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 先日,ITpro編集部のN記者が「Windows XPへの『正しい』ダウングレード法とは?」という記事を書く際に,デスクを担当した筆者が見ている前で,マイクロソフトに確認するのに使った手段に,ちょっと目を引かれた。というのは,N記者はサポート窓口に電話したり,メールをする代わりに,ブラウザを立ち上げると,マイクロソフトのサイトにアクセスし,オンライン・チャットを始めたからである。

 聞くと,マイクロソフトはオンライン・チャットでユーザーの質問に答える「マイクロソフト オンライン コンシェルジェ」というサービスを提供していると言う。N記者がチャットに入ると,まもなく「MS○○です」と返答があった。N記者が質問をすると,ほぼリアルタイムにレスがあり,サポート担当者は詳細を説明しているURLなどを回答に織り交ぜつつ,手際よく質問に答えていった。

 その後,調べてみるとマイクロソフトのこのサービスは,従来はボリュームライセンスユーザー向けなどに提供していたのが,この4月から提供範囲を拡大したという。さらに調べるとほかにも,トレンドマイクロやマカフィーなどが製品購入者向けにチャットによるサポートを提供しているほか,すでに企業向けにこうしたサービスの仕組みを提供しているベンダーもいくつかあることもわかった。

 ちょっと考えると,電話で対応する代わりにチャットで対応しているだけなので,人が張り付いていなければならないことは変わりがない。ただ,電話での対応に比べると,かなりの省力化を実現できる。省力化によって一人の担当者がこなせるサポートの件数が増えれば,多くのユーザーに対応できるようになるので,サービスの質の向上にもつながる。

 省力化につながると考える理由は以下の通りだ。まず,チャットではテキストでやり取りするので,質問と受け答えの履歴をそのまま過去の事例としてデータベースに残すことができる。サポート担当者がいちいち,対応とは別にデータベースに入力する必要がない。

 また,やり取りの間も,それまでの対応履歴がテキストとして残っているので,サポート担当者がいくつかの問い合わせに,並行して対応することが可能になる。電話で対応している場合,サポート担当者はおそらく一人の質問者に張り付いていなければならない。そのため,例えば担当者が質問者に「○○について動作を確認してください」などと言ったら,質問者が確認している間,ずっと待っていなければならない。複数の質問者に対して並行してサポートを行えるようになったら,こうした「待ち」による時間を省ける。

 さらに,どんな問い合わせでも,冒頭の部分は,ある程度定型的な受け答えになるため,応答を半自動化することも可能だろう。実際,マイクロソフトの「オンライン コンシェルジェ」でも,最初のやり取りでは定型句を返しているように見える部分があった(実際にどうなのかはわからない)。今後,文章の意味を解析する技術が進み,サポートの知識を格納したデータベースが充実してくれば,半自動化できる部分がさらに拡大することも期待できる。

 別の観点から考えると,ユーザーに「文章」で問い合わせをしてもらうことは,ユーザー自身に問題点を整理してもらうのを促すことにつながる。そうなれば,質問者と担当者とのやり取りがスムーズになることも期待できる。また,語学力の問題から,海外のベンダーに対して,電話で問い合わせをすることはできないが,テキストベースのチャットなら問い合わせられるという人もいるだろう。

 一方で,問題点もある。質問をする時間帯にもよるのだろうが,「とてもチャットとは思えないレスポンス」とブログに書いている人もいた。また,いたずらの問い合わせが増える可能性もある。例えば,自動的に掲示板に迷惑な書き込みをするシステムのように,自動チャット・システムを使って,偽の問い合わせをしてくる者も出てくるだろう。そうした偽の問い合わせが増えれば,本当に問い合わせをしたい人にとっては大迷惑だ。偽の質問をある程度自動的に排除する仕組みを考える必要がある。もちろん,質問をしたい人がチャットができるとは限らないので,これまでどおりの電話やメールによるサポートは当然維持する必要がある。しかし,サポートを効率化し,サービスの質を向上させる可能性があるチャットによるサポートは今後増えていくに違いない。