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本記事は日経コンピュータの連載をほぼそのまま再掲したものです。初出から数年が経過しており現在とは状況が異なりますが、この記事で焦点を当てたITマネジメントの本質は今でも変わりません。

どれほどITが進歩しても,システム構築プロジェクトの失敗がなくなることはない。10年前も,現在も,おそらく将来も,プロジェクトが失敗する原因は同一である。そこで,日経コンピュータが1990年10月に作成した「動かないコンピュータ撲滅のための10カ条」を再掲載する。さらに,この10年間の環境変化を勘案して,10カ条を21世紀にも通用するように読み替えてみた。

 動かないコンピュータとは,本誌が掲載しているコラムの名前であり,情報システムの構築・運用を巡るトラブルを意味する。例えば,情報システムの稼働時期が大きく遅れたり,プロジェクトが途中で打ち切りになる。稼働させたシステムがダウンしたり,誤った処理結果を出してしまう。これらが,「当初の計画通りに動かないコンピュータ」と言える。

 『日経コンピュータ』創刊以来の人気コラムだったにもかかわらず,動かないコンピュータの掲載を一時休止してしまったのは,記事の品質を一定以上に保つことが困難になったからだった。当初の毎号掲載が隔号になり,連載休止直前は3号に1回掲載するのがやっとの状態だった。

 なぜ連載が困難になったかというと,正真正銘の動かないコンピュータがなかなか見つからなくなったことが大きい。1980年代前半に掲載されていた動かないコンピュータは,中堅・中小企業におけるオフィス・コンピュータ(オフコン)導入の失敗事例が中心だった。当時は,オフコン導入ブームが起こっており,多くの中小企業がこぞってオフコンを購入した。にもかかわらず,購入したオフコンをまったく使わず,しかもリース料だけ払い続けるという事例が散見された。

 1990年代に入って,コンピュータがまったく動いていない事例は減った。もちろん,開発のトラブルはあったのだが,一部のアプリケーションだけをなんとか動かしたり,開発スケジュールを大幅に見直すことで収拾を図った例が多かった。オフコン・ディーラやシステム・インテグレータにシステム構築ノウハウがたまってきたし,パソコンが普及して,ユーザー企業のなかにコンピュータが分かる人材が増えてきたためであろう。

ベンチャーで問題が発生

 ところが,今年に入って,あるインターネット・ベンチャー企業で典型的な動かないコンピュータの事例を聞いた。このベンチャーは独自のサービス・ビジネスを考案,それを実現するWebアプリケーションの開発を中堅システム・インテグレータに発注した。インテグレータはこのベンチャーにかなり大型の UNIXサーバーを売りつけた。ベンチャーは予定していた時期にWebアプリケーションが納品されると思いこんで,サーバーのリース契約を締結した。

 ところが期限が来ても,アプリケーションは納品されない。しかも,インテグレータの担当者が突然退職し,それまでの交渉経緯を知る相手がいなくなってしまった。

 現在,このベンチャーはアプリケーションが載っていないUNIXサーバーのリース料を支払い続けている。アプリケーションが完成しないため本来のサービスを始めることができず,このベンチャーの収入はゼロのままである。ベンチャーの経営者はインテグレータになんとかアプリケーションを開発してくれるよう依頼しているが,まだ稼働のめどはたっていない。

 こうした「動かないWebシステム」の事例は水面下で相当数ある。中堅企業がインターネット・ベンチャーに替わり,COBOLで開発されたオフコン上の販売管理アプリケーションが,UNIXサーバー上のWebアプリケーションに替わったという変化はあっても,トラブルの構造はまったく変わっていない。営業担当者の退職,アプリケーションがないままにリース料を支払い,といったあたりは10数年前に取材をしていてよく聞いた事例とまさに同一である。

トラブルの構造も対策も同じ

 トラブルの構造が変わっていないなら,トラブルの対策も変わっていないはずだ。そこで今回,本誌が1990年10月8日号の「動かないコンピュータ特集」で掲載した「動かないコンピュータ撲滅のための10カ条」を再掲載してみた()。

表●「動かないコンピュータ」撲滅のための10カ条
表●「動かないコンピュータ」撲滅のための10カ条
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 実はこの10カ条は1996年9月16日号(創刊400号)の「動かないコンピュータ特集」でも再掲載したものである。まったく同じ表を同一の雑誌に3 回も掲載するのはどうかとも思ったが,内容は21世紀にも通用するものなのであえて掲載することにした。さらに本稿では,この10年間の環境変化を勘案して,動かないコンピュータ撲滅のための10カ条を21世紀向けに読み替えてみた。

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