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■商談や開発の打ち合わせで重要になるのがヒアリング。上手なヒアリングのためには,質問力を高めなければいけません。質問力を高めるための具体的な方法論を紹介します。今回は、検索エンジンを活用した質問力のエクササイズです。

(吉岡 英幸=ナレッジサイン代表取締役)


 先日あるクライアント企業と「社内ブログ」をテーマとしたワークショップを行った時のこと。その場で「インターネットで検索する際、どんな検索キーワードを使うかで検索する人のセンスが問われる」という議論になった。

 確かに検索エンジンで情報を引き出すのも、上手な人と不器用な人がいる。要は検索キーワードの選び方なのだ。これはまさに質問力と言える。

 欲しい情報を引き出すための適切なキーワードは何なのか。キーワード一つで返ってくる回答が異なってくる。検索エンジンだけでなく、リアルな会話の中でも同じことである。

最近、検索エンジンでのキーワード入力の思考を考えることで、質問力のエクササイズになることに気づいた。今回は、この質問力のエクササイズについて紹介する。

抽象化された概念を具体化する検索キーワード

以前、製薬業界におけるMR(医薬情報担当者)の仕事内容について調べたことがあった。MRとはどのような仕事をしているのか? どのように仕事を進め、どのような課題があるのか?

まずは「MR」「仕事内容」というキーワードで検索する。そうすると、多くは求人情報サイトに行き当たる。そこで具体的な製薬企業のMRの仕事が紹介されている。しかし、どこも同じで、しかも表面的な情報だ。

 もう少し実態を知りたいと思い、今度は「仕事内容」ではなく「仕事の実態」というキーワードで検索してみた。しかし残念ながら、MRの仕事の実態を記述した情報にはほとんどヒットしなかった。

 次に「MR」「一日」というキーワードで検索してみた。意図としては、MRの一日がどんなものかを知ることで、MRの仕事の実態や課題を知るというわけだ。そうすると、実際のMRの方々が書いたブログがたくさん表示され、生々しい仕事の実態を知ることができた。

 今なら「MR」「日記」というキーワードでブログ検索すれば、このような情報にすぐアクセスできるが、この検索の過程は質問力を鍛えるうえで非常に参考になることに気づいた。

 最初の2つの検索キーワードを質問句にすると、「MRの仕事内容とはどのようなものですか?」になる。

 次にトライした2種類の検索の仕方を質問句として並べるとこうなる。

「MRの仕事の実態とはどのようなものですか?」
「MRの一日とはどのようなものですか?」

 ご覧いただければ分かる通り、前者はいささか抽象的な質問だ。答える方も答えにくい。後者は、「一日」という「実態」を構成する具体的な要素にブレイクダウンされた質問だ。こちらの方が答えやすいだろう。

 我々は常々「御社の課題は何ですか?」というふうに、抽象的な質問の仕方を無意識のうちにすることが多い。しかし、「課題」という抽象化された情報を得るためには、「課題」をもっとブレイクダウンした具体的なキーワードに落とし込んで質問しないといけない。

検索エンジンを使った質問力のエクササイズ

 MRの課題であれば、「一日」「給料」「上司」「昇進」「プライベート」「悩み」などと具体的にキーワードを素因数分解してみる。こういう個別のキーワードで質問をすることによって、「課題」が包括的に見えてくるのだ。

 つまり、知りたい情報をブレイクダウンする具体化の能力が必要なのだ。これを鍛えるために検索エンジンを使ったエクササイズをお勧めする次第である。

 何かテーマを設定して、それを具体化するキーワードを2つに絞ってWeb検索していく。3つ以上のキーワードを設定すると、必然的に絞られてしまうのでよくない。2つであることが重要だ。

 そして、テーマ通りの情報が得られるか、キーワードを変えて何度もトライしてみるのだ。その過程は、まさに知りたい情報についてブレイクダウンしていく過程そのものだ。

 検索エンジンの特性で、キーワードによって情報のヒットの仕方に若干偏りがある。しかし、インターネットの世界は基本的にコミュニケーションの縮図のようになっているので、抽象化された概念とそれを構成する具体的なキーワードが見事にリンクしてくる。

 つまり検索エンジンで最も有効であったキーワードが、実際の質問の際にも有効なキーワードとなるのだ。独りでできるちょっとしたエクササイズだ。一度試してみてはいかがだろうか。


著者プロフィール
1986年、神戸大学経営学部卒業。株式会社リクルートを経て2003年ナレッジサイン設立。プロの仕切り屋(ファシリテーター)として、議論をしながらナレッジを共有する独自の手法、ナレッジワークショップを開発。IT業界を中心に、この手法を活用した販促セミナーの企画・運営やコミュニケーションスキルの研修などを提供している。著書に「会議でヒーローになれる人、バカに見られる人」(技術評論社刊)、「人見知りは案外うまくいく」(技術評論社刊)。ITコーディネータ。