PR

 前回は,スイッチの低価格化の背景に半導体の高集積化があることを説明した。実は半導体の高集積化は,これ以外にもユーザーにメリットをもたらした。チップを冷却するためのファンを取り除いた「ファンレス」のスイッチや,イーサネット経由の給電を“受ける”ことができるスイッチが登場したことである。

 チップの数が減ったことで,ハードウエア全体での消費電力が少なくなった。消費電力の減少は発熱の減少に直結する。スイッチ・チップ1個で8ポート程度までの構成なら,わざわざ冷却の仕組みを持たせる必要がなくなった。その結果,ファンレスのスイッチが増えてきたのだ。多くは8ポート程度のデスク・サイドに置くタイプのスイッチだが,日立電線の「Apresia2124GT-SS2」のように24ポートを搭載しながらファンレスの製品もある。

 ファンレス・スイッチは,従来の製品より故障率が低くなる。壊れやすい駆動部が一切ないためである。ファンがないことで,きょう体内に入り込むほこりも少なくて済む。

 全く音がしない点もメリットである。住商情報システムの佐藤哲也IT基盤ソリューション事業部SIソリューション営業部営業第4チームマネージャーは「オフィス面積に限りがある支社・支店などに設置する用途で非常に受けがいい」という。また,建物が古い学校や病院などでも導入例が多い。

停電に強いPoE“受電”スイッチも登場

 消費電力の低減を利用した製品としては,PoEによる電力供給で動作するスイッチがある。PoEで供給できる電力は,標準規格のIEEE 802.3afで最大15.4ワットに定められている。半導体部品数の減少による低消費電力化で,この消費電力で動く製品が実現できた。

 PoE受電を使うメリットは,電源を取りづらい場所にスイッチを設置できる点。また,「エッジ・スイッチを束ねる上位のスイッチをPoE対応にしてUPSを導入しておけば,停電対策にも有効」(富士通の中島幸広ネットサービス事業本部プロダクト企画事業部ネットワーク部長)である。

 NECやアライドテレシスなどが,8ポートで1万円程度の単機能なレイヤー2スイッチを提供している。変わり種は富士通の「SR-S208PD1」。8ポートが認証に対応する高機能なスイッチながらPoE受電に対応している(写真1)。ただし価格は9万8000円と,単機能のスイッチよりはだいぶ値が張る。なお,PoE受電スイッチはすべてファンレスである。

写真A●富士通のPoE受電スイッチ「SRS208PD1」
写真A●富士通のPoE受電スイッチ「SRS208PD1」