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ユーザー企業の業務を理解して最適なソリューションを提供するには、「各業務のシステム依存度はどうか」「ありたい姿とIT投資の目的が合致しているか」「システム特性によって最適なツールを選択しているか」の3つのステップを踏む必要がある。相手のビジネスに自社がどんな貢献ができるかを、常に考えて提案すべきだろう。

 中堅・中小企業にシステム提案をするソリューションプロバイダに対し、筆者の経験からポイントを指摘したい。重要な点はユーザー企業をよく理解し、提供するシステムやサービスが、相手のビジネスにどう貢献できるかを常に考えることである。これらは当たり前かもしれないが、本当に実践できているかどうかは疑問だ。実際に進めるには、次の3つのステップが必要になるだろう()。

図●中堅・中小企業に対するシステム提案のアプローチ
図●中堅・中小企業に対するシステム提案のアプローチ

ステップ1 相手の業種と業務特性を理解する

 ユーザー企業のビジネスや業務の特性を把握するとき、特に重要な点はユーザー企業のビジネスが、システムにどの程度まで依存しているのかを知ることである。例えば建設業の場合、施主との関係強化やプロジェクト管理、建設技術などが競争優位の源泉だが、これらのシステムへの依存度はあまり高くはない。確かにスピードアップや効率化には役立つが、事業の成功はそれ以外の部分に影響されやすい。しかし同じ建設業でも、ネット取引になると話は異なる。ここではシステムはまさしくビジネスの生命線であり、業績を左右する最も重要な要素になる。

 不動産リフォーム会社であるA社の事例を話そう。同社はこれまで、土地付き建物の競売物件を調達し、リフォームを施して再販するユニークなビジネスモデルで業績を伸ばしてきた。システム面では、仕入れた物件にリフォームを施したコストを集計管理する物件管理、物件の販売から引き渡しまでの進捗管理などのシステムを導入している。これらのシステムも必要ではあるが、あまり重要とは言えない。むしろA社では、いかに物件を適正価格で仕入れることができるか、コストを抑え商品価値を高めるリフォームを施せるか、そして見込み客を現地に誘導してクロージングする営業力を身につけられるか、などを重視している。単なる物件管理のシステムでは、IT投資を増やせない。

 そんなA社だが、新しいビジネスとしてインターネットを通じて不動産のネットオークションを行うことになった。そうなるとIT化は最優先事項になる。不動産のネットオークションで成功するには、システムが決め手になるからだ。同じ企業でも対象業務により、IT投資の意味や重要性も異なるのである。

ステップ2 ありたい姿とIT投資の目的を理解する

 ユーザー企業から提示されるシステムの目的や要件については、筆者のようなITコーディネータが参画して、RFP(提案依頼書)をまとめるケースが多い。こうしたとき、筆者は「真」の目的を明示するように注意している。ユーザー企業が自社でRFPを作成しようとすると、システム化の目的を「手段」と混同したり、ありたい姿の具体的な記述がないまま、ソリューションプロバイダに提示する場合が多いからである。

 事務機器販売のB社のケースを見てみよう。B社は地域に根ざしたビジネスを展開し、文具から事務機器、コンピュータ、システム開発まで幅広いサービスで業績を伸ばしている。小規模ではあるがソリューションプロバイダとしてシステム提案も行い、受託開発も請け負っている。そんなB社も自社で新しい基幹業務システムを導入するときは、システム化の目的として「100%Web対応によるERP(統合基幹業務システム)を活用し、優れたコストパフォーマンスを実現して真の業務改革を実現する」「各種システムのスムーズな連携を図り、情報の一元化とデータのターンアラウンド化を推進する」といった定義があるだけだった。現状システムの問題点と要件は、わずか数ページしかなかい。目的と手段を混同している典型例であり、「真」の目的が提示されていない。業務改革を実現したときの姿や情報の一元化がもたらす利益はどうなるか、などが明らかにされていないのである。

 ソリューションプロバイダは、ユーザー企業からのRFPを読んで目的や意義について理解できない点があっても、質問すると相手が悪い印象を持つのでは、とためらいがちだ。しかしシステム化の「真」の目的が見えないままでは、後でとんでもないことになる。赤字プロジェクトになる可能性が大である。

ステップ3 システム特性によって手段を選択する

 ユーザー企業の「真」の目的が明らかになれば、後はそれを実現するスピード、要求する品質、妥当なコストで提供する。だが、具体的手段となるとシステムの特性に応じて柔軟に考える必要がある。

 建築用資材の販売会社C社は、店舗などの床材を建設会社やリフォーム会社、小売店に提供している。受注から在庫、出荷・納品までを効率化し、顧客満足度の向上やコストダウンを目的としたシステム提案をソリューションプロバイダに依頼した。C社は既に一部業務をシステム化していたが、全体では機能不足だった。既存システムを再構築する場合、現状の仕組みを理解したり分析作業を実施して改善案を検討し、将来へのモデルを描いてから開発に入る。パッケージソフトの活用も視野に入れるだろう。

 ただしC社の要望は、単に既存システムを再構築するだけではなかった。この機会をとらえて代理店などに保守情報を提供する新しいオンラインサービスも実現しようとした。当然、これまでとは異なる新しい業務プロセスが発生し、代理店など外部も巻き込むことになる。C社のメンバーやソリューションプロバイダだけでシステム化を進めても、外部から否定される可能性もあり、開発のリスクは高まる。

 このようなケースでは、プロトタイプのシステムを早い段階で作り、社外と共に評価して開発していくべきだろう。そのためには開発が容易なツールなどを駆使する必要がある。システムの特性によって開発手法も使い分けるべきである。

平井 嘉人 ITC内部統制研究会代表/社会経済生産性本部認定経営コンサルタント
大手企業のシステム開発、コンサルティング部門を経て、現在はユーザー企業の立場に立ち、既存業務とその情報システム評価、改善・再構築支援を実施中。