PR

顧客のところには数多くのIT企業が出入りし、顧客はわずか小1時間の面談で営業マンの力量を判断する。最初の面談で失敗すると、取り返しはつかない。提案営業では最初が肝心。今回は、初対面で信頼を得るための事前調査の勘所を公開する。

 契約にこぎ着けられるかどうかの差はどこにあるのでしょうか。私の経験を振り返ると、どれだけお客様と共感できたかどうかによるように思います。いろいろなコンペに参加し、涙をのんだ時もありますが、お客様と共感し、相手の立場で一生懸命考えて提案した時は、大抵の場合、受注に成功しています。

 お客様と共感するには、コミュニケーションを図ることが大切ですが、初めて訪問した企業では担当者との会話のリズムをつかむことにも苦労します。当たり前のことですが、会話のリズムは営業担当者がつくるものです。少しでも話が弾むように、私は会話のきっかけをつくるための事前準備を怠りません。

 取引実績がない会社を初めて訪問する際、営業担当者の大半は会社が用意した会社案内や製品のパンフレットを持参し、パンフレットを見せながら説明します。しかし、私は当社の説明をする時には「自作の会社案内」を使います。というのも、既成のパンフレットはお客様の興味や関心を引き出すツールとして不十分だと考えているからです。

 自作の会社案内の最大のメリットは、これから訪問するお客様に最もふさわしい会社案内を用意できることです。お客様によって興味や関心は異なります。お客様に提供する情報は、例え会社案内であってもカスタマイズすべきと思います。自作の会社案内はPowerPointで作成しているので、お客様一人ひとりに合わせページ構成を柔軟に変えられます。

 共感できる関係を構築するためには、お客様に関心をもってもらえるような「気配り」が必要です。Webシステムを検討しているお客様に通信系・制御系などの開発実績を語っても関心を示してくれません。実績紹介の冒頭で、Webシステムの実績を強調しながら説明するのが効果的です。自作の会社案内ならそれが簡単にできます。資料の中に相手が興味を持つような実績があると、話のきっかけがつかめ、会話のリズムもつくれます。

長々と自社の説明をすべきではない

 共感できる関係を構築する工夫はそれだけではありません。取引するかどうか分からない会社の説明を延々と聞かされることにいら立つ人は少なくないでしょう。ですから、私は自己紹介を口頭で簡単にすませています。その際、簡潔にまとめるのではなく、「自社の強み」や「自分の担当業務に対する熱意」をしっかり伝えるべきです。それには、シナリオをつくり、事前に話の展開を考えておくことを勧めます。

 事前準備は自作資料の作成にとどまりません。初めて訪問する会社のサイトはもちろん、新聞や雑誌、書籍などを通して事前に情報を収集して、お客様の会社について最低限の知識を把握しておくべきです。こう書くと「今さら何を」と思われるでしょうが、Webサイトなどを見ながら「会話の展開」を組み立ててください。

 事前に把握しておくべき顧客の情報はのようになります。それぞれの項目を見て、仮説を立ててみてください。例えば、ホームページの「社長のご挨拶」を読んだところ、これから訪問する会社の社長が「顧客主義」ということを述べていたら、「顧客満足度の向上や顧客関係の強化が“全社的な課題”となっている可能性がある」と仮説を立てます。CS(顧客満足度)の向上に役立つCRM(カスタマ・リレーションシップ管理)などに興味や関心があるのではないかと考え、顧客と議論できる情報を事前に準備しておきます。

図●押さえておくべき顧客の情報と仮説の立て方
図●押さえておくべき顧客の情報と仮説の立て方
顧客を知るため様々な情報を事前に収集するとともに、仮説を立てる必要がある

 仮説が正しければ、会話は弾みお客様は期待感を抱いてくれます。次回訪問する日程も自然な感じで決まるはずです。万が一、仮説が誤っていたら、「今日は大変勉強になりました。次回は、今日、聞かせていただいたお話をもとに情報提供をさせていただきます」と切り出し、次回のアポイントを取ることができます。

 仮説を立てて考える「仮説思考」は提案営業では重要です。提案力は仮説力にあると言ってもいいでしょう。顧客が気付いていない課題を発見し、その解決策を提供するのが提案活動にほかなりません。それには仮説力が不可欠です。お客様はご用聞きのような営業担当者には期待しません。求めているのは独創的なアイデアです。顧客が思い付かないようなアイデアや時には厳しい意見をはっきり言ってくれる営業担当者に対する評価は、今後、ますます高くなるでしょう。

顧客はご用聞き営業マンに期待しない

 仮説を立てる際、ぜひ肝に銘じておいてほしいのは、自分のスタンスを明確にすることです。受注に成功すると、プロジェクトがスタートしますが、その中で自分がどのような面で役に立てるのか自問自答してください。それが顧客の視点で考える出発点になります。

 顧客の立場に立っていない所感や意見は説得力が乏しくなりがちです。営業の世界に「自分を売れ!」という言葉がありますが、ある種の重みがあるように思います。自分を売り込むには「自分の強み」をつくることです。仮説力は顧客のメリットを創出する強い武器となります。まずは、初めて訪問する企業の課題や問題について仮説を立ててみてはいかがでしょうか。

串戸 一浩 アイル マーケティング部長
専門商社で中近東やアフリカ、東南アジア向けマーケティング業務を担当。97年4月に中堅ソフト開発会社に転職し、大手鉄道会社や流通会社などにソリューションを提案、そのうち9割近くを受注した。
http://www.ill.co.jp