PR

 「IPアドレスが枯渇する」。これを聞いたことがある人は少なくないだろう。現在,主に使われているIPv4のアドレスがもうすぐ底をつき,割り当てられなくなるということである。IPアドレスが割り当てられなくなれば,新たにサーバーなどをインターネットに接続できなくなる。

 こうした問題への対策を検討するため,8月8日に総務省が「インターネットの円滑なIPv6移行に関する調査研究会」を開催した。1990年代から「あと数年でIPアドレスが枯渇すると言われてきており,「いまごろ」あるいは「ようやく」という感があるが,ついに総務省が本気モードに入ったようである(関連記事)。総務省の研究会はIPアドレスの枯渇時期を,2010年が現時点で最も確かそうだとして検討を進めている。

アドレスは本当に底をつきかけているのか

 IPv4アドレスは32ビットで表現される。単純に計算すれば約43億のアドレスがある(このうち,プライベート・アドレスやブロードキャスト・アドレスなどで使用するためグローバル・アドレスとして端末に割り当てられないアドレスがある)。「全世界の人口が66億人強であるから,一人1個に足りない」などと言っても仕方がない。インターネットとは縁のない国や地域のほうが圧倒的に多いからである。

 ではインターネット・ユーザーの数を見るとどうか。Miniwatts Marketing Groupによると,世界のインターネット・ユーザー数は12億に迫っている(同社の調査結果)。約43億あるアドレスを約12億のユーザーが利用しているだけで枯渇しそうというのは不思議な気もする。1人あたり4個近いアドレスがあるのに・・・。

 Webサーバーなど外部からアクセスされるサーバーには,基本的に1台ごとにグローバルIPアドレスを割り当てる必要がある。しかし,インターネットにアクセスする端末にはその必要はない。NAT(アドレス変換)技術などを使えば,端末にはプライベートIPアドレスを割り当てるだけで十分である。事業所や家庭といった拠点ごとに,1つずつグローバルIPアドレスがあれば事足りる。いくらサーバーが多くても,インターネット・ユーザーあたり2つもあれば,お釣りが来るはずである。

 実際,Internet Systems Consortiumの調査によると,グローバルIPアドレスを使ってインターネットに接続しているホスト数は,2007年7月時点で約5億に過ぎない。つまり,割り当てられているが,使われていないIPアドレスが多い。その遊んでいるアドレスを活用できれば,当分の間,まかなえるはずである。

 しかし,現実にはそうはいかない。この背景には,IPネットワークのルーティング効率化に起因するIPアドレスの割り当て方法がある。

 IPアドレスでは32ビットのうち,上位何ビットかをネットワーク・アドレスとしてISPや企業などに割り当て,残りの下位ビットはそのISPなどがホスト・アドレスとして自由にサーバーや端末に割り当てる。IPアドレスにはA,B,Cという3つのクラスがあり(実際にはクラスD,Eもある),ネットワーク・アドレスの長さはクラスAで上位8ビット,クラスBで上位16ビット,クラスCで上位24ビットとなる。それぞれのクラスのネットワーク・アドレスの割り当てを受けると,クラスAでは約1600万,クラスBでは約6万5000,クラスCでは約250のサーバーや端末を接続できる(関連記事)。見方を変えれば,この単位でIPアドレスを割り当てていると,結果として使い切れないホスト・アドレスが生じてしまう。

 とはいえ,32ビットすべてをホスト・アドレスとして個別に割り当て,管理するのは不可能に近い。現在,ルーターはネットワーク・アドレスだけを見て,ルーティング処理を実施している。32ビットすべてを見てルーティングするとなると,ルーティング・テーブルの容量や処理負荷が格段に増加する。

 この割り当て単位を少なくするためにCIDR(Classless Inter-Domain Routing)という技術が使われるなど,IPアドレスの効率利用が進められてきた。また,IPアドレスの再割り当ても実施されてきた。IPアドレスに余裕があったころ,クラスCアドレスを数個で足りる企業やISPに,クラスBを割り当てていたことがあったからだ。再割り当ては,こういった“大盤振る舞い”の見直しである。

IPv6アドレスを割り当てられても

 しかし,これらの努力は延命措置でしかない。2010年かどうかはわからないが,IPv4アドレスは枯渇する。根本的な解決にはIPv6を利用するしかない。IPv6のアドレスは128ビットである。IPv4が32ビットであるから,比べようもないくらい多くのアドレスを割り当てられる。総務省の研究会も,IPv6への円滑な移行を目的にしている。

 本当にIPv6しか割り当てられなくなったらどうなるのだろうか? 現在,IPv6サービスを提供するISPは限られている。IPv6普及・高度化推進協議会の調査でもそれが明らかである(参考資料:PDF)。それに基本的にIPv4とIPv6は別々のサービス/ネットワークとなっている。

 技術的にはトンネリングという手法を使い,IPv4ネットワークとIPv6ネットワークを混在させて,相互接続できる。IPv4端末とIPv6端末の通信も可能である。しかし,実際にこれを実現するかは別問題である。WindowsはXP以降,IPv4/IPv6の両方を使えるデュアル・スタックをサポートしているが,接続先のサーバーやISPのIPv6のサポート状況によっては,レスポンスが遅くなるという問題が発生している。

 このような状況で,新規にWebサーバーを立ち上げたり,インターネット接続サービスを契約した際,IPv6アドレスを割り当てられたらやはり不安である。混乱したり問題が生じることは必至である。2010年までにこういった不安をどのように軽減していくのか。IPv4の枯渇,IPv6の割り当てがいよいよ現実的となってきた今,注意して見ていきたい。