Forrester Research, Inc.
フランク・E・ジレット バイス・プレジデント
ハードウエア・ベンダーとシステム・インテグレータは、x86サーバー仮想化技術のリーダーである米ヴイエムウェアの恩恵を得ている。2006年時点で、北米の企業の51%が、x86サーバーに仮想化技術を導入しており、1998年に生まれた同社は、年間10億ドルを売り上げるまでに成長した。
同社の成功を見て、巨大ITベンダーや新興企業がこの市場に注目している。例えば、米マイクロソフトは次期サーバーWindows Server 2008に「Viridian(開発コード)」を取り入れる。さらに、ベンチャー企業の米ゼンソースは、マイクロソフトの支援を得る形でヴイエムウェアに対抗しようとしている。この企業は、オープンソースの仮想化プロジェクト「Xen」を率いている。
ヴイエムウェアが2006年6月に出荷した最新版では、バックアップやシステム管理といった基盤技術の強化に焦点を当てている。加えて、直近のアナリスト向け説明会で同社のダイアン・グリーン社長兼CEO(最高経営責任者)は、「(ヴイエムウェアは)仮想化技術あるいはシステム管理の会社ではなく、バーチャル・インフラ企業である」「最も先進的でセキュアで、しかも堅牢な仮想化プラットフォームとしてリードする」「ほかの仮想化技術ベンダーが、ヴイエムウェアに近づくなら、その価値を解放する」と宣言している。
今後2年間は優位が続く
ここにきて、ヴイエムウェアはようやく本当の競争相手を迎えたが、競争相手は当面の間追いつけないだろう。マイクロソフトを注目すべきだが、同社の製品には、多くのユーザー企業が求める機能が備えられていないと我々は考えている。加えて、マイクロソフトへの対抗上、ヴイエムウェアは企業のデータセンター向け仮想化製品「ESX Server」の無料版を提供するだろう。
加えて、我々はヴイエムウェアがサーバーに仮想化技術を組み込むという噂を聞いており、アプリケーション・ベンダーに対してハードウエア認定時において彼らにも認定を求めるはずだ。
我々の結論としては、ヴイエムウェアは今後2年間、市場の牽引役となる。理由の1つは、多くのユーザー企業が仮想化技術を戦略的に導入するようになり、その要求に応える製品を提供できるのはヴイエムウェアだけだからである。マイクロソフトでさえ、2010年まではヴイエムウェアのビジョンに対抗するのは難しい。ゼンソースは企業規模が小さすぎて、2010年まではヴイエムウェアに挑戦できない。
こうした状況を踏まえて、フォレスターとしては以下の行動を推薦する。
まず、サーバー・ベンダーは、次のステップを踏み出す時期に来ている。プリセールスで仮想化アセスメントをするという従来の活動に加えて、顧客の要求に合わせてヴイエムウェアを事前に設定できるようにする。
アプリケーション・ベンダーについては、認定の取得とライセンスがカギである。認定とライセンスに時間がかかっているので、顧客からの苦情の声が、今後 18カ月でますます大きくなるだろう。アプリケーション・ベンダーは、次期の製品サイクルに認定作業を組み込み、現行バージョンに対する要求を反映させるべきだ。
ファイル・システムやバックアップ・ソフトウエア、高可用性ソリューションのような製品を扱うインフラ・ソフト・ベンダーは、ヴイエムウェアの台頭により危機とチャンスの狭間にいる。決して仮想化技術から逃げずに、仮想化技術を用いて製品を再構成するか、ヴイエムウェアのプラットフォームへの組み込みを考えなくてはならない。ヴイエムウェアやマイクロソフトの脅威に備えて、ゼンソースとの関係の維持も不可欠である。
最後に、米EMCがヴイエムウェアの親会社だということは気にしなくていいだろう。フォレスターは、両者の連携や協力関係が極めて弱いことに驚いており、両者の関係をアライアンスのようなものと考えている。