インテルは9月5日,クアッドコア(4コア)Xeonプロセッサ(コード名「Caneland(ケーンランド)」)7300番台を出荷すると発表した。4way以上のSMP(対称型マルチプロセッサ)構成が可能なマルチプロセッサ向けCPUの最新版である。この7300番台,従来製品と比べてクロック周波数が大きく上がったわけでもなければ,アーキテクチャが変更されたわけでもない。インテルの中ではある意味“地味な新製品”と言える。

 それでも,インテルの社内ベンチマークによれば,従来のデュアルコア製品と比較すると2倍近い性能向上を達成できるという。クロック周波数以外の性能向上の技術進化が目覚ましいのである。今回発表された7300番台を例に,今どきのCPUがどのように進化しているのかを見てみよう。

(1)クアッドコア:四つのスレッドを同時に処理する

 現在のCPUは,1CPUの中に複数のコアを持つ“マルチコア”が主流である。コアとはCPUの心臓部で,演算器,レジスタ,1次キャッシュなどを集めたもの。コアの数だけ複数のスレッドを同時に処理できる。1CPUの中に2コア持つCPUをデュアルコア,4コアをクアッドコア,8コアをオクタルコアと呼ぶ。インテルは2006年11月,2wayまでのSMP構成が可能なXeonにクアッドコアCPUを追加。4way以上のSMP構成が可能なXeonにクアッドコアのラインナップを追加したのが,今回の新製品だ。

 業務サーバー用のCPUでは,サン・マイクロシステムズがオクタルコアの「UltraSPARC T1」を出荷している。日本AMDも,近くクアッドコアCPU(コード名「Barcelona(バルセロナ)」)を出荷する予定である。

(2)Coreマイクロアーキテクチャ:1クロックで処理する命令の数が増える

 マルチプロセッサ向けCPUの既存製品「7100番台(デュアルコア)」は1世代前の「NetBurst」と呼ぶマイクロアーキテクチャで作られていた。今回の7300番台は新しい「Coreマイクロアーキテクチャ」を採用している。マイクロアーキテクチャとはプロセッサの構造のことで,CPUメーカーはこれを変更することで省電力や性能を向上させている。例えば,Coreマイクロアーキテクチャへの移行により,1クロック・サイクルで処理できる命令の数が3個から4個に増える。

 インテルは,2年ごとに新しいマイクロアーキテクチャを投入する方針を打ち出している。現在のCoreマイクロアーキテクチャは2006年6月に発表したデュアルコアXeonで初めて採用されたものである。次世代のマイクロアーキテクチャは,2008年に出荷予定のCPU(コード名「Nehelem(ネヘーレム)」)で採用される予定だ。

(3)フロントサイドバス:データ・トラフィックを高速化する

 7300番台では,データ・トラフィックの高速化も図られている。CPUとチップセット間でデータをやり取りするフロントサイドバスを増強し,帯域幅を1066MHzとした。従来の7100番台は800~667MHzだった。また,コア間を通信するインターコネクトを独立させて効率的にデータを流したり,スヌープ・フィルター・キャッシュを採用してトラフィックを削減したりしている。

(4)省電力:電力消費量を減らす

 現在のCPUが技術的にぶつかる最大の壁が,消費電力の問題である。消費電力が増えると発熱量も増え,製品化が難しくなる。消費電力は,コアの面積やクロック周波数に応じて増える。そこで,微細化を進めてコアの面積を小さくしたり,クロック周波数を抑えたり,トランジスタの材料を改良してリーク電流(漏れ電流)を減らしたりするのである。

 7300番台では,この分野について目を見張る技術革新はないが,それでも7100番台に比べれば消費電力を2~3割減らしているという。ワット数を見ると,従来の7100番台は95W~150Wだが,7300番台では50W~130Wとなっている。

 インテルにおける消費電力の技術革新は,2007年後半に出荷予定の次世代CPU(コードネーム「Penryn(ペンリン)」)に採用される予定だ。リーク電流を大幅に削減する「High-k(高誘電率ゲート絶縁膜)」と呼ぶゲート絶縁膜を採用する。

(5)製造プロセスの微細化:45nmは今年後半出荷予定の「Penryn」から

 製造プロセスとは,CPUなどの半導体を製造する際の線の太さのことである。これが微細であるほど,半導体の集積度を上げられる。「トランジスタの集積密度は18~24カ月ごとに倍になる」というムーアの法則は,この製造プロセスの微細化に基づくものだ。

 今回の7300番台の製造プロセスは65nm(ナノメートル)で,従来のXeonと変わらない。次のステップは45nmで,Penrynに採用される。さらに,2009年には32nmのCPU(コード名「Westmere」)を出荷するというロードマップが示されている。

(6)クロック周波数:現在は頭打ち

 CPUのクロック周波数は,ここ数年,頭打ちだ。今回のクアッドコアXeonでも最上位の製品で2.93GHzである。Xeonのシリーズではクロック周波数が3GHzを超えるCPUも既に出荷されているので,7300番台はクロック周波数を抑えた製品なのである。

 微細化が進んだ現在のCPUは,CPUの性能を左右するゲート絶縁膜の薄さが原子数個分にまで達しており,これ以上薄くするのが難しいところまで来ている。仮にクロック周波数を上げられたとしても,今度は発熱の問題にぶつかるため,冷却機構まで含めて製品化するのが難しいのである。
 ただし,日本IBMが6月に出荷した「Power6」のクロック周波数は4.7GHzと非常に高い。クロック周波数はまだ上げられるとの見方もある。

(7)マルチスレッド:Hyper-Threadingはいったん引っ込める

 Xeonには従来「Hyper-Threading」と呼ぶマルチスレッドの技術が実装されていた。マルチスレッドとは,一つのコアを複数のスレッドが共有する仕組みで,OSが管理するCPUの数を仮想的に増やす技術である。サン・マイクロシステムズが1コア当たり4スレッドを同時に動かせる「UltraSPARC T1」を出荷するなど,注目技術の一つである。

 ところが,インテルはXeonのマイクロアーキテクチャをNetBurstからCoreマイクロアーキテクチャに変更するのに伴い,Hyper-Threadingの実装をやめてしまっている。つまり,デュアルコアの7100番台にはHyper-Threadingがあるが,クアッドコアの7300番台にはない。ただ,インテルがマルチスレッドを見限ったわけではなく,将来復活させるとの見方もある。

Xeon 7300番台の概要
クロック周波数フロントバス2次キャッシュ消費電力価格(1000個受注時)
X73502.93GHz1066MHz8MB130W26万9000円
E73402.4GHz1066MHz8MB80W23万1000円
E73302.4GHz1066MHz6MB80W16万3000円
E73202.13GHz1066MHz4MB80W13万7000円
E73101.6GHz1066MHz4MB80W10万円
L73451.86GHz1066MHz8MB50W26万9000円

■変更履歴
初出では「クアッドコア(8コア)」となっていましたが,正しくは「クアッドコア(4コア)」の間違いです。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2007/9/14]