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コストを節約する全帯域可変レーザー

 ROADMの第2の構成要素が全帯域可変レーザー光源だ。光信号帯域の中から任意の波長の光信号を動的に設定できるレーザー光源である。通常はITU-T G.691勧告に準拠したITUグリッドと呼ばれる波長の信号光を出力する。WSSと併用することにより,光送受信機能を提供するカード(光送受信カード)が装置のどこに挿入されていても,ある波長の光信号を好きなポートに接続できる。従来は波長ごとあるいは数波ごとに準備していた光送受信カードが1台で済むので,故障に備えた予備ユニットに対するコスト節約や購入管理改善に貢献する。

MSPPを統合したカードが登場

 様々なサービスに対応した信号を一つの波長に収容して転送する機能要求が強くなってきている。従来はMSPP装置で対応してきたが,WDM装置に対しても同様の要求が急速に高まっている。そこでMSPPの機能を統合したADM on the Cardと呼ばれる新しい光送受信カードが登場してきた(図5)。イーサネット,ファイバ・チャネルSONET/SDH信号を一つの波長パスへ効率的に収容し,WDMネットワーク上で広域に転送する。WDM装置とMSPP装置の統合が可能になり,ネットワークの機器コストの削減を実現する(図6)。

図5●ADM on the Cardの構成例
図5●ADM on the Cardの構成例
WDM装置にさまざまなサービスを収納するMSPPの機能を統合した。
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図6●ADM on the Cardを使ったネットワーク構成
図6●ADM on the Cardを使ったネットワーク構成
従来(左)はWDMからMSPPを経て各種ルーターにつなぐ必要があったが,ADM on the Cardによって直接ルーターとつなげられる(右)。
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効率的な運用を支えるGMPLS

 光コア・メトロ網においてエンド・ツー・エンドで通信を開始するためには,まず網の入口と出口との間で波長パスを確立する必要がある。この波長パスを効率的に確立し,維持運用するための技術がGMPLSである。このGMPLSは,従来のIPネットワーク,特にMPLSネットワークの運用で用いられているIPプロトコルを,WDM網やSONET/SDH網などの伝送網の運用に拡張したものである。

 具体的には,ROADMノード間で波長の利用状況などを互いに定期的に交換しあうことにより,各ノードは,網の構成と各ノードでの波長利用状況を把握できる。これらの情報に基づき,ある通信を収容する入口のノードは,出口のノードまでの最適な波長パスの経路を決定し,その決定された経路上の各ノードが順番に波長の入力ポートと出力ポートとを対応付けしていくことにより,エンド・ツー・エンドで波長パスを確立できる。このようなパス確立などに必要な手順を規定したプロトコル群がGMPLSプロトコルであり,IETFなどの標準化団体で議論されている。

期待膨らむオンデマンド・サービス

 GMPLSを使うと各ノードが自律分散的に波長パスを設定できる。従来の伝送網における集中管理サーバーからの各ノードへの設定処理と比較して,スケーラビリティや堅牢性を確保できると同時に,動的な通信トラフィックの変動に応じた迅速な波長パスの変更や,波長パスの広帯域性に着目した新規サービスの提供が期待できる。

 例えば,図7に示したような,データ・センター間で大容量データを同期させるときだけ,波長パスをオンデマンドで提供するような光VPNサービス。地震などの災害時に速やかにバックアップ・センターに切り替えるような災害復旧サービスなどを実現可能にする。

図7●GMPLSによるオンデマンドの通信
図7●GMPLSによるオンデマンドの通信
災害時などに自動的に経路を切り替えるサービスなどが可能になる。
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GMPLSは相互接続性が重要

 IP網では,既にマルチベンダー環境が一般的であるが,IPプロトコルをベースとしているGMPLS技術の実用化に伴い,光コア・メトロ網においてもマルチベンダー環境が広がっていくと思われる。ここで問題となるのは,IP上の各種プロトコルは,IETFで規定されているが,大まかな合意にとどまるため,ベンダーごとに異なる実装が存在すること。GMPLSも同様の状態である。

 そこで,日本国内や北米を中心に,GMPLSの相互接続性の実現を目指した検証実験や公開デモが定期的に行われている。最近では,国際会議「iPoP2006」において,GMPLSを実装した各種ノード装置を一同に集め,かつ海外の拠点も含めた自律的かつオンデマンドのパス設定に関する公開デモが行われた(図8)。このような公開デモなどを通し,引き続き,実装依存部分の決定や,新サービスの提供可能性が検証されていく。

図8●iPoP2006のショーケースでデモしたネットワーク
図8●iPoP2006のショーケースでデモしたネットワーク
多くのベンダーの製品を集めてGMPLSの相互接続テストをした。メーカー名などは短縮して表記している。
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設備投資を最適化する設計ツール

 通信事業者にとっては,運用コストと設備投資の削減がNGNの重要な動機である。このうち,運用コストの削減手段の一つとしてGMPLSが注目されており,設備投資の削減手段の一つとしては網設備設計ツールが注目されている。

 特に,NGNにおける光コア・メトロ網では,前述のROADMノード導入に伴い,光波長のままでスイッチングが可能になり,複数のリングを接続したメッシュ網が増えていく。このようにノードが高機能化し,網が複雑化するにつれ,今後の需要などを勘案して設備の導入を決めるのはますます難しくなる。そこで,これから導入する設備機器を簡単に決定,あるいは支援する設備設計ツールが望まれている。

 写真1は,光ネットワークを対象とした網設備設計ツールで設計した結果の一例である。この設計ツールでは,トラフィック要求,サイト情報,ファイバ情報などを入力する。そして,この入力情報とデータベースで保持しているファイバや機器固有の光パラメータなどの情報から設計ルールに従って,設計結果一式を出力する。この出力情報には,網構成図の他に,各サイトで必要な機器リスト,価格試算などが含まれる。

写真1●網設備設計ツールの例
写真1●網設備設計ツールの例
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 このような設備設計ツールは,設備購入計画のためのツールとして単独で使用されるだけでなく,今後は,GMPLS技術によるノードでの自律・分散的な制御動作を統一的に管理していく統合運用管理システムの1構成要素として実現されていく。

丸橋 大介(まるはし・だいすけ)
富士通 フォトニクス事業本部プロジェクト統括部長
1982年,早稲田大学理工学部電子通信学科卒業。同年富士通入社。SONET/SDHシステム,WDMシステムの開発に従事。2006年6月より現職(北米ビジネス担当)。