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 6月末から,携帯電話の基本料金を巡る攻防が激しくなってきた。キーワードは「半額」。50%オフというプライスタグは,通常の商品ではセールの最末期ぐらいにしか見かけることはない。ケータイ料金の半額とは,すごいことなのだろうか?

 ことの起こりは,6月26日にNTTドコモが,2年間の継続利用を条件に最大の割引率が50%となる「ひとりでも割引」と「ファミ割MAX」を発表したこと。ひとりでも割引は,KDDIがau携帯電話で提供していた「MY割」と同等の割引プランで,加入者が一人でも家族単位の割引プランと同等の割引率の適用を受けられる。もう一つのファミ割MAXは,家族グループ内の最長利用年月に対応する割引率に,家族全体の割引率を引き上げるもの。いずれも最大の割引率は50%である。

 これに対抗して,KDDIは7月19日にau携帯電話の基本料金を1年目から半額にする「誰でも割」を発表した。2年単位の契約をすれば,契約年月にかかわらず基本料金が50%割引になる。さらにこれにNTTドコモが反応し,1年目から50%割引になる「ひとりでも割50」と「ファミ割MAX50」を7月27日に発表した。

 話はややこしくなるが,NTTドコモやKDDIから割引サービスの発表があると,それぞれに対してソフトバンクモバイルが対抗サービスを発表している。今回の一連の「半額」割引でもこれは実行され,「自分割引50」「家族割引MAX50」といったプランを発表した。要するにケータイ大手3社との契約ならば,ユーザーは新規契約の1年目から基本料金は「半額」にするカードを持つことになったのだ。

半額とはいうけれど…

 経緯がどうであれ,基本料金が半額になることは,ユーザーとしては嬉しい限り。同じサービスならば安く使えるに越したことはないからだ。とはいえ,もうご存じの方は多いと思うけれど,これらの割引が登場したことで,ユーザーが支払う毎月の携帯電話料金が半額になることは,まずない。

 理由は大きく二つあって,一つは,すでに多くのユーザーが何らかの割引を利用しているということ。もう一つは,基本料金以外の料金を支払っているユーザーがほとんどだということである。

 一つめのポイントで見ると,従来も家族割引と長期利用割引を組み合わせると,各社は10年超の利用期間があるユーザーには50%の割引を提供していた。それだけでなく,1年目から35%以上,3年目ごろには約40%という割引があった。全くこうした割引に頓着していないユーザーは別にして,なにがしかの安いプランを探したユーザーならば,すでに大きな割引を得ているだろう。すでに40%の割引を得ていれば,今回の騒動で「半額」の恩恵を被ろうと思っても,実質的には17%程度の割引にしかならない。

 もう一つは,メールやWebサイトの閲覧に必要なiモードやEZweb,Yahoo!ケータイなどの料金が,基本料金には含まれていないことだ。また,パケット定額プランなども基本料金外だし,各種のコンテンツ利用料はもちろん含まれない。通話料金がプランに含まれる「無料通話分」の中で収まるとしても,こうした料金が合わさって請求額になっていると考えると,「半額」の呼び声はその声の大きさほどにはユーザーの懐に届かないことになる。

 もちろん,何もしないよりは,月に数百円であっても割引にはなるから,ユーザーにメリットはある。とはいえこれらの割引サービス,いずれも2年契約で,契約期間中の解約については3社とも9975円の解約料が必要になる。ユーザーは,思い立ったときに事業者を変えるといった行動に出にくくなるはずだ。このため,顧客の流出防止策としては一定の効果が見込めるのだろう。

長期利用者のメリットがどんどん少なくなる?!

 一方で,「またか」という思いも捨てられない。5年なり10年なり,長期利用してる優良顧客への数少ない優遇サービスが,これでまたなくなってしまうのかということだ。

 端末の購入時は,新規ならば「0円」でも,機種変更や買い増しだと2万円などといった費用がかかることが多い。ずっとそのキャリアに貢いできているのにもかかわらずである。その思いをなんとかこらえる防波堤の一つに,「長期間使っていると基本料金の割引率が高くなる」という割引プランがあったのではないかと感じている。1年目から半額で,10年使っても半額……継続利用者に対してちょっと理不尽な仕打ちのようにも思える。

 一つのキャリアに忠誠を尽くしても,このご時世ではあまり大きなメリットを享受できるわけではなさそうだ。どうせ1年目から基本料金は最大割引の半額になり,新機種が0円で手に入るなら,MNP(番号ポータビリティ)などを使って他社に乗り換えていくという技もコスト的にメリットが出る可能性は高い。ただし,2年契約の半額割引を使っていてこの技に大きな効果があるのは,2年契約が満了するタイミングの1カ月間だけ。2年のうち,それ以外の23カ月の解約には先述の解約料が9975円かかってくる。よほどその時を心待ちにでもしていないと,実際にはなかなか実行は難しい。

 いろいろな条件がある基本料金「半額」の割引サービス。ややこしいことをしないで,いっそのこと「半額」を基本料金にしてくれれば,余計な悩みを抱えずに済むのにとも思う。とにかく,宣伝文句は「半額」と明確だが,内容が分かりにくく,ユーザーを悩ませるサービスがまた一つ増えたことだけは事実のようだ。