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顧客の要望を聞き、問題点を発見し、その解決策を提示する提案営業では、営業担当者のヒアリングの能力が成否を大きく左右する。しかし、その能力が不足している営業担当者が少なくない。今回は、ヒアリングをする際の注意点を紹介する。

 システムの営業では、契約にこぎ着けるまでに時間と労力を費やさなければなりません。その一方で、ソリューションプロバイダの営業担当者はたくさんのお客様にアプローチするように求められています。時間とエネルギーが限られている中で、できるだけ受注の確率を高くする必要があります。

 では、どうしたら成果に結び付く確率は高くなるのでしょうか。私が悩んだ末に達した結論は次のようなものです。「提案する内容は、お客様の事業を反映したものでなければならない。それから、お客様にも参加してもらい、力を合わせて課題や問題を抽出して解決策を考えていこう」。

 提案書は営業担当者が書かなければなりませんが、課題や問題をよく知っているお客様にも参加してもらえば、最も有効な解決策が見つかります。お客様にとって「わが意を得たり」の内容が提案書に書き込まれているので、当然、受注の確率は高くなるわけです。この提案営業を、私は「共創活動」と呼んでいます。

 図1は、私が実践している共創活動の進め方を示したものです。ステップ1(ヒアリング)とステップ4(提案書の作成)、ステップ5(プレゼンテーション)は営業担当者ならだれでもやっているものですが、ステップ2(打ち合わせ資料の作成)とステップ3(打ち合わせ)についてはいかがでしょうか。

図1●プレゼンテーションまでの過程
図1●プレゼンテーションまでの過程
受注するまでにはステップを一つずつ着実に踏まなければならない。ステップ2とステップ3を実行している営業担当者は少ないが実は重要だ
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 プレゼンテーションを実施するまでにお客様のところを何度も訪問する営業担当者は少なくないと思いますが、「打ち合わせ資料」を作成している人はそれほど多くないでしょう。私の打ち合わせ資料は、単なるメモとは違います。提案書はお客様に提出する正式な書類ですが、打ち合わせ資料は非公式な提案書だと考えてください。

 ステップ3でお客様の考えを十分に反映できていないと判断すれば、再びステップ2に戻って打ち合わせ資料を書き直します。打ち合わせ資料の作成に費やす労力は提案書を書き上げる時のものと全く変わりません。何度かお客様と議論して「これなら納得してくれる」と思った段階で「打ち合わせ資料」となっているタイトルを「提案書」に書き換えます。

成功の条件はステップを着実に登ること

 提案営業を成功に導こうと思えば、先に示したステップを一つずつ着実に踏んでいかなければなりません。その意味で、お客様のところを訪問して最初に実施するヒアリングによって、お客様の現状や要望を正確に把握しなければなりません。さもないと、その後の提案書の作成やプレゼンテーションが無駄な努力になってしまいます。

 ステップ1のヒアリングでは、提案する内容の骨格ともいえる基礎的な案件内容や顧客の要望を確認していかなければなりません。事業目的や機能一覧、その仕様に対する要望、ソフトウエアの構成、ハードウエアの構成が記述されているRFP(提案依頼書)をお客様が用意しておいていただけると助かるのですが、そんなことは滅多にありません。ですから、提案書や見積もりを提出するために必要な情報を自力で収集することが大切です。ご参考のために、お客様がEC (電子商取引)を計画している場合、営業担当者が把握しておくべき基本情報を列挙し、図2にまとめたのでご覧ください。

 基本情報を集めたら、次はお客様が見落としている問題点を見つけます。これこそがソリューションプロバイダの仕事であり、この仕事の醍醐味だと思います。お客様の要望が多くて予算を超えてしまいそうな時に「残念ですが、そのご予算だと当社では対応できません」では、ソリューションプロバイダとして失格です。提案営業で成果を上げている営業担当者なら、問題は予算にあるのか、それとも要望にあるのか見極めるでしょう。もし前者なら予算内で収める内容を提案するように心掛けるべきですし、後者なら予算を追加すれば計画を実現できることを説明したうえで、お客様が検討できるような材料を提供していくべきです。

 提案営業を始めた頃、私もお客様の要望を一通り聞き、それをもとに提案書を作成して「なかなか良くできた提案書だ」と自己満足していました。しかし、経験を重ねるうちにお客様が求めているのは提案書ではなく、課題や問題を指摘してくれる“プロ”だということに気付きました。以来、要望を聞くだけでなく、お客様が見落としている課題や問題を発見していくように心掛けています。