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 今回は「何かに似せたユーザー・インタフェース」について考えてみたいと思います。何かに似せたインタフェースというのは,つまりすでにある何かによく似ている,もしくは同じように使えるインタフェースを用意する,ということです。

 なんて書くと,「パクリ」や「インスパイヤ」と呼ばれる,流行っているサイトのデザインをそのままそっくりまねる手法を思い出してしまうかもしれません。流行っているサイトのデザインには,もしかしたら何らかの特長的ですばらしい点があるかも知れず,それをまねすることは,「まねただろう」といわれるデメリットを差し引いてもメリットがあるのかもしれませんし,もう少し意味を広げて,すでにあるサイトの良さをいかにうまく取り込むか,ということになれば,すごく意味があることだと思います。

 でも今回の「まねる」はそういうほかのサイトのデザインをまねる,という話ではありません。もう少し広い意味であったり,ウェブ以外の一般的なインタフェースをまねる,というような意味です。

テレビのようなWiiの「ニュースチャンネル」「お天気チャンネル」

 今回この話題に触れようと思った直接的な原因は,我が家にWiiがやってきたことに始まります。いまさらWiiの話題を取り上げるのも,時期的には微妙な気もしますが,なにせずっと品薄が続いていたもので,我が家にやってきたのも3月末くらいのことだったのです。それにしても,ずいぶん前のことではありますが,ご容赦ください。

 Wiiには無線LANの機能が内蔵されていて,インターネットに接続してニュースや天気予報を見ることができる「ニュースチャンネル」「お天気チャンネル」というツールを標準で利用できます。これらは,お天気ならウェザーニュースから,ニュースチャンネルならgooニュースなどから情報提供を受けて,それを画面に表示するものです。いってみれば,ポータルサイトのトップページに載っていそうな情報なのですが,その見せ方を見たときに,ああすごいなあ,と思ったのです。Wiiの公式サイトで動画を見ることができるので,まだ見たことがない方は,そちらを見てみてください(図1図2)。

図1お天気チャンネル

図2ニュースチャンネル

 この二つのチャンネルに共通しているのは「テレビみたい」ということです。どちらも,画面左上には時刻が「まるでテレビみたい」に表示されています。しかも,ニュースは自動で次々と表示させることができるので,そうしてしまえば勝手にどんどんニュースが流れていきます。そして,表示される際に流れている音楽も「まるでテレビみたい」なのです。お天気チャンネルは,深夜の何も番組が放送されていないときに流れている天気情報みたいな音楽だし,ニュースチャンネルは,テレビの報道番組の冒頭に流れるヘッドラインのようです。

 もちろんこれらのチャンネルには,リモコンを使って操作することで,好きなニュースをじっくり読んだり,自分の気になる地域の天気をすぐに見られる「地球儀」というGoogle Earthのように地球をくるくる回して場所ごとに天気やニュースを見ることができるなど,テレビの天気情報やニュースではまねできない機能がたくさん詰め込まれてはいます。とは言うものの,最初に受ける印象が,テレビそっくりなのです。そしてこのおかげで,初めてWiiの画面を見る人でも,それが何であるのか,どういう情報を見ることができるのか,ということが一目でわかります。

 Wiiはインターネットに接続してデータをダウンロードしたり,そのほか通信を利用したサービスやツールがたくさんあります。その多くでは,専門用語が排除されて親しみやすい用語が使われていたり,待ち時間を少しでも楽しくするためのアニメーションなどが工夫されています。いろいろすごいなあ,と思わされているのですが,特に「ニュースチャンネル」と「お天気チャンネル」は,すごいなあ,と思いました。

 そのポイントは,なんと言っても「とっつきやすさ」です。テレビのニュースや天気予報であれば,それを全く見たことのないという人は,老若男女見渡しても,ほとんどいないでしょう。むしろ多くの人にとっては,非常になじみ深いものだと思います。それをまねることで,誰でもわかりやすく使うことができるようになります。

 しかもインターネットを経由して常に最新の情報が取れるわけですから,自分の好きなときにチェックすることができてしまい,結果としてテレビっぽくてテレビよりもすごいと感じることができてしまいます。実際にはニュースは動画などが見られるわけではないし,声も出ないので,そういう意味ではテレビよりすごいかどうかは微妙ですが,テレビの「その番組がやっているときじゃないと見られない」という問題点はクリアしてしまっています。

 つまり,非常によく使われているもののインタフェースを模倣することで,とてもとっつきやすいものができあがり,しかもそれによってそのサービスのメリット,というか便利な点もよく見えるようになる,ということが言えると思います。サービスを開発する際,新しい機能をつける際,それがどんなにすごい機能でも,使った人にそれが伝わらなければそのサービス・機能の魅力は激減してしまいます。それを克服するためのアプローチの一つとして,こうした手法があるのかな,と思いました。

 もちろん,これまでの何とも似ていない,全く新しいサービスや機能なら,ありものを模倣する,というのは難しいかもしれません。しかし,なにか現在あるものよりも一歩先を行っている,というようなサービスなら,その一歩手前のものを模倣するというのも面白い方法なんじゃないでしょうか。

 蛇足になりますが,私の奥さんは,ゲームとかは全くしないし,ゲーム機に触ることはこれまでほとんど無く,さらには家でパソコンを立ち上げることもほとんどなかったのですが,Wiiに関してだけは,毎晩立ち上げて,ニュースと天気をチェックしています。そういうこれまでターゲットとなっていなかった層をらくらく取り込んでしまうことに,Wiiのすごさを感じています。それには様々な要因があると思うのですが,こうした「模倣」によるとっつきやすさもあるんだろうなあ,と思った次第です。

メールソフトのようなSo-netのウェブメール・サービス

 続いてもう一つの例として,So-netが提供しているウェブメールの画面を紹介したいと思います。