PR

親会社だけでなくシステム子会社自身のM&A(企業の合併・買収)やオフショア開発など、システム子会社を取り巻く環境は激変している。今後、システム子会社は生き残りをかけてどう対応すべきか。本連載では6回にわたって経営課題の解決に向けた考え方を紹介する。

 システム子会社自身のM&A(企業の合併・買収)やオフショアの進展など、システム子会社を取り巻く環境には急激な変化が生じつつある。まさにシステム子会社は淘汰の時代に入ったといってよい。ではシステム子会社はどう対応するべきか。本連載では6回にわたり、システム子会社が直面する経営課題に対し、その解決に向けた考え方を紹介していく。

 実際、システム子会社が置かれている環境は、矛盾と対立に満ちた甘えの関係の中に存在しているといえる。親会社の本音は子会社は便利なコストセンターであってほしいと願っている。「人材の受け皿になってほしい」「できれば外で稼いでほしい」などだ。一方、子会社の本音は親会社のスネをもっとかじらせてほしい、ということである。この蜜月の関係は最近まで続いていた。ところが、この関係に終止符をもたらす変化が生じてきた。親会社の業界再編とシステム子会社の若手におけるキャリア志向である。

楽観派と現実派に分かれる

 例えば親会社自身が他社と合併するとき、システム子会社では楽観派と現実派に分かれる。前者は「合併しても巨大な社内システムは残る。しかも短期的には合併後のシステム統合という特需まである」と考える。後者は「親会社が合併したらどちらかの子会社が消える。統合したとしても、せいぜい統一したERP (統合基幹業務システム)ソフトを導入する程度で、システム統合特需なんかない」と考える。要するに楽観派は、多少規模は小さくなっても「親会社べったり」を継続する集団である。現実派は親会社を頼らず「独立の道」を目指す集団である。さて、読者がご存知のシステム子会社はどちらの道を選ぶだろうか。

 キャリア志向は、システム子会社にプロパーとして入社した若手に多い。たとえシステム子会社の名前が変わろうと大手ベンダーに吸収合併されようと、スキルを習得できたり大手ベンダーのブランドを得られるなら、うまく順応していくことができる。むしろそれを望む若手さえいる。

 こうした若手の比率が増えてきたシステム子会社の経営幹部や親会社側のシステム部門は、自分たちと思考パターンが異なる若手の育成や会社に対する忠誠心の醸成に配慮する必要がある。キャリア志向の若手は、システム子会社でこれ以上学ぶものがない、成長を期待できないと思うと迷わず離職する危険性がある。しかもキャリア志向の若手には優秀な人材も多い。キャリア志向の若手をどうやって引きつけるかは難問の1つだろう。

外販比率と収益率の関係を追及

 こうした視点を踏まえ、次回以降では様々な経営課題に対する解決への道筋を提供していく。

 第2回目ではシステム子会社でいつも課題となる「外販率の向上と収益率の向上」の関係に焦点を当てる。システム子会社の外販率と収益率を1995年と 2000年とで調べて見ると、多くのシステム子会社が外販率を高める方向に向かっていた。しかし収益率を見ると外販率50%ぐらいまでは下がるが、その後はV字のように上がり始める傾向が見られた。それでは2000年以降のシステム子会社は、どのような変遷をたどっているのか、データを中心に最近の動向を追う。

 第3回目ではシステム子会社が属する企業グループにおける位置付けを考える。グループの中でシステム子会社は次のどれかの位置付けであるべきだろう。
(1)便利なコストセンター:グループ会社の要求には、廉価で上質なサービスで応えてほしい
(2)戦略的なサービスセンター:グループの競争力を高めるために、新しい技術も含めたコスト削減、付加価値創造、スピード加速化の提案をしてほしい
(3)成長エンジンとしてのプロフィットセンター:グループ外からの収入を増加させて、グループ全体の成長を引っ張ってほしい

 しかし現実は、これら位置付けの間にある場合が多い。グループ自身が業界再編の波にさらされていることもある。こうした環境下で、システム子会社は自社をどう位置付けるべきかを例を交えて説明する。

システム子会社の外販ケイパビリティとは

 第4回目ではシステム子会社が備えるべき「強み」について述べる。システム子会社が生き残るには、2つの条件を満たす必要があるだろう。1つは他のソリューションプロバイダと同様、特定の業種・業務のノウハウか特定の技術に強みを持つことである。もちろん業種・業務のノウハウや技術は「枯れた」ものであってはならず、今後その進化が期待でき、顧客に対する価値提供に寄与できるものでなければならない。もう1つは他のソリューションプロバイダには自然に備わっている(なければ存続しえない)もので、すなわち「外販ケイパビリティ(能力)」である。外販となると今までと異なるケイパビリティを構築する必要がある。

 第5回目のテーマは「M&Aへの対応」である。最近、あらゆる産業でM&Aが増加しており、IT業界も決して例外ではない。業種・業務のノウハウの獲得や親会社のシステム受注などを目的にしたM&Aに加えて、グループ内での再編を目指したシステム子会社同士の合併も多いからだ。それではシステム子会社としてこのM&Aの波にどう向き合えばよいのか。M&Aの情報は通常トップシークレットとして扱われるため、残念ながら情報システム部門およびシステム子会社にこの情報が事前に入ることはほとんどない。従って天災と同様に常日頃から備えておくことが重要となる。

これからはオフショアへの対応も必須

 第6回目はオフショア時代の中で、システム子会社が考えるべきことを述べる。物価や賃金が安く労働力が豊富な地域で特定の業務を委託・実行するオフショアは、アウトソーシングとは別である。オフショアは自社でやるか他社へ委託するかは別にして、自国で行うか他国で行うかの選択肢になる。しかし目的からみるとオフショアはアウトソーシングの延長線にある。システム子会社にとってオフショアはどういう意味を持つのか。まず親会社がオフショアを検討するときには、その業務のシステム支援としてシステム子会社は海外に業務を切り出せるようにしておかなければならない。次にシステム子会社自身の業務(ソフト開発におけるコーディングやITに関わる業務)のオフショアも検討する必要がある。特にオープン化が進み、Webサービスなどの技術が進化しているため、いつまでも設計・開発を自国で実施していては、競合優位性構築のチャンスを失うばかりか劣位になりかねない。

井上 潤吾 ボストン コンサルティング グループ ヴァイス・プレジデント
ボストン コンサルティンググループのアムステルダムオフィスを経て、現在は東京オフィス所属。国内外のIT関連会社やシステム子会社を持つ企業およびITを活用する企業に対し、事業戦略や組織、グループマネジメント、IT診断と利活用、営業ケイパビリティなどを中心としたプロジェクトを推進。