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文:「情報システム調達研究会」事務局

 8月1日に平成19年度第3回目となる研究会が開催された。今回は、研究会で特に議論のあった「情報システムのベンチマーク」について、その検討イメージと調査・分析手法を中心に報告する(ベンチマークとは、複数の組織や部門で同じデータを収集し、比較分析する手法のこと)。

「情報システムのベンチマーク」の目的

 自治体が情報システム導入を検討する際、システムの規模、予算、構築期間などが妥当かどうか常に難しい判断を求められる。また、開発時などのバグ(欠陥)についても、それが適正な数なのかどうか「相場観」がよく分かっていないのが現状だ。というのも、これらを判断するための「モノサシ」が今のところ見当たらないからだ。一方、企業では、これらの対策として、情報システム構築の事例データを収集・分析して定量的な評価を行い始めており、その有効性が明らかになってきている。

 このため当研究会では、企業での取り組みを参考に、自治体の情報システムの規模や予算、品質等に関するデータの収集・分析を行い、規模の設定や品質管理、見積評価などに役立つベンチマークを検討することにしたのである。自治体ごとの特性の違いはあるものの、同じ項目で多くのシステムを定量的に分析できれば、企業の取り組みと同様、調達のための何らかの「モノサシ」が得られると考えたからだ。

「情報システムのベンチマーク」の具体的な検討方法

 ベンチマークについては、様々な調査手法、分析手法がある。調査項目を細分化して情報を収集しても、調査項目すべてを定量的に分析することは困難であり、また、どのような分析方法で行うべきかも悩ましい。収集するデータ項目についても、他の調査とも比較できる一般的なものにするなど、多様な分析が可能になるように工夫をする必要がある。

 このため当研究会では、企業の情報システムのデータを収集している日本情報システムユーザ協会(JUAS)が実施した「ソフトウェアメトリックス2007」の調査項目の中から、自治体の調達においてソフトウェアの生産性や品質データなど分析を比較的行いやすい項目を選択して調査・分析を行うこととした。 具体的には、まず、情報システム調達に関する重要な項目について、各自治体から3システム程度を対象にデータを収集する。ここでいう重要な項目とは、例えば、対象システムの特性(新規か再開発か)、規模(予算、工数、FPなど)、予算内訳(ハード、ソフトなど)、工期(要件定義、設計、開発など)、信頼性(レビュー回数、テストケース数、不具合数など)、満足度、などである。企業で実施した調査項目と比べると大幅に調査項目の数を減らしている。研究会では「調査項目が粗いのではないか」、「アウトカム指標も入れてはどうか」など様々な意見が出たが、初めての試みでもあり、まずはあまり労力をかけずに分析を行い、その結果をもとにベンチマークの議論を深めていくことにした。

 次に、この収集したデータを企業の分析結果と比較して、各項目の差異の有無や差異の発生原因等の要因分析を行う。たとえば、企業のシステムでは、予算と工期の間には一定の相関関係があるといわれている。このグラフ上に自治体の数値をプロットすることにより、各自治体の情報システムが企業の情報システムの一般的な工期に比べて短いのか長いのか見ることができるし、自治体全体として企業とは異なった傾向が出現するかもしれない。

図●「情報システムのベンチマーク」のイメージ

(1)予算 vs. 工数
(1)予算 vs. 工数
(2)設計・実装・テスト工期の長さ
(2)設計・実装・テスト工期の長さ

* 出典は日本情報システムユーザ協会「ソフトウェアメトリックス2007」(いずれも。両図とも調達研究会で一部加工)

 どのような結果が得られるか予測はできないが、こうしたグラフへの重ねあわせや特性による分析を通じて、何らかの示唆が得られ、自治体の情報システムに関するベンチマークの議論が進展するものと期待している。

「情報システムのベンチマーク」の今後の展望

 この情報システムのベンチマークの結果については、分析が終わり次第その結果を公表する予定だ。今回行う予定の分析はまだデータ数も少なく試行レベルだが、当研究会に参加していない自治体の方々にも、これらの結果と自分の自治体のデータと比較していただき、ご意見、ご感想をいただきたいと考えている。

 今後こうしたデータがさらに蓄積され分析結果が明らかになることで、情報システムの調達に際して財政当局やベンダなど関係者と数字を基にした議論を行うことが可能になるだろう。また、情報システムのアウトカム(効果)の分析や自治体の規模、業務、開発形態などによる差異の分析なども今後の検討課題となってくると思われる。