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 スカイパーフェクト・コミュニケーションズがプラットフォームを運営する東経124・128度CS放送「スカイパーフェクTV!」とBS放送事業者であるWOWOWの加入者が,なかなか上昇に転じない。2007年7月でスカイパーフェクTV!は13カ月連続で,WOWOWは4カ月連続で累積加入者を減らしている。今回から2回にわたり,アナログからデジタルに変遷する日本の衛星放送市場を取り上げる。第1回は,スカイパーフェクTV!とWOWOWの現状を見ながら,衛星放送および衛星市場の今後について考えてみる。


 スカイパーフェクトは,スカイパーフェクTV!などで使用する通信衛星を運用するJSATと持ち株会社方式で経営統合することで,事業コストの削減と規模の拡大を狙っている。2007年9月6日には,スカイパーフェクTV!で使用している衛星のバックアップ衛星として,ロシアのプロトンロケットを使って「JCSAT-11」(米ロッキードマーチン製)を打ち上げる予定である。現在スカイパーフェクTV!で使用している衛星は,「JCSAT-R」をバックアップ衛星にしているが,設計寿命やトランスポンダ(電波中継器)の具合から,スカイパーフェクTV!の事業安定性を最重要視した結果であろう。


経営統合の効果が出始めたスカパーJSAT

 こうした状況のなか,新生スカパーJSATの2007年第1四半期の決算が発表された。通期の売上高の予想が1250億円と期初の予想を据え置いたのに対して,当期純利益を50億円から85億円に引き上げていることなどからみて,目論見通りの統合効果が出てきているようだ。ただし通期の売上高の内訳では衛星通信事業が170億円程度で,全体の14%余りである点が気になる。すなわち,国土の狭い日本で衛星通信事業を拡大するには,国際化がカギになる。実際スカパーJSATは米ワシントンで現地法人の移転を行い,米インテルサットとの協業を拡大する計画を発表した。

 一方、衛星放送事業においては,2007年7月末における個人契約ベースの累積加入者のうち,スカイパーフェクTV!の減少を東経110度CS放送「e2 by スカパー!」の増加で補い、ほぼ均衡している状態となった。E2 by スカパー!は,ブランドの浸透度に課題もある。この7月にはスポーツ専門チャンネルの「J sports Plus」をHDTV(ハイビジョン)化した。9月1日には「日本映画専門チャンネル」もHDTV化し,高画質を訴求する計画である。BS放送の無料放送では飽き足らない高画質に魅力を感じる加入者をいかに獲得していくのかが問われている。


WOWOWとスカイパーフェクトの協業も加速

8月15日に打ち上げられた「BSAT-3a」(写真提供:アリアンスペース)
写真1●8月15日に打ち上げられた「BSAT-3a」
(写真提供:アリアンスペース)
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 一方,WOWOWの7月末累積加入者は,前月に比べて1100件余り減少した。アナログ放送の解約者数をデジタル放送の新規加入者で補いきれなかったのが原因だ。アナログとデジタルを合わせた累積加入者数は一進一退を繰り返している。こうした状況で2007年12月には有料放送のスター・チャンネルが,BSデジタル放送でHDTV放送を開始する。2007年9月末にサービスが終了するNHKのアナログMUSEハイビジョンチャンネルで使っているトラポンの一部を利用することになっている。

 現在BSアナログ放送で使っている衛星「B-SAT 1a/1b」が設計寿命を迎えるため,これに代わる衛星「B-SAT 3a」(ロッキードマーチン製)が8月15日に「アリアン5」ロケットによって打ち上げられた(写真1)。BS放送用の8本のトラポンと予備系の6本のトラポンを搭載し,送信出力は120Wである。スター・チャンネルのHDTV放送と日本BS放送などが提供する2チャンネルの無料放送も,この新衛星を使って提供される。

 WOWOWはこうしたライバルの登場に備え,コンテンツ力の強化に乗り出している。例えば自社で放送するスペインのプロサッカーリーグ「リーガ・エスパニョーラ」を旗印にして,スカイパーフェクトがCS独占放送権を持つイタリアのプロカッサーリーグ「セリエA」などとの組み合わせた「欧州サッカーセット」を,スカイパーフェクTV!で展開している。WOWOWがスカイパーフェクTV!で放送している第330チャンネルはSDTV(標準画質テレビ)の画質であるため,WOWOWの加入者としてはアナログ放送の加入者としてカウントされている。もしスカイパーフェクTV!に参入していなかったら、累積加入者の減少幅はもっと大きくなっていたであろう。

 スカイパーフェクトとWOWOWが協業する現在の姿を見るとき,日本の衛星放送システムにおいてCSとBSを区別する視聴者への分かりにくさや,地上波民放関係者からしばしば出る「ISDB方式以外はテレビ放送ではない」といった論調は,衛星放送の発展にとって決してプラスにはならない。


佐藤 和俊(さとう かずとし)
茨城大学人文学部卒。シンクタンクや衛星放送会社,大手玩具メーカーを経て,放送アナリストとして独立。現在,投資銀行のアドバイザーや放送・通信事業者のコンサルティングを手がける。各種機材の使用体験レポートや評論執筆も多い。