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 「日本版SOX法(J-SOX)対策のシステムコンサルティング案件が出てきたが、なかなかSI案件に発展しない」(インテック コンサルティング事業部の岡真一郎シニアコンサルタント)、「システム商談は当初の想定より明らかに遅れている」(TIS エンタープライズソリューション第1部の大塚誠治統括マネジャー)。

 J-SOXの制度が整い、ユーザー企業のシステム部門も対策に動き出した。本来なら具体的なシステムへの商談が立ち上がる時期に来ているはず。だが多くのソリューションプロバイダは、J-SOX商談の立ち上がりが鈍いと口をそろえる。なぜか。

 これは金融庁の制度整備に時間がかかったことだけが原因ではない。理由を探ると、当初ソリューションプロバイダが抱いた思惑とは大きく異なる、J-SOX商談のさまざまな実態が見えてきた。

 例えば、「J-SOX商談は監査に間に合わせるため、2008年度までに大きなピークが到来する」と見られているが、実際はそうではない。ITサービス企業が提供できるコンサルティングのサービス内容や範囲、J-SOXで必要な商材についても、これまでの期待とは違った側面が出てきた。

 ソリューションプロバイダは今、J-SOX商談について営業戦略を抜本的に練り直す必要に迫られている。先行するソリューションプロバイダ、監査人の指摘から分かった、J-SOX商談の真の常識を紹介しよう。

08年度までが商談のピーク?

 第1の“真常識”は、「J-SOXのシステム商談の本番は2009年度から」というものだ。

 例えばJ-SOX商談の中で、最も売れているとソリューションプロバイダが口をそろえる文書化ツール。だが日立情報システムズ 統制プロジェクトの渡邊敏博リーダーは「本当の勝負はまだ先。訴求したい製品はまだ売れていない」と明かす。

 内部統制監査が近付くと、数千~数万に上るサンプル評価の管理や文書の改訂管理など、毎期の運用を支援する文書化ツールが重要になる。ところが、「多くのユーザー企業は図表作成などの基本機能でしか製品を選んでいない」と渡邊リーダーは言う。

 実は米市場で上場し、今年3月末に米SOX法に対応した日立製作所やNECグループでさえ、「文書化は表計算や図形ソフトを使ってなんとかこなした。ツールへの移行はこれから」(日立システムアンドサービス ドキュメントソリューション部の斉藤隆主任技師)と言う。商談の本命といえるIT統制の整備支援でも、「米国上場の大手30社との商談ですら、これから本格化するところ」(NECネクサソリューションズ マーケティング部の宮越一郎グループマネージャー)。

 理由は、ユーザー企業の多くが「初回の監査までは時間をかけて抜本的な対策をするより、付け焼き刃でも手作業で何とか処理しよう」として、IT投資は後回しになりがちだから。IT投資は制度導入後、毎期の運用負担を改善するために行おうとする傾向がうかがえる(図1)。

図1●改善と負荷軽減のため、2009年度からITの出番が増える
図1●改善と負荷軽減のため、2009年度からITの出番が増える
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 ただし基幹業務システムの改修では、2008年度までに一部の需要が見込めそうだ。実際、米国上場の三井物産グループでは初回の監査に向けて、一定規模のシステム改修案件が発生した。「だが、こうした案件は今まで以上に慎重な対応が必要になる」と三井情報の土屋哲雄取締役は指摘する。監査までに開発作業を終えようとすると納期のリスクが発生する上、規模や内容によっては手間がかかる割に利益が出ない。「2008年度までは、システムの不備は手作業で対応してもらった方がありがたい」と語る受託開発企業もあるほどだ。

 三井情報の土屋取締役は「J-SOX対策を一通り終えると『業務の見える化』が起こり、経営者には新たに取り組みたいテーマが見えてくる」と指摘する。つまり、2008年度までの小口案件を追うより「顧客と2009年度以降の長期計画を共有した方が、より大きなシステム商談につながる面がある」(日本ユニシス ビジネスソリューション企画室の小岩井毅担当部長)のだ。

出典:日経ソリューションビジネス 2007年5月30日号 21ページより

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