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同業他社との競合は日常茶飯事。営業担当者は足繁く顧客のもとを訪問して製品やサービスの売り込みに力を入れているが、意外に忘れがちなのが立ち替わり訪れる営業担当者のことを顧客はいちいち覚えていないことだ。今回は、顧客との距離を縮める方法を探った。

 取引実績があるソリューションプロバイダとそうでない会社が同じ土俵で勝負した場合、実績がある会社のほうが明らかに有利です。その差はどこにあるのでしょうか。信頼感の差だと私は思っています。取引実績がある会社に対してお客様は「この会社に任せても間違いない」という全幅の信頼を置いています。それにひきかえ、実績がない会社に対しては「大丈夫だろうか」という不安を抱いているのです。

 提案営業を成功に導くには、とにもかくにもお客様から信頼を得る必要があります。「営業マンは自分を売り込め」とよく言われますが、この言葉は信頼関係を築く必要性を説いているように私には思えます。とはいえ、信頼関係は一朝一夕で築けるものではありません。訪問前の事前準備から始まり、ヒアリングや提案書の作成を経て、プレゼンテーションに至るまでの過程を通して、お客様の信頼を高めることが不可欠です。

名刺交換しても顧客の記憶はあやふや

 信頼を得る第一歩は、自分のことを鮮明に記憶していただくことですが、営業担当者の大半はそれに四苦八苦しているのではないでしょうか。無理もありません。お客様のところにはたくさんの競合他社の営業担当者が訪問しています。お客様にしてみれば、立ち替わり訪れる営業担当者のことをいちいち覚えておくことはできません。

 ですから、何としてでも自分のことをお客様の記憶にとどめていただくようにすべきですが、それにはいくつかの段階があります。第1段階は、氏名と社名を“ワンセット”で記憶してもらうこと。氏名を覚えていただいたと喜んだのも束の間、別の会社名を言われることがありますが、これではお客様の記憶にとどめていただいたことにはなりません。第2段階は、自分のセールスポイントと会社の特徴を記憶にとどめていただくことです。お客様が製品の購入を検討した時や何か課題に直面した時に「この分野なら彼が詳しい」と思い出していただけたらしめたもの。第3段階は、親近感を持っていただくことです。せめて第2段階に達していないと、提案営業を成功に導くことはできません。

 では、どうすればお客様に覚えていただけるのでしょうか。営業担当者ならだれしも名刺の交換や、メールの送信をしますが、なかなか覚えてもらうことができません。その最大の理由は、名刺交換やメールの送信が形式的なものになっていることにあるように思います。ばく然とした気持ちで名刺交換やメールを送信するのではなく、自分のセールスポイントや会社の特徴をはっきりと印象付けるようなものにすべきです。

 初めて会うお客様と名刺を交換する際、会社名と部署名、自分の氏名を述べて自己紹介します。「名刺を交換したから、お客様は自分のことを覚えてくださった」と満足している営業担当者がいるように思いますが、我々が思っているほどお客様は記憶にとどめているわけではありません。

名刺交換で業務内容まで覚えてもらう

 このことに気付くきっかけとなったのは、ある異業種交流会でした。たくさんの方と名刺を交換し、会社に帰ってから名刺の整理をしたのですが、名刺を渡された方がどのような商品やサービスを扱っているのかほとんど記憶に残っていませんでした。よほど印象に残った方であれば、インターネットを使ってその方の会社のホームページを見つけて事業内容などを確認しようと思いますが、そうでなければ名刺ホルダーの「その他」に入れてしまい、二度と見ないかもしれません。

 これは他人事ではないと思いました。自分のセールスポイントや会社の特徴についての情報をお客様に伝えるには、名刺を交換した時の自己紹介では不十分なことが分かったのです。おそらく、私の名刺を受け取ったお客様もあとで「この串戸っていう人は何をしている人だったかな?」と記憶があいまいになってしまったこともあったのではないでしょうか。

 なぜセールスポイントや特徴を覚えてもらえないのか。あれこれ考えた末、会社名、部門名、役職、氏名、連絡先だけを羅列する名刺のデザインに原因があるという結論に達しました。そこで、思い付いたのが図1のような名刺です。以前、私はBtoB(企業間)、BtoC(対消費者)、BtoE(対従業員)などの関連システムの営業を担当していたe-Planning推進室の室長を務めていましたが、図1の名刺はその時のものです。

図1●お客様の印象に残りやすい名刺の一例
図1●お客様の印象に残りやすい名刺の一例
名刺を交換する時に、自分のミッションや会社の業務内容を伝えられるように構成した
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 この名刺の特徴は、名刺を交換した時に伝えたいポイントを表記していることです。初対面の方に私は(1)当社は1974年に設立した会社であること、(2)BtoB、BtoC、BtoEといったeビジネスの事業モデル構築の支援が私の担当している仕事であること、(3)当社は東京、大阪、名古屋で事業を展開していること――を伝えていますが、この名刺はこれら三つの点を口頭で伝えやすいようにデザインされています。

 図1の新しいデザインの名刺に切り替えてから、名刺を交換する時に、自分のミッションや会社の業務内容を30秒間でしっかりお客様に伝えることをe-Planning推進室のルールにしました。図1にはお客様に伝える言葉も記載しているので、名刺と見比べながらご覧ください。

 新しい名刺の右上に「Since1974」と表記しているのは、もちろん設立期を示すためです。左下の「e-Planning」は私の担当業務を表しています。名刺を交換する際、「1974年から30年近く情報システムを地道に開発してきた会社です」と口頭で説明することによって、新しいWeb技術を活用した事業を企画するとともに、これまで数多くのシステムを開発してきたという実績を強く訴えました。

 次に、右下に記載した事業所の所在地をご覧ください。大阪と名古屋の事業所の所在地を記載したのは、システム構築をやり遂げる体制を大阪と名古屋でも整えていることを伝える狙いがあります。また、チェックマーク(□)を置いたのは、マジックなどでお客様の所在地に応じてチェックを入れることによって、相手に「面白いことを考えるな」といった印象を残すためです。