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ポイント
・各ソフトウエアが採用する手法は大きく三つに分かれる
・リカバリ時間の短縮に向けてそれぞれの手法が進化
・レプリケーションを用いた手法では,極めて短時間の復旧が可能に

 企業が次々に情報システムのバックアップ方法を見直している(図1)。その理由は大きく分けて三つある。

図1●バックアップ作業における課題が多様化
図1●バックアップ作業における課題が多様化
自社の課題をより多く解決できるバックアップ・ツールを選ぶ必要がある

 第一は,データ量が多くても確実かつ短時間でバックアップしたいためである。京都や滋賀に店舗を展開するマツヤスーパーは,商品発注システムのバックアップ方法を変更し,各店舗から本部のサーバーに集められる発注データをほぼ瞬時に保護できる仕組みを構築した。同社の中尾輝三氏(管理部部長)は「従来は前日のデータをバックアップしていたが,現在は当日の最新データをバックアップできる」と語る。

 第二に,リカバリ時間の短縮ニーズがかなり強まっていることが挙げられる。合同製鐵は,ファイル・サーバーのバックアップを,災害対策の一環として見直した。このサーバーには,社内で利用する生産計画や財務情報などのファイルが入っている。担当した中森弘之氏(企画部システムグループリーダー)は,「火事や水害でシステムが止まれば,製品の受発注ができなくなる。今は需要が旺盛な時期だけに,すぐにリカバリできないと損失も大きい」と語る。

 アニメーション制作のGDHグループでシステム開発・運用を手掛けるゴンゾロッソも,ERPパッケージのシステムがダウンした際のリカバリ時間の短縮を目的にバックアップ・ソフトを見直した。その際の狙いの一つに,煩雑なバックアップ作業を軽減することがあった。バックアップ対象となるサーバーOSが多様化しているので,複数のバックアップ・ソフトを使っており,作業が煩雑でミスが少なくなかった。そうした問題を解決しようとしたわけだ。これが運用負荷増大への対処という第三の理由である。

 こうした問題はどの企業にも思い当たるところがあるだろう。これらを解決するには,明確な方針を持ってバックアップ・ソフトを選ぶ必要がある。今回はサーバー向けソフトウエア製品(表1)に絞って,製品選定のポイントを解説する。

表1●サーバー向けバックアップ・ソフトの例
表1●サーバー向けバックアップ・ソフトの例

バックアップの手法は3種類

 選択に先立ち,バックアップ手法を確認していこう(図2)。大きく分けて,(1)通常のバックアップ(ファイル・バックアップ),(2)イメージ・バックアップ,(3)レプリケーション・バックアップがある。

図2●主なバックアップの手法
図2●主なバックアップの手法
それぞれの手法に長所と短所がある

 (1)は最も一般的な手法だ。サーバーに格納されているデータを,バックアップ・ソフトがファイル単位で読み込んで保存する。バックアップ先は,バックアップ・サーバーに接続したテープ装置のほか,NAS(Network Attached Storage)などである。取得したデータは,4月1日分,4月2日分といったように,複数世代を管理できる。代表的なバックアップ製品である「BrightStor ARCserve Backupシリーズ」(日本CAが販売)や「Symantec Backup Execシリーズ」(シマンテックが販売)などは,こうした手法でデータをバックアップする。

 ファイル・サーバーに格納した文書ファイルのバックアップであれば,その作業は比較的簡単である。オプション・ソフトを使えば,データベースやグループウエアと連携し,オンライン中にバックアップを取得することもできる。後述する手法(2)(3)に相当するオプションを備える製品もある。

 一方で,バックアップ対象サーバーが故障した際,そのサーバーを復旧させるにはOSやアプリケーションの再インストールが必要で時間がかかる。このようなシステム全体のリカバリ作業を効率化するオプションを備える製品もあるが,別途コストがかかる。

 この手法を採用している製品の最近の傾向は,増分バックアップのリカバリ時間を短縮できるようになっていることだ。従来のやり方では,最初に取ったフルバックアップ(1日目分)に,増分A(2日目分)を適用し,さらに増分B(3日目分)を適用し,といった具合に何回もデータを読み込んで処理をする必要があった。

 それに対して「EMC Retrospectシリーズ」(報映産業などが販売)は,一定期間が過ぎた増分バックアップを自動的にフルバックアップのデータと合成する「グルーミング」という機能を備える。前述の処理例では,増分Aをバックアップした時点でそれをフルバックアップと合成し,次の日はさらに増分Bと合成する。グルーミング機能を使えば増分バックアップを実施していても,フルバックアップのデータをリカバリするだけでよい。

 (2)イメージ・バックアップは,データをビット列として処理する方法で,文書ファイルだけでなくサーバーOSやアプリケーションのインストール・イメージもバックアップ対象になる。例えば「Acronis True Imageシリーズ」(プロトンが販売)がそれに当たる。「NetVault Backup」のオプションである「VaultDRプラグイン・モジュール」(バックボーン・ソフトウエアが販売)のように,(1)の手法の製品においてもオプションでサポートする場合がある。

 長所は,サーバー故障などに伴って別のサーバーにリカバリする際の時間が短いことだ。OSやアプリケーションのインストール・イメージをバックアップしているので,それを新たなサーバーにリストアするだけでサーバー環境を再現できる。OSやアプリケーションをインストールする手間が省けるというわけだ。プロトンの菊池武史氏(営業本部マネージャー)は,「システム全体のイメージをバックアップしておいて,システムの復旧に利用するという使い方もある」という。

 最近はイメージ・バックアップ・データを,VMwareなどの仮想化ソフトに仮想マシンとして復元する機能が備わってきた。Windows NTサーバー上で動作するアプリケーションやそのデータを,別のサーバーで継続して利用したいときに便利だ。

 イメージ・バックアップで注意したいことは,OSのインストール・イメージをリカバリしてもうまく動作しないことがある点だ。主にマザーボードのドライバ・ソフトの違いが原因である。こうした問題を回避するには,イメージ・バックアップのデータに,動作させたいサーバーのドライバ・ソフトを反映させることが必要である。例えばAcronis True Imageシリーズのオプション・ソフト「Universal Restore」は,そうした機能を備えている。

 (3)レプリケーション・バックアップは,別のサーバー上にレプリケーション技術で同じデータ(レプリケーション)を作り,それをバックアップ・データとする方法だ。レプリケーション技術がベースなので,バックアップ対象サーバーのデータが変更されると,その変更情報をバックアップ・サーバーに送信し,データを同じ状態にすることが可能である。「DiskSafe」(ファルコンストアが販売)や「Double-Take」(シーティーシー・エスピーが販売)がこれに分類できる。

 この手法の長所は,常に最新のデータをバックアップできること。リカバリ時間も極めて短くなる。バックアップ対象のサーバーが障害で停止したとき,バックアップ・サーバーを代わりに利用するよう切り替えればよいからだ。短所は利用者が誤ってデータを削除したり変更したりした場合,それがバックアップ・サーバーに反映されること。この点はレプリケーション技術単独では回避できないので,(1)通常のバックアップ製品と組み合わせて使うといった工夫が必要である。

>>後編