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 携帯電話のネットワークは,基地局と交換機,交換機と交換機とを伝送路で結ぶことによって成り立っている。伝送路は主に光ファイバなどで接続されており,災害時に光ファイバに障害が発生すると,広い範囲で携帯電話が使用できなくなってしまう危険性がある。実は,携帯電話ネットワークにとって伝送路の確保は非常に重要な課題なのだ。

伝送路は複数のルートを用意,一部の基地局は無線化も

 こうした光ファイバ・ケーブルの切断といった事態に備えて,携帯電話事業者各社は,交換機同士を結ぶ伝送路に対しては複数ルートを用意している。仮に伝送路の一つが災害で切れたとしても,自動的に他の経路を迂回して,携帯電話を継続して利用できるようにしているのだ。

 これに対して,交換機と基地局を結ぶ伝送路は,コスト上の問題もあり,必ずしも複数ルートは確保されていないのが現状である。もっとも,基地局と交換機はスター状に1対1で結ばれているケースも多く,一つの基地局に対する伝送路が切れたとしても,他の基地局に影響が及ぶことは少ない。また一部には,マイクロウェーブなどの無線通信で交換機と接続されている基地局も存在しており,こうした基地局は,災害時に地上ルートの断線が発生してもほとんど影響を受けることはない。

 光ファイバなどの有線ネットワークの障害に対して,携帯電話は比較的強いネットワーク構成を取っていると言える。

中越沖地震でソフトバンクは93の基地局がダウン

 ところが,7月16日に発生した新潟県中越沖地震において,ソフトバンクモバイルの基地局では,他の携帯電話事業者よりもはるかに多い93の基地局が停止してしまった。その理由としてソフトバンクモバイルは,「基地局をつなぐ伝送路が切断し,大規模な範囲で基地局が利用できなくなってしまった」と説明する。前述のように,交換機からスター状に複数の基地局が直接接続されているのであれば,伝送路に障害が起こったとしても,それほどの規模で基地局が停止することはない。いったい何が起こったのだろうか。

 実は同社のネットワークは,交換機から中継局を通じ,さらに中継局からリング状に伝送路を敷き,その沿線上に別の中継局や,5~10程度の基地局を配置するという仕組みを用いることが多い。このネットワークの特徴は,仮にリングの1個所が切断されてしまったとしても,逆回りのルートで通信を継続できるという点だ。

 ところが今回の地震では,比較的上位に位置する伝送路のリングが,不幸にも2個所切断されるという最悪の事態が発生してしまった。そのため,リングの沿線上に設置されていた,それ以下の中継局や基地局にまで影響を与え,結果として多数の基地局が停止するに至ったのである(図1)。

 ソフトバンクモバイルのネットワークは,グループ会社のソフトバンクテレコムの幹線を使用しており,主にJR沿線上にケーブルが敷かれている。今回の地震では,このJR沿線にあるケーブルがかなりの被害を受けており,こうした事情も大きく影響したようだ。

 基地局に大きな被害が発生したことを受け,ソフトバンクモバイルは早急に復旧の対策を行い,物理的・論理的にネットワークの修復や迂回などの対応を行った。これにより,地震発生直後に停止した93の基地局のうち,同日の19時には,停電などの別の要因で停波している22局を除き,ほぼ復旧を果たしている。また今後は,こうした事態が起こらないよう,分散・迂回路の強化を検討するとしている。

図1●ソフトバンクモバイルのネットワーク構成と障害原因<br>(この図はあくまでもイメージで,障害が発生したネットワークを正確に表したものではない)
図1●ソフトバンクモバイルのネットワーク構成と障害原因(この図はあくまでもイメージで,障害が発生したネットワークを正確に表したものではない)