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Gartner, Inc.
イボンヌ・ジェノベーゼ ヴァイスプレジデント(VP)兼 最上級アナリスト
本好宏次 主席アナリスト


 SAPのR/3 4.6cに対する通常サポートが2006年末で終了したため,SAP ERP 6.0へのアップグレードを希望しないユーザーはサポート期間延長のための追加料金を支払い始めている。そこで,既存ユーザーは,アップグレードのタイミング,費用,メリット,そしてSAP ERP 6.0以降のSAPの戦略方向性について検討を行っている。

 SAP ERP 6.0へのテクニカル・アップグレードがユーザーに与える影響は軽微であり,直近では,追加料金を払いたくないユーザーにとってのメリットが中心となる。

 問題は,アップグレードに要する費用がIT部門の通常予算を超える場合である。ユーザーは,アップグレードが業務上必要なことを証明する必要がある。ほとんどのユーザーは,アップグレードの恩恵が財務会計や人材管理の機能拡張ととらえているが,SAP NetWeaverの新技術やインスタンス統合が主なメリットと考えるユーザーもいる。

 ガートナーは過去のリサーチに基づき,SAP ERP 6.0への移行およびSAPの今後の戦略に関して以下のように予測する。まず,2007年末までにR/3をインストールしているユーザーの少なくとも50%が,mySAP ERPへのアップグレードを着手または完了する。さらに,2009年末までには,R/3ユーザーの30%が4.6cまたはR/3 Enterpriseの追加保守費用を支払う。いずれも世界全体でみた場合,実現可能性は8割程度とみる。

SAPの保守ポリシーに変更はない

 そこで,ユーザー企業に対して,以下を提言したい。

 第1に,SAPの保守ポリシーに変更はない。標準サポートの費用は従来通りライセンス費用の17%。22%と説明する営業担当の存在が報告されているが,これはプレミアムサポートの場合であり,正確ではない。

 第2に,ユーザーは,保守費用とテクニカル・アップグレードの費用を比較し,SAP ERP 6.0の導入についてROI(投下資本利益率)を検討すべきである。その際,2010年末まではコアのERPシステムに大きな機能変更がなされず安定化が図られると発表されていることも勘案する必要がある。

 第3に,SAP ERP 6.0のコードの品質は安心していい。しかし,人材不足が問題となる可能性がある。同製品の主要市場である米国でもSAP ERP 6.0の導入率が12%と低いためである。アップグレード前に,SAP ERP 6.0に習熟した人材を活用できるか確認すべきだ。

 第4に,前述のとおりSAP ERP 6.0へのアップグレードがユーザーに与える影響は軽微だが,その分恩恵も少ない。機能拡張すればユーザーが享受するメリットは増える。つまり,大きな見返りを期待する場合は費用がかかる。

 最後に,ユニコード変換は重要である。稼働前には,十分な評価とテストを行う必要がある。ここまで述べてきたように注意すべきことは多いが,SAPの戦略方向性という観点からSAP ERP 6.0の重要性は明らかである。

 SAP ERP 6.0は,SAPが推進するエンタープライズサービス指向アーキテクチャ(エンタープライズSOA)の基礎となるSAP NetWeaverを基盤としているため,ユーザーはSAPのパートナーが提供するSAP NetWeaver向け関連製品を利用できる。

 また,SAPが2010年までに行う機能強化は,すべてSAP ERP 6.0への拡張パッケージという形で提供される。これにより,ユーザーは大きなアップグレードを行わずに最新技術を利用し,ビジネス・プロセスを再構築できる。

 しかし,その前提として,ユーザーはまずアップグレードを行わねばならない。SAPにとっても,NetWeaverを魅力的な基盤として展開する戦略を絵に描いた餅に終わらせないためには,多くのユーザーが必要となる。