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 「データセンター事業者から電気料金を追加で請求されるケースが増えて困っている」。こんな話を,ある大手製造業の情報システム部門長から聞いた。どうやらこの企業が預けているサーバーやストレージなどの機器が,サービス事業者が想定していた以上の電力を消費したためのようだ。

 データセンターが電力不足に陥り,ラックのスペースは空いているのにサービスを提供できないケースがあるという話は,去年あたりから何度か耳にした覚えがあった。そこで実際に,いくつかのデータセンター事業者に話を聞いてみると,電力事情はより深刻になっていることがわかった。

 その度合いは,従来のデータセンター・サービスの考え方を一変させかねないと思われるほど高いように感じた。筆者は,このままではコロケーション・サービスと呼ばれる,いわゆる「場所貸し」のサービスを提供するのが困難になるのではないかと懸念している。消費電力をコントロールするのが難しいからだ。

ガラガラなのにサービスは提供できない

 データセンター・サービス事業者は当然ながら,データセンターの建築費や設備の運用費をふまえて,各サービスの料金を設定している。通常は,6年~10年で設備を償却することを想定するのだという。一昔前までは,サーバーを収容するラックをいくつぐらい設置できるかが,料金設定のカギになっていた。

 しかし,今はそれでは立ち行かない。スペースよりもまず,消費電力の上限を使い切ってしまうからだ。実際,ラックを置くスペースはガラガラなのに,もうこれ以上サービスを提供できないというデータセンターが,都内にはいくつもある。

 データセンターが電力不足に悩まされる背景には,サーバーなどの機器が小型化していることがある。ブレード・サーバーはその代表格だ。以前は1つのラックにサーバー数台という使い方が多かったが,今は数十台を稼働させることができるようになった。「ラックあたりに供給する電力は以前は20アンペアだったが,今は40~60アンペアを用意しないと,不足してしまう」(あるデータセンター事業者)という。

 消費電力が増えれば,当然,単位面積あたりの発熱量も増える。別のデータセンター事業者は,「100ある電力のうち,サーバー用に割り当てるのは60だけだ。空調には30を確保しておく必要がある。残り10が,監視用設備や照明などだ」と,いかに空調が電力を消費するかを強調する。サーバーの発熱量が増えるとより多くの空調設備を用意しなくてはならず,さらにそれを動かすための電力も必要になるという,“負の循環”が生まれているのが実情だ。

料金設定は電力容量がベースになる?

 ならば,電力設備を増やし,より多くの電力を供給できるようにすれば良いのではないか,とも考えた。しかし,それも難しいのだという。よほど最新のデータセンターでない限り,電力設備や空調設備を増設することを想定していないため,そのためのスペースがない。

 また,電力会社側にも供給のための設備が必要になるため,簡単に増やすことはできない。特に,東京の大手町などのオフィス街やデータセンターが集中している地区では,電力会社の設備そのものが飽和しており,これ以上の電力供給が困難になっているという。

 何より,電力設備の工事ともなれば,いったんは既存の電力設備を停止しなければならない可能性も出てくる。「高い耐震性,安定した電力供給」を約束するデータセンター事業者が,自社の売り上げ向上のために,顧客のサーバーを止めるというわけにもいかないだろう。

 スペースよりも電力容量に先に限界が訪れるのなら,実質的にはスペース貸しというよりは,データセンターの電力容量をユーザーに貸し出す“電力貸し”といっていいのではないだろうか。すでに「新たに開設したデータセンターは,スペースに電力容量を加味した料金メニューを設定している」(あるデータセンター事業者)という動きも始まっている。ただ,筆者が数社のサービスを調べた範囲では,電力容量を基準にした料金メニューを公開しているサービスは,まだないようだ。

今後はホスティングが中心に

 サービス事業者にとって,自前で用意する機器を貸し出すホスティング・サービスは,電力管理がしやすい。余剰電力がどれだけあるかを計算しながら,サーバーやストレージを導入すればよい。難しいのはコロケーション・サービスである。持ち込む機器はユーザー任せであるため,どの程度電力を使うかを想定しにくい。わずかなスペースを貸した場合でも,大量の電力を消費する機器を持ち込まれれば,そのデータセンター設備の電力容量に大きく影響してしまう。

 実際,話を聞いた中には,「今後のサービスは,コロケーション型は縮小し,ホスティング型が中心になるのではないか」というデータセンター事業者もいた。今後も電力事情が悪化するようなら,サービスの提供が難しくなる可能性がある。少なくとも,これまでのような料金水準は維持できなくなるのではないか。

 インテルやAMDといったプロセサ・メーカーや,IBM,NEC,日立製作所,富士通といったサーバー・メーカーは,プロセサやサーバーの省電力化に力を入れている。しかし現状の電力不足を数年前に予測できなかったことを考えると,今後の電力事情も楽観はできない。サーバーの集積率がさらに上がり,消費電力がさらに増え,これまで以上に電力マネジメントが難しくなる可能性もある。サービスを利用するユーザー企業も,このような事情はしっかり把握しておくべきだろう。