PR

 QAサイトやブログ、ソーシャルブックマークなどのネットサービスをてがける「はてな」。同社は、「立ったまま会議をする」「ミーティングをポッドキャスティングする」などユニークな試みを実践している「変な会社」として知られている。「超オープン」と言われる同社の情報共有の仕組みについて、川崎裕一副社長に話を聞いた。(聞き手は小野口 哲)


はてな社内での情報共有はどんな仕組みになっているのでしょうか。

はてな 川崎裕一副社長
 はてなでは、社員が全員ブログを書いています。業務日報的なものだけでなく、基本的に何でも書くんです。例えばあるサーバー担当者は、仕事がきつい、眠いといった自分の状況やフットサルの感想の後で、エラーのログや監視プログラムの話を書いています。

 「個人のブログみたいなことを書いても意味がない」と感じる人もいるでしょうか、そうではないんです。ブログを読んで、この担当者が眠いことを知ったら、「もう眠ったらどうか」と声を掛けることができる。眠ることで、仕事の生産性が上がる可能性は十分にあります。

 社員の置かれている状況や考えを知ることで、管理職の人間が的確にアドバイスしたり、業務上の優れた提案を考えついたりできるかもしれない。だから業務以外の話も書くようにしているわけです。

情報共有の本質は変わらない

 “情報共有”という言葉は昔からありました。本質は、ツールじゃないんです。重要なのは、「情報を共有することで、自分にメリットがある」という社内の空気を生み出し、そのための仕組みを実現することです。

社員がブログを書くだけではなく、その内容を上司が適切に評価することも必要ではないですか。

 今の新入社員は、ネットを通じて積極的に情報を発信することに慣れています。企業は、こういった社員が高い生産性を発揮できる環境を提供しなければならない。そのためにも管理職には、社員が発信した情報を正しく受け取る能力が求められます。

 当社では、積極的に情報を発信させるために、「何でも書く」ということを実施しているんです。さらに、この情報を360度の評価制度に結び付けています。ただ、360度評価を実際に運用するのは難しい。

具体的にはどういった方法を用いるのでしょう。

 はてなは、グーグルのページランクという仕組みを参考にした給与制度を採用しています。ページランクは、他のWebページからどれだけリンクが張られているで、そのページを評価するものです。評価の高いサイトにリンクされる方が評価が高くなります。

 はてなの給与制度で、個々のWebページに当たるものは“人”です。具体的には、社内で高い評価を受けている人に評価された人間の方が評価が高くなるのです。

 もちろん、ブログに何が書き込んであるかも重要です。自分がどんな仕事を手掛けていて、現在やっていることが今期の売り上げにどの程度貢献するのかといったことが、誰にでも分かるように書いてあれば評価は高まります。

 社員同士が直接話していますが、もし1日のすべての業務時間を対話に費やしたとしても、社員が20人いれば、一人ひとりに十分な時間を取るのは無理です。結局は、自分の仕事に直接関係する人間と話す機会が増える。360度評価では、普段話せない人間の評価が重要なんです。こういった社員と情報を共有しない限り、社内でのプレゼンスは上がりません。だからブログを活用するのです。

Web2.0は人同士がつながるために有用

ブログのようなWeb2.0の技術は情報共有に有用ですか。

 突き詰めれば、会社を動かしているのは人です。社員同士がもっと互いを知ることでいろいろなことが可能になるはずです。ですが現実には、隣の人が何をやっているかすらはっきりとは分からないような大企業すら存在します。はてなは、情報を公開して高い透明性を保とうという考えの会社です。

 ブログで情報を公開しておけばこういった問題を解決できます。当社の社長である近藤は、「情報を見ることができないのはダメ」だとよく話しています。これが一番大事なところです。例えば会議では、すべての発言を録音しています。ただ公開した情報を共有するかどうかは個人の自由です。

情報共有を徹底するのは簡単ではありません。

 当社では、社外に送るメールを社員全員が読めるようにしています。例えば、私は新聞や雑誌の取材を受けることが多いので、取材に関する社外とのやり取りを読むようにしています。私以外の社員も検索すれば読むことができます。事前の心構えに役立ちます。自分が読みたいときに読めるようにしておくことが重要なんです。

 もしも私が突然いなくなったとしても、会社の売り上げに大きな影響が生じることはないです。私の取引先の情報は、過去のやりとりをすべてブログに書いています。それから社員全員にメールが届く組みになっています。どんなプロセスで仕事が進んだかはすべて記録できているんです。



■関連特集『マッシュアップがもたらすシステムの破壊と創造』
第1回 10人日、ゼロ円の衝撃
第2回 広がるマッシュアップ
第3回 個人が楽しむやり方が情報共有の主流に
第4回 競争力の源泉を公開する
第5回 仮想世界が企業を動かす