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 オフィス・ビルの次に調べたのが一戸建て住宅である。一戸建て住宅は,オフィスと比べて構造が複雑。ドアや壁,梁(はり)などさまざまなところに構造物があり,これらで電波の反射や吸収が起こる。オフィスと異なる傾向が出る可能性がある。

 実測で使用したのは,首都圏の閑静な住宅街にある木造2階建ての建物。間取りは4LDKで,1階が62.50m2,2階が56.21m2の面積を持つ住宅である。

 測定では1階の居間にある電話台にアクセスポイント(AP)を設置し,全部屋でのスループットを計測した。実験環境や実験方法は,オフィスの場合と同じである。ただし,サーバーとなるパソコンをデスクトップ・パソコンからノート・パソコンに変更した。その結果,サーバー側のネットワーク・インターフェース・チップの性能が若干低下し,最大スループットが91Mビット/秒になった(デスクトップの場合は94Mビット/秒だった)。40MHz幅の802.11nのスループットが91Mビット/秒を超えていないのは,このことが原因である(図7)。

図7●戸建て住宅での測定結果
図7●戸建て住宅での測定結果
アクセスポイントから遠い2階の奥の部屋でスループットが落ちている。
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802.11nと11aのピークの場所が異なる

 計測結果だが,802.11nのスループットは40MHz幅で通信した場合は78.6M~90.4Mビット/秒,20MHz幅の場合は66.4M~81Mビット/秒だった。

 スループット分布はオフィスとは異なる傾向だった。不思議なことに,802.11nと802.11aのスループットが最大/最小になる場所が逆になっているのである。

 具体的には802.11nはAPのほぼ真上となる2階の寝室(図7の(3))で最大スループットを達成しているのに対し,802.11aはAPから最も遠い2階の子供部屋1(図7の(4))で最大スループットを達成している。逆に最小スループットは,802.11nが2階の子供部屋1,802.11aが2階の寝室になっている。

 このような結果となった理由は不明だが,11nがMIMOや合成ダイバーシティを利用しているのに対して,11aがこうした機能を持たないことがなんらかの影響を与えているのかもしれない。

 このほか,802.11nを40MHz幅で運用した場合,障害物のない近い場所では速度が落ちる傾向があることが分かった。APに最も近い居間(図7の(1))のスループットは(2)や(3)よりも小さい。この傾向は先のオフィス環境でも確認されている(図6の(2)を参照)。

都内のマンションで測定

 次にマンションでのスループットを計測した。マンションの場合,オフィス環境と似ているが,部屋を仕切る壁やドア,押入れなどの障害物が多い。オフィスよりも,距離による減衰が大きいかもしれない。

 測定場所は東京都内にあるマンションの一室。13階建ての建物の10階で測定した。間取りは2LDKで,面積は72.17m2。都内の家族向けマンションとしては一般的な広さである。

 アクセスポイント(AP)は居間にある電話台(床から約90cmの高さ)の上に設置し,各部屋のスループットを計測した。計測は各部屋のほか,洗面台,廊下,玄関の外(外壁に覆われた建屋内)などでも実施した。これは障害物での減衰を調べるためである。

 なお,マンションの測定では一戸建てと同様,サーバーとしてノート・パソコンを利用した。このため,100Mイーサネットで計測した場合の最大スループットは91Mビット/秒となっている。91Mビット/秒が限界値と考えて測定結果を見てほしい。

40MHz幅を20MHz幅が逆転する場所が存在

 測定の結果,どの地点でも十分なスループットが得られることが分かった(図8)。室内((1)~(6))のスループットは802.11nの40MHz幅の場合,73.7M~90.6Mビット/秒となっている。20MHz幅の場合は70.8M~81.7Mビット/秒だった。APと測定ポイントの間に壁(石こうボード製)がある場合,木製のドアを閉じた状態でスループットが落ちず,むしろ高速化した場所が多かった。

図8●マンションでのスループット
図8●マンションでのスループット
40MHz幅のオペレーションではほぼ全領域に渡って限界値に近いスループットが観測できた。
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 玄関先では,40MHz幅が45.3Mビット/秒,20MHz幅が49.7Mビット/秒となり,最高値から半分程度のスループットに落ちた。これは玄関の扉が金属製だったために大きく減衰したためと考えられる。

 測定値で2点ほど不可解な点があった。一つは居間(図8の(1))と玄関先(図8の(7))で40MHz幅と20MHz幅のスループットが逆転している点。このデータは異常値であることも考えられるため,何度か同じ場所で測定し直したが,その度に同じような数値になった。

 40MHz幅と20MHz幅では,利用する帯域幅以外に周波数当たりの電力量が異なる。具体的には,通信電力量の合計値が40MHz幅と20MHz幅で同じになるように出力を調整する。そのために,周波数当たりの電力量は40MHzが20MHzの半分になる。こうしたことが結果に影響を与えているのかもしれない。

 もう一つは,802.11aのパフォーマンスが一戸建てやオフィスに比べて非常に高かったことだ。他のエリアでは24Mビット/秒がスループットの最大値だったのに対し,マンションでは最大が30.6Mビット/秒(図8の(2))となるなど,結果が上ぶれしている。設定などを確認したが,特に他の測定場所と異なる点はなかった。