての機能を強化しよう」という狙いがある。ソーシャル・メディアの中でも「動画共有」への入れ込みがすごいのは,米Google傘下のYouTubeが,圧倒的な集客力を見せつけているからだ。

 ネット調査会社ネットレイティングスによると,日本国内における今年5月の動画関連サービスの利用者数(家庭からのアクセス)は,YouTubeが1164万8000人とトップで,2位のYahoo!動画(575万8000人),3位のGyao(489万7000人)を2倍以上引き離した。2005年12月にサイトが正式公開されてから急速に利用者を伸ばし,開設から1年足らずであっさりと動画サイト1位に躍り出た。

「動画配信」だけではもうからない?

 動画共有サイトが相次ぎ登場する一方で,数年前から動画配信サービスを提供しているYaoo!動画やGyaoでは,広告売り上げが伸び悩む状況が続いている。これらの動画配信サービスでは,映画配給会社などからの映像作品の買い付け費用や自主制作番組のコンテンツ制作費が必要となる。結果として,なかなか収益が好転しない。

 例えば,GyaOは先月末で約1450万人の視聴登録者を抱え,利用者数も伸びているが,運営を手がけるUSENの映像・コンテンツ事業は,2007年8月期の中間決算(2006年9月~2007年2月)で53億3100万円の営業損失を計上,昨年に引き続き赤字だった。「損失の半分以上は映像配給会社であるギャガ・コミュニケーションズによるもの」(USEN)というが,自主制作番組を一定量制作する現在の事業モデルでは,コンテンツ制作費がかさみ収益が好転しない。Yahoo!動画も,サービス単位での収益は公表していないものの,「広告ベースでいくか,コンテンツ課金ベースでいくか,模索している段階」(ヤフー)という。

 そこへきて,ユーザーが動画を投稿する「CGM(Consumer Generated Media)」の代表格,YouTubeの躍進である。一般利用者が自らの裁量で動画を投稿するため,多くの著作権問題を引き起こしているものの(関連記事1関連記事2),その媒体力を目の当たりにしたネット企業やポータル各社などが,著作権侵害対策をあれこれ施しながら,自ら動画共有サービスに乗り出してきたというわけだ。

 だが,コンテンツ収集力や集客力を武器に,広告収入で事業が成り立つ動画共有サイトの数はそう多くはないはずだ。目下,国内で利用者が多い動画共有サイトは,YouTube,daily motionの外国勢に続き,ドワンゴの子会社(ニワンゴ)が運営するニコニコ動画がある。ニコニコ動画は,投稿された動画にユーザーが自由に字幕(コメント)をつけられる機能が人気。デザインもコンテンツも若い男性向けに作られており,Web版の大衆週刊誌といった気やすさが受けている。

SNSと連携した「動画共有」が増える

 このほか,SNSと連携した動画共有サイトを立ち上げ,マーケティング・ツールとして活用しようという取り組みも増えている。昨年,大塚製薬が大手SNSのmixiと提携,「ファイブミニ」のプロモーションで高い効果を上げ,注目された。こうした成功例を見て,企業がSNSと提携したり,自前のコミュニティを立ち上げようという動きが加速している。そうしたコミュニティにおいて,動画は顧客同士のコミュニケーションを活性化する重要な手段になる。

 例えば,ソニーが4月にサービスを開始した動画共有サイトのeyeVio。デジタルカメラやウォークマンの開発元という業態を反映し,クリエイター指向の強い利用者が集まるコミュニティ作りを意識しているようだ。トップページのメインチャネルにはユーザー作品ではなく,一線のクリエイターによるコラボレーション映像をアップして動画の作品性やクオリティをアピールしている。

 またインディーズ音楽で国内最大級のコミュニティ・サイトを運営するミュージーは,NTTのクリップライフから動画共有サービスの提供を受け,新人アーティストの売り込みやCD発売前のプロモーションに活用している。ミュージーにはコミュニティを活性化して有力な新人発掘の場にしたいという期待があり,NTTも企業利用の実績を積むことで,動画共有システムの販売力を高めたいという狙いがある。

 動画共用サイトをマーケティング・ツールに利用する場合に気になるのは,動画の持つリアリティー(現実性,迫真性)によってコミュニケーションの密度が高まる半面,個人攻撃や中傷が横行してコミュニティが荒廃しないかという点だ。

 例えば,動画共有サイトのニコニコ動画は,その大衆感覚が受けている半面,画面に書き込まれたコメントの中には口汚く人を貶めるようなものもある。記者にとっては,コンテンツに興味があっても,時にはコメントが雑音になって楽しめない。良くも悪くも,本音そのままのストレートさがサイトのカラーになっている。

 もちろん,何でも運営者がコントロールしていいわけはないが,利用者数を増やしたいがあまり利用者に迎合するようになると,コミュニティは時に統制を失ってしまう。今さら大きなお世話と言われそうだが,増殖する動画サイトの運営者はこのあたりを留意しなければならないだろう。

 mixiは,動画共有サービスを導入するに当たり,参加メンバーに段階的な制限を設けた。2月の開始時にはまず,月額315円を払っている有料会員だけに同サービスを提供。続いて,4カ月間の運用状況を見て,6月下旬から無作為に選ばれた一部の一般会員にサービスを開放,さらに利用状況を見ながら順次利用できる会員を増やしていくという。“荒れない”コミュニティ作りのための施策として,1000万人の会員を獲得したWeb2.0の先駆者に学ぶべきところは多い。