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NGNでは,ほかのサービス網との相互接続も重要になる。相互接続のためにはプロトコルやデータの変換,さらにはセキュリティの機能なども必要になる。事業者間IP網やアナログ電話網など多様な相互接続をサポートするためのアーキテクチャーが規定されている。

 NGN(次世代ネットワーク)は,固定通信と移動通信の融合,通信と放送の連携などを提供するプラットフォームになっていく。一方で,従来の回線交換による電話網やインターネットなどとも連携していく。このため既存ネットワークや他サービス網との相互接続性が大きな鍵となる。今回はNGNが提供する多様な網との相互接続機能について解説する。

他サービス網との相互接続が鍵

 NGNはネットワークを単にオールIP化するのではなく,既存サービス網と連携し,その上でエンド・ツー・エンドでの多彩なサービスを提供することが求められている。NGNの特徴を整理すると以下のようになる。

(1)IPによるパケット型のネットワーク

(2)エンド・ツー・エンドでのQoSの保証

(3)音声や映像などの多様なマルチメディア・サービスを提供

(4)既存ネットワークとの相互運用性を確保

(5)サービス・プロバイダーからの制約のないアクセス

(6)ユビキタス・サービスの提供,シームレスな通信

 これからも分かるように,既存サービス網や他サービス網との相互接続(インターワーク)はNGNを構築する上で重要な要素となっている。

 しかし,他サービス網との相互接続を実現するのは簡単ではない。事業者やサービスが異なれば,通信媒体やプロトコルも違う場合が多く,これらの異なったデータやプロトコルを相互変換しなければ接続できない。またインターネットなどオープンなネットワークとの相互接続にはセキュリティ面の課題もある(図1)。

図1●NGNにおける他サービス網との相互接続
図1●NGNにおける他サービス網との相互接続
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相互接続はトランスポートで実現

 NGNはサービス・ストラタムとトランスポート・ストラタムの二つのレイヤーに分割して定義されている。

 NGNのアーキテクチャーを規定するITU-TのY.2012では,既存ネットワークや他サービス網との相互接続機能は,トランスポート・ストラタムに位置する。図2にITU-TのNGNアーキテクチャーを示す。

図2●NGNアーキテクチャー
図2●NGNアーキテクチャー
ITU-TのY.2012勧告によるもの。
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 図2によると,既存ネットワークや他サービス網と相互接続する機能は,トランスポート機能の中のゲートウエイ機能やメディア・ハンドリング機能で実現されている。

 なお,ゲートウエイ機能は,IPベースのネットワークとの相互接続機能(アクセス・ボーダー・ゲートウエイや相互接続ボーダー・ゲートウエイ)と既存ネットワークとの相互接続機能(トランク・メディア・ゲートウエイ)に大別される。これらはパケット転送やメディア変換など,直接メディアを扱う機能群である。

トランスポート機能を制御する

 トランスポート機能はメディアを直接操作するが,リソース制御機能までは含んでいない。リソース制御はトランスポート制御機能あるいはサービス・コントロール機能を経由して実行する。

 図3に示すように,一般的にトランスポート機能とリソース制御機能は対になって構成される。アクセス・ボーダー・ゲートウエイ/相互接続ボーダー・ゲートウエイとRACF,トランク・メディア・ゲートウエイとメディア・ゲートウエイ制御,メディア・リソース処理とメディア・リソース制御が対の関係になる。トランスポート機能はH.248などのプロトコルを使ってリソース制御機能とやり取りをし,メディアやデータを扱う。

図3●トランスポート機能はリソース制御機能と対になる
図3●トランスポート機能はリソース制御機能と対になる
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 以降,ゲートウエイとメディア・ハンドリングの機能について順に解説していく。

セキュアな相互接続を実現する

 NGNでは,IPベースの他サービス網との相互接続を実現する機能としてボーダー・ゲートウエイがある。これは,二つのIPネットワーク間のインタフェースを提供するものだ。NGNアーキテクチャーにおいて,ボーダー・ゲートウエイは図4にあるように他事業者のコア網と接続する相互接続ボーダー・ゲートウエイとアクセス網とコア網を接続するアクセス・ボーダー・ゲートウエイに位置付けられており,他サービス網との相互接続のほか,自らのネットワークを守る役割を担っている。

図4●ボーダーEゲートウエイの構成
図4●ボーダーEゲートウエイの構成
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 ボーダー・ゲートウエイの機能には,(1)ファイアウォール,(2)NAT/NAPT処理,(3)マーキングポリシング,(4)帯域予約と割り当て,(5)利用情報の収集と通知,(6)IPv4/IPv6変換,などがある。

 アクセス・ボーダー・ゲートウエイと相互接続ボーダー・ゲートウエイは,ネットワークでの配備は異なるが,どちらもボーダー・ゲートウエイとして同様の機能を備える。例えば,セキュリティという観点で考えると,アクセス・ボーダー・ゲートウエイでは,クライアントからの不正アクセスの防止,相互接続ボーダー・ゲートウエイではインターネットからの不正流入の防止が主眼となる。このように,同様の機能であっても両者で用途は異なってくる。

 ボーダー・ゲートウエイは,一般的には自律的にパケットを処理しない。トランスポート制御機能であるRACFからどのようにパケットを処理するかという情報をもらい,その情報を基にH.248やSIPなどのプロトコルで制御されているセッションをハンドリングする。

 アクセス・ボーダー・ゲートウエイ/相互接続ボーダー・ゲートウエイで要求される機能を実現する代表的な装置がセッション・ボーダー・コントローラー(SBC)である。ITU-Tでは,勧告Y.2012の補足1においてSBCがサポートすべき機能や実装例について記述されている。SBCは,SIPをベースとした音声,映像などのメディア・サービスに必要なセキュリティ機能やQoS機能などを実現する。次回はSBCの特徴となるVoIPサービスを実現する上で必要なVoIPサービス特有の機能から説明しよう。

光武 晴生(みつたけ・はるお)
NECブロードバンドネットワーク事業本部IPネットワーク事業部 主任
1999年NEC入社。ネットワーク関連製品の開発,企画,販促に従事。現在,NGN関連製品の企画を担当。

荒井 孝博(あらい・たかひろ)
NEC通信システム第一ネットワークプラットフォーム事業部第一開発部 技術マネージャー
1987年,NEC通信システム入社。ネットワーク関連製品の企画・販促に従事。現在,NGN関連製品の企画・開発を担当。