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 大地震や集中豪雨による洪水など,巨大な災害は止むことなく起こっている。これまで被災の経験がない企業にとっても「明日は我が身」だ。災害に備えているかどうかで,被災後の立ち直りには大きな差が出る。実際に被災した企業を取材してみると,これまでの常識を覆す教訓がいくつかあることが分かってきた。それは,(1)電話は頼りにならない,(2)拠点のサーバーは守れない,(3)バックアップ・テープでは業務は存続できない――の“3ナイ”である。

日経コミュニケーション2005年8月1日号の記事を掲載しています。原則として執筆時の情報に基づいており現在は状況が若干変わっている可能性がありますが、BCP策定を考える企業にとって有益な情報であることは変わりません。最新状況は本サイトで更新していく予定です。

 震災など大災害の発生直後,まず必要なのが家族や会社スタッフの安否確認。そして次にオフィスや店舗,情報システムの被害状況の確認だ。この際に誰もが最初に使うのは電話だが,新潟県中越地震ではほとんど頼りにならなかった。

 本震の直後は「10回かけて1回かかればいいほう」(ホームセンター大手のコメリの早川博秘書室シニアマネジャー)。加入電話も携帯電話もおおむね同じ状況だった。災害時に備えた優先電話でさえ「かかりにくくなった」(新潟県の大手金融機関)。

10年前の25倍に増えた携帯電話

 実は10年前の阪神淡路大震災の時には固定電話はつながりにくくなったものの,携帯電話はおおむね利用できた。それ以来「携帯電話は災害に強い」と言われてきたが,今回それが通用しなくなったことが判明した。携帯電話のユーザー数は,NTTドコモの場合で10年前は現在の約25分の1の220万人。状況が今とは全然違ったのだ。

 新潟県中越地震の発生直後は,NTT東日本やNTTドコモは被災地への電話発信を8割前後制限。つまりユーザーが10回かけても,2回程度しかつながらないという状況だった。

 一方,10年前と比べて格段に普及したデータ通信サービスは,災害時でも多くのユーザーが使い続けられた(図1)。携帯電話のメールは緊急連絡手段として有効であり,インターネットのメールやIP電話もほぼ利用できた。

図1●新潟県中越地震の際に利用された通信手段と有効性
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 中でも携帯電話のメールは広く活用された。例えば,中越地区が基盤の大手スーパー原信は「地震直後は相手に届くまでに数十秒を要したが,携帯メールが送信できないことはなかった。安否や店舗の被災状況の確認など業務に活用した」(同社のネットワークとシステムを管理している原興産の情報システム事業部内藤裕部長)と証言する。他の多くのユーザーも同様だ。

携帯メールで安否を10分でまとめたローソン

写真1●レスキューナウ・ドット・ネットが提供する安否確認サービス
携帯メールに安否確認用WebページのURLを送信。集計した情報を本社スタッフなどがパソコンから閲覧する。
 多くの企業が電話で何時間もかかって従業員の安否を確認する中,携帯メールを使って地震発生からわずか10分で従業員の安否確認作業を済ませたのが,コンビニエンスストア・チェーンのローソンだ。

 同社は全国の社員に携帯電話を支給。大地震などの災害が起こると,携帯のメール・アドレスに安否を確認するメールを送る。地震であれば震度5強以上が発生すると自動的に発信。メール内に記したURLにアクセスすることで確認用のWebページに接続し,状況が書き込める(写真1)。

 こうして入力された安否情報の集計結果をローソン本部の担当者がWebページから参照。電話網が混乱する中,新潟地区の全スタッフ約20人の安否確認を,地震発生から10分たらずで迅速に済ませた。