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 Lesson2では,送信元からあて先までイーサネット・フレームが届く流れを追ってみよう。ここではイーサネット上の通信の大半を占めるIPを例に説明していく。

IPパケットを乗せて出発

 イーサネット・フレームが送信元からあて先に届く流れは,小包を配達する流れと似ている。そのため,図では小包をIPパケットに,トラックをイーサネットに,トラックの荷箱をイーサネット・フレームに例えた(図2)。

図2●別のLANにデータを送る場合は,いくつかのイーサネット・フレームを乗り継ぐ
図2●別のLANにデータを送る場合は,いくつかのイーサネット・フレームを乗り継ぐ
IPパケットには送信元IPアドレスとあて先IPアドレスが書いてあり,これはあて先に届くまで変わらない一方,イーサネット・フレームはルーターで中継されるときに作り換えられる。そのとき,送信元とあて先のMACアドレスも変わる。  [画像のクリックで拡大表示]

 パソコンAからパソコンBにデータを送る場合を見てみよう。パソコンAとパソコンBはLANスイッチを介して同じLAN上にある。

 送信元のパソコンAでは,パソコン内のTCP/IPソフトがARP(アープ)というプロトコルを使い,パソコンBのIPアドレスからパソコンBのMACアドレスを調べる。MACアドレスがわかると,データを分割してIPパケットに詰め,このIPパケットをイーサネット・フレームに入れる。

 このときIPパケットには,IPパケットの送信元であるパソコンAのIPアドレスと,あて先であるパソコンBのIPアドレスが付く。一方のイーサネット・フレームには,フレームの送信元であるパソコンAのMACアドレスと,あて先であるパソコンBのMACアドレスが付く。これは,送り状がIPアドレスで記してある小包を荷箱に入れ,その荷箱にMACアドレスであて先と送信元を記した送り状を張り付けたイメージだ。

 こうしてできたイーサネット・フレームをLANカードに渡すと,LANカードが電気信号や光信号に変換してLANに送り出す。

自分に関係するものだけ処理

 パソコンAが送出した信号はLANスイッチを介してあて先であるパソコンBに確実に届く。パソコンBのLANカードは受け取ったイーサネット・フレームのあて先MACアドレスを見て自分あてとわかると,このフレームからIPパケットを取り出してTCP/IPソフトに渡す。TCP/IPソフトは,IPパケットのあて先を見て,自分あてと判断すると,IPパケットからデータを取り出して元の通り組み立てる。これがイーサネット・フレームを使ったイーサネットの通信だ。

 なお,リピータ・ハブを使って複数の機器を接続している場合,パソコンAから送り出されたイーサネット・フレームがLAN上の関係ない機器にも届いてしまうことがある。その場合,パソコンB以外の機器のLANカードはあて先MACアドレスが自分に関係ないことを確認すると,そのイーサネット・フレームを処理せずに廃棄するようになっている。これは,1本の銅線を共有して通信していた初期のころから変わらないイーサネットの基本動作だ。

ルーターでフレームを作り直す

 LANでイーサネット・フレームが届く流れを説明したが,実際のネットワークはLAN内で完結するとは限らない。ルーターを介して外部のLANとデータをやりとりすることもある。イーサネット・フレームは一つのLAN内にしか届かないので,そのままでは通信できない。

 その場合,ルーターが信号を受信して中継する。ルーターはフレームが自分あてとわかると中のIPパケットのあて先を見る。あて先が自分ではないとわかると,その機器にIPパケットを届けるには次にどのIPアドレスに転送すればいいのかを自分が持つ経路表で確認。そのIPアドレスを基にARPでMACアドレスを調べる。そして,そのMACアドレスあてのイーサネット・フレームにIPパケットを入れて送り出す。

 例えば,パソコンAから別のLANに属するサーバーXにデータを送信するとしよう(図2参照)。

 パソコンAはあて先がサーバーXのIPアドレス,送信元がパソコンAのIPアドレスのIPパケットをイーサネット・フレームに乗せて送り出す。このフレームの送信元はパソコンAのMACアドレス「A」,あて先はルーターのMACアドレス「C」だ。

 ルーターはイーサネット・フレームを受信すると,IPパケットのあて先を確認。サーバーXあてとわかると,サーバーX向けにイーサネット・フレームを作り直して送り出す。このとき,送信元はルーターのMACアドレス「D」に,あて先はサーバーXのMACアドレス「E」に変わる。

 サーバーXがイーサネット・フレームを受信すると,サーバーXのLANカードはフレームのあて先を確認。自分あてとわかると,中からIPパケットを取り出してTCP/IPソフトに渡す。

作り替えるのはフレームだけ

 このように,イーサネット・フレームはルーターで次の行き先向けに作り直される。これは小包を遠方の届け先に届けるときに似ている。その場合も,小包は長距離トラックや行き先地域別のトラックを乗り継いで相手先に届く。

 ルーターを越える場合,作り替えるのはイーサネット・フレームだけ。IPパケットのあて先と送信元は最終的なあて先のコンピュータに届くまで変わらない。