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 前回は,情報通信法(仮)で採用される予定のコンテンツ規制にかかわるコンテンツ配信サービス分類の概略を説明しました。

 「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会 中間取りまとめ」では,情報通信法(仮)におけるコンテンツ配信サービスを大きく3つに分けています。

1.メディアサービス
 a.特別メディアサービス
   地上テレビ放送及びそれに相当するもの
 b.一般メディアサービス
   衛星放送(CS),有線テレビ放送,IPマルチキャスト配信など
2.公然通信
   ホームページなど
3.上記以外のコンテンツ流通
   私信など特定人間の通信

 「1.メディアサービス」の「a.特別メディアサービス」に分類されている「地上テレビ放送及びそれに相当するもの」については,現行の法規制をそのまま維持(注1)するようです。したがって,現状との違いはありません。

 「1.メディアサービス」の「b.一般メディアサービス」は衛星放送(CS),有線テレビ放送,IPマルチキャスト配信などが該当します。これらについては,社会的機能・影響力に基づき,さらに類型化してより緩やかな規律を検討するとしています。具体的には,「災害放送など特別な社会的役割に係る義務の適用を緩和し,「マスメディア集中排除原則」(注2)についても最小限度の規律を課す方向で検討すべきである」とあります。

 コンテンツに関する規律は,適正内容の確保の規律等に限定し,その他を緩和することが考えられています。「b.一般メディアサービス」のうち,CS放送等に準ずるものについては,現行の規律である「番組編集準則」「広告識別」など適正内容の確保に関する規律をそのまま適用する,その他のサービスについてはより緩やかな規律の適用にとどめるもの,としています。「b.一般メディアサービス」に関して言うと,全体としては規律(規制)が緩やかになると言えるでしょう。

ネットの「有害」コンテンツは規制強化の方向へ

 ホームページなどが対象となる「2.公然通信」について,中間取りまとめは「『公然通信』に係るコンテンツ流通に関して,各種ガイドラインやモデル約款等が策定・運用されていることを踏まえ,違法・有害コンテンツ流通に係る最低限の配慮事項として,関係者全般が遵守すべき「共通ルール」の基本部分を規定し,ISPや業界団体による削除やレイティング設定等の対応指針を作成する際の法的根拠とすべきである」としています。

 この部分を見る限り,「違法」コンテンツの取り扱いについて,現状と大きな違いは生じないのではないでしょうか。ISP,業界団体等の各種ガイドラインやモデル約款等で定められている事項を踏まえて,対応の根拠となる共通ルールを定めるだけであれば,当然ながら違法コンテンツの「範囲」を変えるものとは考えにくいからです。ただ,この中間報告では「共通ルール」なるものがどのようなものになるのか,具体的に説明されているわけではありません。その点が,ネットの規制強化につながるのではないかとの疑問につながっているものと考えられます。

 他方,「2.公然通信」で規制が強化されることになると思われるのが,「有害」コンテンツの取り扱いの部分でしょう。有害コンテンツについての規制については,特に青少年など特定利用者層に対する関係での規制の必要性を考えているようです。具体的には,有害図書防止条例(注3)などの手法を参考にして,いわゆる「ゾーニング」規制(注4)を導入することの適否を検討するとしています。ゾーニング規制導入がされた場合には,これまで規制がなかったところに規制が及ぶ可能性が出てきます。この点では,従来よりも「有害」コンテンツに規制が及ぶ可能性が高くなったと言えるでしょう。

 最後の「3.上記以外のコンテンツ流通」における私信等,特定人間の通信については,現在からの変更はありません。ただし,「公然通信」か「私信」か,という区別が微妙な事案は当然出てくるでしょう。情報通信法で「公然」の定義がどのようになるのかにもよると思いますが,著作権法の「公然」などと同様の定義がなされることになるのでしょう。著作権法でもどのような場合に「公然」となるのかは,微妙なところがありますので,おそらくそれと同じ問題が生じることになると思います。

 中間取りまとめを素直に読む限り,情報通信法(仮)はネットに対する過剰な規制を意図したものではありません。ところが,ネット上では批判的な意見が強いようです。

 批判の原因の一つは,厳密な定義なしに「メディアサービス」という言葉を使っていることにあるようです。「メディアサービス」に当たるか否かについては,「『公然性を有する通信』のうち現在の放送と類比可能なコンテンツ配信サービス」と書かれているだけです。「類比可能な」となっていますから,現在の放送と同様のものだけが該当すると考えるのが素直だと思いますが,いずれにせよ明確な説明が不足しています。

 また,「社会的機能・影響力に重点を置いて,コンテンツ規律を再構成すべきである」と書かれている部分もあります。このため,インターネットで流通するコンテンツであっても,社会的機能・影響力があれば,「メディアサービス」としての規律,規制が適用されるのではないか,という批判が出ているわけです。

 ただ,中間取りまとめの目的は,あくまでも大枠を示すことにあります。このため「メディアサービス」を厳密に定義していないことには,やむを得ないところもあります。「メディアサービス」の定義が明らかでない以上,現段階で批判したところであまり建設的な議論にはならないように思います。この点については,最終報告を含めた,今後の議論を注視するしかないでしょう。

(注1)放送の多元性・多様性・地域性の確保を目的とするマスメディア集中排除原則についても基本的に維持されるようです。中間報告9頁参照
(注2)複数の放送事業者への出資を禁止する規制。少数者による放送事業の支配を防ぐために設けられた
(注3)都道府県等が条例で定めているもので,有害図書等を指定し,青少年に対する販売等を禁止したり,販売方法等を規制する条例
(注4)中間報告書10頁で,「特定の行為等に対して一定のゾーン(範囲や利用方法)に限り,規制することを許容する規律手法」と説明されています


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■北岡 弘章 (きたおか ひろあき)

【略歴】
 弁護士・弁理士。同志社大学法学部卒業,1997年弁護士登録,2004年弁理士登録。大阪弁護士会所属。企業法務,特にIT・知的財産権といった情報法に関連する業務を行う。最近では個人情報保護,プライバシーマーク取得のためのコンサルティング,営業秘密管理に関連する相談業務や,産学連携,技術系ベンチャーの支援も行っている。
 2001~2002年,堺市情報システムセキュリティ懇話会委員,2006年より大阪デジタルコンテンツビジネス創出協議会アドバイザー,情報ネットワーク法学会情報法研究部会「個人情報保護法研究会」所属。

【著書】
 「漏洩事件Q&Aに学ぶ 個人情報保護と対策 改訂版」(日経BP社),「人事部のための個人情報保護法」共著(労務行政研究所),「SEのための法律入門」(日経BP社)など。

【ホームページ】
 事務所のホームページ(http://www.i-law.jp/)の他に,ブログの「情報法考現学」(http://blog.i-law.jp/)も執筆中。