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本音を引き出せなければ、顧客の課題を解決するシステムの提案はできない。にもかかわらず、顧客の中にはなかなか打ち解けてくれず、口を閉ざしたままの人もいる。そんな相手に対しても、打ち合わせの時の座席配置など、ちょっとした気配りで心を開かすことができる。

 提案営業を成功に導こうと思えば、お客様が抱えている課題を正しく知らなければなりません。言うは易く行うは難し。営業担当者の多くは、お客様の課題の把握に四苦八苦しています。

 営業担当者に対する信頼感がなければ、お客様が会社の内情を包み隠さず説明しようという気持ちにはなりません。ですから、営業担当者はお客様から信頼を得るため、あらゆる努力を払う必要がありますが、その一方でお客様が話しやすくなるような環境を整えることにも配慮すべきです。

 では、どうすればお客様が話しやすいような雰囲気はつくれるのでしょうか。これと言った決め手はありませんが、打ち合わせやプレゼンテーションの席で私が実行していることを紹介します。

一人二役では顧客に対して失礼に

 お客様のところに伺う時に、同僚に同行してもらうのはその1つです。飛び込み営業は単独でやりますが、打ち合わせやプレゼンテーションの時には同僚を連れて訪問します。同行する同僚の人数は時と場合によって変わりますが、私が1人で訪問することは絶対にありません。

 同僚と一緒に打ち合わせやプレゼンテーションに臨むのは、お客様の話のペースを守るためです。打ち合わせやプレゼンテーションでは、お客様の話をさえぎることなく、要所要所で適切な質問を投げ掛けながら、お客様の話を一字一句聞き漏らさないように書き取ることが鉄則です。しかし、私はそれができるほど器用ではありません。質問を投げ掛け、書き取ろうとすると、どうしても自分のペースを守ってしまうのです。せっかくお客様が饒舌になっているのに、私がメモを取るために、お客様の話をさえぎってしまっては申し訳ありません。

 同僚に同行してもらうメリットはもう1つあります。お客様から得た情報や、お客様の反応をもとに、あとで同僚と意見を交換できることです。それによって、お客様の本意を取り違えることは少なくなるうえ、お客様が希望するシステムに問題点がないかどうか客観的に分析することができます。

 打ち合わせやプレゼンテーションに複数でチームを組んで臨むのですから、質問を投げ掛ける進行役とメモを取る記録係という具合に役割分担は明確にしておくべきです。このうち、進行役はお客様の表情を見ながら適切な質問を投げ掛けたり、相づちを打ってお客様の本音を引き出したりします。次の展開を考え、臨機応変に進行を変えることも必要になります。チームの中で最も場数を踏み、提案営業の経験が豊富な人が進行役を務めるべきでしょう。

 メモを取る記録係もそれなりの経験を積んでいるのなら、あえて「突っ込み役」を演じることによって、チームプレーは一段と効果を発揮します。聞きにくいことを質問したり、あるいはなかなか言い出せないことを話したりしなければならない時は、進行役ではなく、記録係が突っ込み役としてそれを担当するのです。例えば、目の前にいるお客様が決裁権をお持ちでないと分かった時、メモを取る担当者が「次回は、ぜひ決裁権を持っている方に会わせてください」と依頼したらどうでしょうか。もしかしたら目の前にいるお客様は気分を害するかもしれません。しかし、チームのリーダーである進行役が丸く収めることによって、お客様の気を取り直すチャンスはあります。

 ただし、突っ込み役を演じるのはコミュニケーションスキルを持っている担当者だけにすべきです。そうでないと、お客様との関係が修復できない状況になる恐れがあります。実際、私も痛い目に遭いました。同行させた若手の技術者が目の前にいるお客様に「ある程度ITの知識を持っている人でないと、話がかみ合わず、時間の無駄です。次回は、ITの知識がある人を同席させてください」と言って、その方を怒らせてしまったのです。このケースは論外ですが、それなりのスキルがないと、お客様の心証を害さないで言いにくいことは言えません。

座る席を変えるだけで会話は弾む

 打ち合わせやプレゼンテーションの時の座席の配置によっても、話しやすい雰囲気であるかどうか大きく変わるので、注意を払うべきでしょう。以前、ある書籍に「向き合って対話すると、対決しようという気持ちになりやすい」という一文があり、私は膝を叩きました。真っ正面にいるお客様からヒアリングがやりにくかったという経験が何度かあったからです。以来、私は座る席にも気を使っています。

 図1をご覧ください。私と同僚が打ち合わせに伺い、2人のお客様が応対した時の座席配置図です。出席したお客様のうち主導権を握られている方が右側に着席されたので、進行役を務める私は左側に座り、その方の正面にはメモを取る同僚に着席してもらいました。主導権を握っている方の正面を避けたのは、その方に対決してやろうという気持ちを抱かせないようにするためです。

図1●打ち合わせの時の着席図
図1●打ち合わせの時の着席図
こちらから2人、顧客から2人が出席したケースでは、比較的狭い会議室で打ち合わせすることが多い

 もっとも、これは必ずしも理想的な配置ではありません。メモを取る記録係は、できれば主導権を握っているお客様から少し離れた位置に座るほうがよいでしょう。主導権を握っているお客様の近くだと、その方がノートに書いてある内容に気を取られ、話が弾まなくなるからです。しかし、理想ばかりを言っていられません。こちらから2人、お客様から2人というケースでは、限られたスペースで打ち合わせます。そうなると、図1のような座り方にならざるを得なくなります。