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プロジェクト開始当初に計画していた作業内容よりも,予想以上に多くの作業が発生してしまうことは頻繁に起こる。PMOはその調整作業に一役買う必要があるが,一体どんな検討や準備をすべきだろうか。追加作業が発生したときの計画変更作業から最終的な意思決定までのプロセスを概観してみよう。

高橋信也
マネジメントソリューションズ 代表取締役


 プロジェクトの作業計画を立てるなかで,各チームの担当作業を決めますが,その時点ですべての作業を洗い出すことができない場合がよくあります。開発方法論に則ったシステム開発プロジェクトであったとしても,予想外の出来事が発生し,その対応に追われることもあります。

 例えば,プロジェクトの途中でユーザー企業側の担当役員が異動になった場合,プロジェクトの中止まで行かなくても,プロジェクトが縮小されたり,プロジェクト・スコープが変更されたりします。場合によっては,プロジェクトへの影響が極めて大きいケースもあるでしょう。

 困るのは,こうした変更が起こったにもかかわらず,「プロジェクトの予算や納期はそのまま」というケースがよくあることです。新しい担当役員からの評価を気にするあまり,“ガンバリズム”で決断してしまうプロジェクトマネジャもいるのではないでしょうか。

 ステークホルダー(利害関係者)間の調整に関するPMOの役割については,別の機会に書きたいと思いますが,今回は当初予期していなかった作業が発生したときにPMOはどのような役割を担うべきか,について述べたいと思います。

想定外の作業が生じたときこそ,マネジメントの力が問われる

 当初決められた役割や作業以上の仕事が出てきた場合,気持ちの上では敬遠したいと思うものです。結果的に,責任感の強いメンバーが無理をすることで対応するケースが多いのではないでしょうか。ただ,このメンバーが病気や過労で休んでしまうと,プロジェクトがピンチを迎えるかもしれません。

 その一方で,追加作業が発生する都度,メンバーが一丸となって取り組むプロジェクトもあります。その姿には一生懸命さが表れていて,一見チームワークに優れた,順調なプロジェクトのように見えますが,実は盲点もあります。プロジェクトメンバーが20人を超えるような場合,必要のないメンバーも会議招集されたり,あまり意味のない作業を任されたりして,本来やるべき作業になかなか手が付けられなくなるのです。これは想定外の問題から派生した“2次災害”とでも言うべきものでしょう。

 組織に一体感を持たせたいという気持ちもあるかと思いますが,追加作業に対応するときも,やはり役割分担を明確にすることはプロジェクトマネジメントの王道です。

 追加作業の役割分担を行うためには,作業計画に基づいたWBS(階層構造化された作業)およびアウトプットとしての成果物をまず定義する必要があります。そもそもWBSの作成で壁にぶつかる場合もありますが,プロジェクトのアウトプットから論理的に考えていけば,うまく行きます。

 それらのアウトプットに対して責任を持つチームおよびメンバーをそろえ,必要工数を見積もると,適正な役割分担が見えてきます。なお,ここでの役割分担は成果物作成のための実行責任を持つという意味に限定し,説明責任という役割は除外しておきましょう。

 追加作業に関する計画フェーズでここまできちんと整理できていれば言うことなしですが,現実には,なかなかそこまではできません。プロジェクトを進めながら調整していくことも多いかと思います。仮に100%完璧な計画を作成していたとしても,前述のような想定外の出来事が再び起こるかもしれず,更なる変更を余儀なくされる可能性もあります。

 プロジェクトは不確実性の塊です。少々乱暴な言い方かもしれませんが,「計画は変更するために作られる」と考えた方がよいでしょう。そう思っていれば,いざという時,ぐずぐずせずに済みます。精神衛生上も良いと思います。

「見極め」に必要な情報をPMOは蓄積しているか?

 追加作業に対して,予算や時間に余裕があれば,人員を追加することで対応できるでしょう。そのようなプロジェクトは幸運です。通常は予算や時間に余裕がない場合が多く,先ほど述べたように責任感の強いメンバーが対応したり,何かしらの負担をメンバーに強いたりすることになります。予算の追加や納期の変更で対応する場合もあります。

 ただ,これらの決断は,最終的にプロジェクトオーナーやプロジェクトマネジャなど予算やスコープに責任を持つ人々が行うことです。PMOとしては,その意思決定に貢献する必要があります。

 プロジェクトの状況により異なるため,一概に言えませんが,追加作業が発生したとき,「現状のプロジェクト体制でどこまで踏ん張れるか」を見極めることが,意思決定支援に一番必要なことだと考えます。特に,システム開発のような,知恵や情報を生み出していくプロジェクトの場合,個々のメンバーの生産性やポテンシャルは見極めにくいものです。作業が意外に早く終わったり,意外に時間がかかったり,当初の見積もりは必ずしも当てにできません。

 PMOは,プロジェクト全体の生産性を見極める意味でも,日ごろから地道にプロイジェクトメンバーとコミュニケーションを取り,状況を把握しておく必要があると考えます。これが,想定外の作業が発生した際の「見極め」に大きく貢献するはずです。


高橋信也(たかはし しんや)

 1972年福岡生まれ。修猷館高校を卒業した後,上京。上智大学経済学部卒。ゼミは組織論,日本的経営の研究。大学卒業後,アンダーセン コンサルティング(現アクセンチュア)入社。CやC++によるプログラミングから業務設計まで幅広い工程を経験した後,2001年よりキャップジェミニのマネジャとして経営管理・業績管理のコンサルティングプロジェクトに携わる。

 コンサルタントとしての外部の目からだけではなく,内部の目でマネジメントを経験したいとの思いから,SONY Global Solutionsへ入社。その当時,最年少プロジェクトマネジャとなる。グローバルシステム開発プロジェクトのPMOリーダーとして活躍。インドにおけるオフショア開発を経験。

 コンサルテーションから,自社開発のソフトウエア提供,改革実施後のチェンジマネジメントまで,「知恵作りのマネジメント」を支援するマネジメントソリューションズを設立し,現在に至る。連絡先は info@mgmtsol.co.jp