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筆者:園田 誠=フリーライター/フリープログラマ

 2006年末以降,TVや新聞で「セカンドライフ」という言葉を見聞きする機会が増えました。セカンドライフと言っても,定年後の人生のお話ではなく,ネット上に現れた巨大な仮想世界「セカンドライフ」の方のお話です。ITpro読者の皆さんにも,IBMなどの大企業がセカンドライフに熱心に取り組み出したとかの報道を読んで気になっている方がいらっしゃるでしょう。2007年の7月にはついに日本語に対応したクライアント・ソフト(ベータ版)が登場し,いよいよ日本人が参加しやすくなってきています。ここでは,セカンドライフとはどんな世界で,どうやって参加していくかを順を追って解説します。

3Dの冒険ゲームのようなものだが...

 セカンドライフを一言で説明すれば,「FINAL FANTASY XI」や「Ultima Online」などのような3Dの仮想空間を冒険するゲームのようなものです。ただし,純粋なゲームとは言い切れないところが多々あります。IBMなどの企業が仮想世界内に拠点を構えている点がその一つです。また,ゲーム内で通用する通貨を実世界で使える現金と交換できたりもします。新聞などの報道を見ると,このあたりの「何となく儲かりそう」というイメージが強く匂います。報道は過熱気味で,現金の匂いに対する興味本位の記事ばかりという印象があります。

 たしかに,セカンドライフの世界では,3Dオブジェクトなどを創作して,それをゲーム内で販売・配布できます。ただし,「販売できる=儲かる」という短絡的な考えは今すぐ捨てましょう。セカンドライフは欧米で発達したものです。日本人が参加し始めたころには,すでに欧米のクリエイタ達が星の数ほどのオブジェクトやスクリプトを作り出して販売しています。今から「見たこともないユニークですばらしいもの」を作ることは,ほぼ無理だと思った方が良いでしょう。しかし,自由に物を作り出せて,人に見てもらえる発表の場としての魅力が失われてしまったわけではありません。

 本稿では,「ブームだし金儲けできますよ」という安易なことを言うつもりはありません。お金儲けができなくても,セカンドライフには,いろいろな魅力があります。セカンドライフに興味はあるけれど,きちんと始められるか自信がないという皆さんに,セカンドライフの世界に簡単に飛び込む方法をご説明します。

何のための世界なのか --- それはあなたが決める

 冒頭で,セカンドライフを「3Dの仮想空間を冒険するゲームのようなもの」と説明しました。もう少し詳しく説明すると,セカンドライフは3Dモデルで構築された仮想世界で,自身は「アバター」というキャラクターを操作します。また,この仮想世界には,ほかのユーザーがリアルタイムに操作しているアバターも存在しています。こうした環境をMMO(Massively Multiplayer Onlineの略)と呼びます。MMOは多数のユーザーが一つのオンライン空間を共有する世界を意味します。

 MMOと言えばロールプレイング・ゲーム(MMORPG)やシューティング・ゲーム(MMOFPS)が有名です。これらのゲーム製品では,ファンタジーの世界や戦場を模した仮想空間内でプレイヤー同士で協力し合って目的を達成します。

図1●仮想通貨「リンデンドル」(L$)は米ドルと換金できる
図1●仮想通貨「リンデンドル」(L$)は米ドルと換金できる
現実世界の現金でリンデンドルを買ってゲーム内に持ち込むこともできる。さらに,リンデンドルを米ドルに換金することもできる。実際にセカンドライフにユーザーとして登録すると,為替相場の動きを確認できる。[画像のクリックで拡大表示]

 セカンドライフもMMOの一種です。しかし,ゲームとは異なり,あらかじめ決まった最終目的が存在しません。ドラゴンを退治する必要も首都を占拠する必要もありません。アバターは仮想世界の中で会話やショッピングを楽しみ,必要であればアルバイト(求人が出ていることがあります)をして小遣いを稼ぎ,まさにセカンドライフ(二つめの人生)を送るのです。つまり,セカンドライフにおいては最終目的は参加者の数だけあると言えるでしょう。

 セカンドライフの仮想空間では「リンデンドル」(以降L$)という仮想通貨が流通しています。仮想とはいえ通貨ですので,リンデンドルで買い物ができます。手持ちのリンデンドルがなくなったときには,現実世界の現金でリンデンドルを買ってゲーム内に持ち込むことができます。さらに,リンデンドルを米ドルに換金することもできます(相場は常に変動しています)。実際にユーザーとして登録すると,為替相場の動きを確認できます(図1)。


米ドルと仮想通貨を換金でき,土地や建物を独自に作ったりできる

 仮想世界の中には広大な土地が広がっています。そして,その土地も売買できます。土地には建物を設置できます。建物もオブジェクトですから,あなたが技術さえお持ちなら自分で好きなようにデザインできます。自動車や船もオブジェクトです。だから自分で作れます。作ったオブジェクトにスクリプトでモーションを指定すれば動かすことができます。動きのあるオブジェクトを作るにはスクリプトが欠かせません。例えば,風車小屋を3Dオブジェクトとして作っても,風車を回転させるスクリプトがないと風車の回らない風車小屋になってしまいます。仮想世界内の雰囲気をつかむには,ITproの記事(「話題の仮想世界Second Lifeに突入取材,そこには“小京都”もあった」)などが参考になります。

 ゲーム内で作成したオブジェクトやスクリプトの著作権,知的財産権は制作者,つまり皆さんに帰属します。これは使用許諾契約書にも明記されています。ユーザーが作ったものは運営会社のものということはありません。自分のものです。俄然やる気が出てくる話ではありませんか。

 ただし,権利が自分に帰属するから自動的に守られるということではありません。現実世界でも同じですが,良いものが現れると模倣品や類似品が当然出てきます。一応,使用許諾契約書で知的財産権を保証されているわけですから,その気になれば「自分がオリジナルである」と裁判を起こすことができます。もちろん裁判は仮想世界ではなく,現実社会で起こす必要があります。

 ほかのMMOの場合,ゲーム内にあるオブジェクトは開発会社が製作して設置しているものばかりです。カスタマイズといっても,与えられたパーツの組み合わせ程度しかできません。ところがセカンドライフでは,開発会社が作ったものよりも,参加者が作ったオブジェクトの方がはるかに多く存在し,日々増加しています。

 一般的なMMOでは,仮想通貨の現金化,あるいは現金で仮想通貨を購入する行為はReal Money Trading(RMT)と呼ばれて,規約違反であることがほとんどです。ところがセカンドライフでは米ドルとの換金を前提にしています。MMOとしてのタブーを逆手に取ってしまったことが,セカンドライフを異質なものに見せていて,一般メディアからも注目されている理由になっているのかもしれません。

園田 誠(そのだ まこと)
フリーライター/フリープログラマ。1965年愛知県生まれ,多摩美術大学卒業。美術大学卒業後,大工やコンビニエンス・ストア店長,写真店店長,バイク便ライダーなど,美術ともITともまるで縁のない業界を渡り歩いて,35歳で突如ライターデビュー。日経ソフトウエアを中心に執筆活動をするかたわら,最近ではWeb/DBプログラマとしてアイドルの公式携帯サイト,政府外郭団体,証券会社,大学のシステムなども構築。言っていることはちゃらんぽらんだが,やってることは意外に堅実。現在の目標は反抗期の子供に尊敬される父親になること。http://www.japan.xitami.net/